第106話 訓練開始
訓練開始、といっても、いきなりさぁ飛べ野郎ども(女もいますよ)とはならず。初めはFAーv3についての諸元性能などについての座学、シミュレーションなどに追われる。
座学ではマニュアルが使われる訳だけど、そこに記されているのは通りいっぺんのカタログデータであり、訓練大隊で使用された六式艦戦のマニュアルのように微に入り細に入った内容とは程遠かった。まあ、六式艦戦のような長年使い続けられている機体ではデータの蓄積がなされ、マニュアルも何度も改訂されているのだから、採用ホヤホヤのFAーv3ではそんなものなのでしょう。
そして、そのマニュアルの少ない内容を補うため技研が提供した副教材が試験艦ペガッスの艦内で私がXFAーv3のテストパイロットとして提出したレポートと動画であった。
問題なのは動画の方で、私が佐伯少佐に戦闘や試験飛行に関するインタビューを受けた時の物だった。これが団のみんなの前で流された時は、そりゃあもう恥ずかしくて。私はあの動画を提供した佐伯少佐とベルナルド大尉はいつか後ろ弾の刑にすると決めたのだった。
座学とシミュレーションが終わって、飛行訓練が始まった。流石にみんな中堅パイロットだけに、機体の特性を把握してからは訓練もスムーズに進み、問題無く消化されていった。
訓練は教程通り地上基地からの離発着に始まり、編隊を組んでの飛行、標的への攻撃と空戦。そして、懐かしの訓練空母イカロスからの離発艦と続いた。
「ブラックチューリップリーダーから各機、標的艦の上空から急降下爆撃を実施する。第1分隊が直掩に仕掛ける。第2分隊は標的艦を叩け」
「「「了解」」」
これは標的艦を空母と見立て、小隊ごとに直掩隊と攻撃隊に分かれて戦う対抗戦である。空母イカロスから発進した私達ブラックチューリップ小隊は、山中君率いる直掩隊に対し上空からの奇襲を行った。
当然、私達の攻撃を察知した直掩隊はそれを阻止すべく上昇して迎撃してくるんだけど、
「遅いな」
私とパティは先手を打って模擬パルスレーザーを連射して機先を制し、2機に命中させ(撃墜判定)、更に他の2機をすれ違いざまに命中させた(これも撃墜判定)。その間に真樹とエリカが標的艦に模擬対艦ミサイルを命中させて(撃沈判定)、この対抗戦に勝利した。
「サクの戦技は凄いね」
「本当、真に神懸っているレベル」
「神技だわ」
真樹、パティ、エリカが口々に私の技量を褒めてくれる。いやぁ、まあ、慣れだよ慣れ、とか言ってお茶を濁したけど、本当に神懸っているんだ、とは絶対に言えない。
でも不思議なのは、この一ヶ月の訓練での空戦で、私達ブラックチューリップ小隊は負け知らずなのだ。私には英霊の野村大尉から授かった操縦の加護がある。だけど、他の皆はそうではないにも関わらず、私の操縦にもついて来てるし、私の指示通りに動いてくれている。その結果としての連戦連勝。
訓練して3人とも操縦技能が上がったのだ、と言えばそれまでだけど。そんな事を考えていると、久々に野村大尉の声が聞こえて来た。
「俺がお前さんに与えた加護は、元々生前に俺のパイロットとしての能力だったもんだ。これが俺が戦死して英霊になった事で、単なる個人の能力だったもんが神から人へ与える加護となった」
「はぁ、人から神様になるという事はそういうものですか」
「そうだ」
野村大尉はうむ、と大仰に頷いてこの話を続けた。
「つまり、お前さんを守る加護だから、お前さんの部下にまで加護の力が及んだんだろうな。まあ、俺のような一英霊の加護では精々そんなものだろうけどな」
野村大尉の話によると、直接加護を授かった私程じゃないにしろ、ブラックチューリップ小隊の3人にも加護の効果が及んで機体との相性が良くなり、操縦技能が上がった、という事らしい。
この事は勿論ブラックチューリップ小隊の3人には話す事は出来ないけど、これなら4人でこの先も一緒に戦っていけるだろう。
「大尉、本当に有難う御座います」
「まあ、いいって事よ。父上の敵討ち、頑張るんだぜ?」
勿論、もちろんですよ、大尉。
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それでは次話「部隊創設事始め」をお楽しみに。
グラドスから(チャリで)来た、僕の名はエイジ。地球は狙われている!




