第112話 新たなる戦いの序曲、のちょっと前
漆黒の宇宙空間。ここ土星周辺の宙域には太陽の光は僅かにしか届かない。遙かな恒星達の光が点として輝くのみだ。
『先行するリュカオーン1から敵機動兵器発見の通報が入りました』
「了解。リュカオーン1の情報とリンクして」
『了解しました』
私はXFAーv3のAIであるビクトルに、先行している偵察小隊の一番機"リュカオーン1"との情報リンクを命じる。するとXFAーv3の索敵モニターにリュカオーン1が捉えた情報が映し出され、即座にビクトルが情報を解析した。
『敵戦力情報の解析完了。敵はデルタ型哨戒艦が2隻と判明』
アムロイ軍のデルタ型哨戒艦は艦隊に随伴せず、主に土星の周辺宙域で単艦、若しくは少数の艦隊を組んで哨戒行動をしている。そのため地球連邦軍では哨戒艦と位置付けている。
私達第6独立挺身艦隊(というかガチンスキー大佐の)のモットーは見敵必戦!よって、すぐさま攻撃を開始する。
「了解、ビクトル。リュカオーン1には下がってもらって」
『了解。リュカオーン1に伝達します』
「ブラックチューリップリーダーから小隊各機、敵デルタ型哨戒艦2隻を発見。これより敵後方から攻撃する。第1分隊は前方、第2分隊は後方の敵艦にそれぞれ当たれ」
「「「了解」」」
私はエンジン出力を上げて加速させ、一気に後方から敵艦に接近する。私の後には当然パティのブラックチューリップ2が付いている。双方のAIにより情報共有もバッチリだ。
私達の接近を察知した敵艦隊は後方に向かって盛んにパルスレーザーを撃ちまくるも、推力に勝る私達はそれを避けて更に敵艦隊の下部に入り込む。
そしてレーダーで敵艦を捕捉すると、私とパティは対空ミサイルをそれぞれ二発ずつ発射した。計四発の対空ミサイルは敵艦の対空火器に撃墜される事なく、敵艦の前後に全弾命中して爆破。一瞬の間を置いて敵艦は大爆発して撃沈された。
「ブラックチューリップ3からブラックチューリップリーダー。サク、こっちも撃沈したよ」
「ブラックチューリップリーダー、了解。みんな、お疲れ様。それじゃあ周囲を警戒しつつ帰還しよう」
「「「了解」」」
第6独立挺身艦隊が土星周辺宙域に至り、作戦行動を開始してから約一ヶ月が経過した。
艦隊はこの間、アムロイ軍の艦船、哨戒機、監視・通信衛星などを発見し次第攻撃し続け、アムロイ軍の警戒ラインの外縁破壊に専念した。
時に警戒ラインの内部に入っては情報を収集し、発見されればさっさと逃げ、敵が引けばその背後から襲いかかり、敵が数で押してくれば直ちに逃げる。
現在のところ、第6独立挺身艦隊には被害は出ていない。出ていないけど、
「いゃあ、今回も楽勝だったねぇ」
と、こんな事を言うのは誰あろう、エリカ、君か!私は今後の彼女自身のためにも小隊長として、心を鬼にして叱責しなければならない。戦いに楽観は禁物だ。緊張するなぁ、スゥはぁ〜
「エリカ!あんたねぇ、そんな事言ってると今に痛い目を見るからね。
「そうよ、痛い目で済めばまだいい方なんだから」
これは私ではない。小隊長の私が言う前にエリカは真樹とひとみに締め上げられていた。
「そっ、そんな事わかってるわよ」
真樹とひとみの剣幕にタジタジとなるエリカ。しかし、更に史恵からダメ出しがなされる。
「みんなエリカの為に心配してくれてるんだよ?ねえ、サク」
「うっ、うん。みんなに先に言われちゃったけど、今までは小手調べというか、勝てる相手に勝ってるだけだから。その分気を引き締めないと」
急に史恵から振られたので焦ったけど、一応小隊長としてそれらしい事を言ってみる。でも、みんなはお互いを失いたくないから、こうしてエリカを戒めている訳で。
「わかったって。みんなごめんね、気をつけるから」
うん。みんなのお陰でエリカも反省したようだ。私の隣に立っているパティと目が合うと、彼女はヤレヤレといった感じで軽く肩を竦めて見せた。
「エリカさんって皆さんからとても愛されてるんですねぇ」
と、この一部始終を見ていたダーシャがニコニコと微笑みながらそのような感想を述べると、エリカの失言(?)から張り詰めた空気が食堂から抜けて行った。
ダーシャちゃん、その能力は天然なの?養殖なの?いずれにしても、何気に恐ろしい娘だ。
土星周辺宙域での作戦に従事して約一ヶ月。私達の行動に対してアムロイ軍の反応は薄く、積極的反撃はまだ無い。彼等にとってはすぐに回復出来る損害なので、あまり関心が起きないのかもしれないけど、その内に地味なボディブローとして効いてくるはずだ。
そして、次の朝から今までに収集した彼等の情報を元に第6独立挺身艦隊は出撃して来るアムロイ軍の通商破壊任務群を襲撃する作戦を開始する事となっているのだった。
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それでは次話にご期待下さい。




