第11話 初めての外出②
士官学校といえども、基本土日祝祭日は朝から自由行動だ。お待ちかねの土曜日の朝。私達士官候補生は、外出前に整列して点呼を取り、日直が教官に報告。
「第〇〇期1組総員40名、事故無し、現在員40名」
日直の報告を受けた教官から外出に際しての諸注意と有難いお言葉を頂き、士官候補生達は晴れて外出が許可されるのだった。
私達は他の士官候補生達と共にゾロゾロと校門を出てバス停に向かった。服装は無論制服である。白を基調とした婦人第1種夏服は、皆良く似合っていて、特にうちの班員は可愛い娘揃いなので、街に出たらさぞかし目を惹く事だろう。流石に士官候補生をナンパするようなのはいないと思うけど。
京急線馬堀海岸駅でバスを降りると、私達は駅近くのカフェでモーニングの朝食を摂った。こうした士官学校外の情報は、何故かひとみが詳しい。なんでも、事前に上級生からリサーチしていたとの事。彼女の如才の無さ、アンテナの高さは情報畑が拝命先に相応しいのではないかな?
私達は10:00(ヒトマルマルマル)に横浜中華街に到着すると、中華街大通りを東門からお上りさんよろしくキョロキョロ見回しながら歩いた。本当だったら屋台や店先で肉饅やら胡麻団子やらマーラーカオやらを買食いしてぶらぶらしたいところ。しかし、士官学校の制服がそれを許さない。断腸の思いでそうした出店等をスルーして、中山路から関帝廟に至り、ひとみの希望通りにお参りをした。
そうこうしている内にお昼も近くなり、私達は史恵の案内で香港路にある史恵の親戚が経営する中華料理店に向かった。
香港路は中華街の中でも狭い小路で、漢字の看板に赤いランタンが異国情緒を醸し出している。ここはどこなんだろう、ここから無事に出られるのかな?という感じがゾクゾクして非常に良い。
史恵の親戚が経営するお店は「台南飯店」という台湾料理を中心とするお店で、こじんまりとして落ち着き、とても雰囲気が良かった。
史恵は店のドアを開けると、我家のように入って行った。
「伯父さん、伯母さん、史恵です。」
すると店の奥から赤いチャイナドレスを着た、史恵と似た顔立ちの、しっとりした感じのグラマラスな中年女性が出て来て史恵を抱きしめた。
「史ちゃん、一ヶ月振り。なんか立派になっちゃって。」
史恵の伯母さんの後ろには割烹着姿の優しそうな中年男性が立っていて、抱き合っている二人を見てうんうんと頷いていた。
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