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第108話 新たな戦隊、その征く先は?

士官学生の頃にミリタリーマニアのエリカから聞いた話なのだけど。


昔々、第二次世界大戦の頃、日本から輸送船で戦地へ送られた陸軍の兵隊さん達は、自分達が今何処に向かっているのか、情報漏洩防止のため知らされていなかったとか。段々気温が上がって船内が暑くなり、あぁ南方に向かっているのだな、という肉体への直接的な情報によっておおまかを知ったのだという。


今、まさに輸送船ルシタニア号の中で積載物と化している第3独立戦闘航空団の私達もかつての大日本帝国陸軍の兵隊と同じ状況のようだ。


いや、兵隊さん達は気温の変化や星座の位置、日の出日の入りの時間などによって大まかな緯度経度くらいはわかったというから、それに比べて宇宙時代の私達は、輸送船に乗せられたら最後、情報を遮断されたら何もわからないときたものだった。


「ねぇ真樹、私達どこに向かっているのかな?」


「さぁね、金星じゃないかな」


エリカの、もう何回目?というボヤきに真樹は適当に応じる。今日は金星だったけど、昨日はアルファケンタウリだった。そしてその前は遊星ラーメタル(どこ?)で、その更に前はバーム星(それもどこ?)。


「そっかあ。ところで、金星人って美人なんでしょ?」


「そうだよ。金星人は美人で火星人はタコ。ついでに木星人はトカゲね」


「真樹ちゃん、最後の"トカゲ"はギリギリだよ?」


パティの言った通り、木星圏の人達はトカゲと言われる事を嫌っている。



そうして私達ブラックチューリップ小隊の四人が昼食後に食堂でPXで買ったアイスクリームを食べながら駄弁っていると、スピーカーから独立戦闘航空団の全団員宛で1400(ヒトヨンマルマル)に会議室に集合するようにと拡声がされた。月から出航して4日、どうやら状況が動き出したようだ。



会議室に長身で渋くてハンサムな白人の男性士官が入室する。第1独立戦闘航空団の団長ニール・ギブソン少佐だ。


「起立!気を付け!」


会議室に集合した独立戦闘航空団の全団員は第1独立戦闘航空団の副団長の号令により座っていた椅子から立ち上がり、直立不動となる。


「第1独立戦闘航空団長に敬礼!」


現在は室内で無帽だから、私達は45°に頭を下げて敬礼し、やがて直るとギブソン少佐に促されて着席した。


「諸君、我々が月を出航して4日が過ぎた。行き先も知らされない航海はさぞ不安な事だろう。しかし、それも今日までだ」


ギブソン少佐はここで一旦言葉を切り、会議室を見渡して団員達の反応を窺った。少佐の発言にも団員達はざわつく事無く沈黙を守ったが、私も含めて団員達の目は"勿体ぶらずに早く言え!"とばかりに少佐を凝視する。


その様子にギブソン少佐は「オイオイ、そうがっつくなよ」といった感じでニヤリと笑うと(これが実にアメリカンなニヤリで)先を続けた。


「さて、待望の今後の予定だが、」


ゴクリ


「我々はクヌート宙域で新造艦である空母海鳳と合流する。以後は同空母が我々の母艦となる。空母海鳳はその後、更に巡洋艦1隻、駆逐艦6隻と合流し、特務戦隊を編成する事となっている」


ギブソン少佐の発言内容からすると、結局、既存の航空部隊からの引受手は無かった模様。まあ、それはそれで変なしがらみとか既存部隊との軋轢も無くてやり易いのかもしれない。飽くまで噂だけど、戦闘機隊からすると戦闘攻撃機は邪道だそうだし、戦闘機から転向した私達は裏切り者だそうだから。


「そして我々の戦場は土星となる」


おおー!


ギブソン少佐の発言に、今度こそは会議室内の静寂が破られた。驚きと興奮が入り混じった歓声が起こり、次いで騒めき出す。私は喋りはしなかったけど、思わず隣に座っている真樹と顔を見合わせてしまった。


「今日皆に話せるのはここまでだ。クヌート宙域に着いたら艦隊編成に、訓練にと忙しくなる。それまでは良く身体を休めておけ、以上だ」


会議室での集合示達が解かれると、自室に戻る道すがらの話題は当然戦隊編成と土星行きについてだ。


「私達の目的地が土星っていうのは、新設される戦隊で敵の本拠地に殴り込みをかけるって事かな?」


真樹が私に尋ねるけど、私だって勿論わからない。


「流石にそれは無いでしょ。団長はどう思います?」


私は、少なくとも私よりは情報を持っているであろうマーベル団長に話を振った。


「私も他隊の団長達と話し合ったけど、命令は土星に行けというばかりで、まだよくわからないのよ。新設される艦隊だけで殴り込みは無いわね。追々別の命令が出されるはずだから、ギブソン少佐の言った通りクヌートに着くまではゆっくりしてましょう」


ギブソン少佐以外の団長さん達もあまり情報は持っていないみたいだった。


「なんかさ、私とサクって行く先々新しい部隊ばっかりだね?」


「本当、そうだね」


私には考え込む悪い癖があるから、この件についてはあまり深く考えないようにした。まあ、ここでジタバタしたところで何がわかる訳でもない。


ふと子供の頃に誰かが歌った「悩んだって無駄よケセラセラ(セラセラ)♪」という古い歌の歌詞を思い出した。



いつも『朝倉家の戦争』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話「宇宙空母海鳳」をお楽しみに。

\

星よ、導きたまえ \

 ☆

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