第10話 初めての外出
地球連邦軍横須賀士官学校に入校して怒涛の一ヵ月がどうにか経過した。やたら慌しく、忙しかった士官候補生としての日々も一ヵ月が過ぎれば、私達一年生も先輩方から情報を仕入れたり、色々と要領を憶えて多少の心の余裕を持てる様になっていた。
現在の士官学校では、カリキュラムを進めて一人でも多くの士官を現場に送り出す事が最命題となっている。かつてのように上級生の靴を磨せたり、制服にアイロンをかけたりといった行為は廃止されている。それは学習に関する技術の発達や土星まで及ぼうとしていた人類領域拡大に伴う人材需要の高まりといった事情が伝統打破の根底にあった。それに加えて、なんといっても今は異星人との互いの生存をかけた戦争の真っ最中だ。だから、現在の地球連邦軍には後輩に先輩の靴を磨かせている余裕など無い、というのが実情だったるする。
そして、一ヵ月が経過して、何がどう変わったかと言えば、土曜日、日曜日の外出が許可されるのだった。外出のみで外泊は出来ない。外泊は六ヶ月を待たなければならないが、それでも、外出して外の空気というか、雰囲気を味わえるという事は嬉しく、とても有難い。
私達の班では、この貴重な休日に何をしようか?と話し合った。勿論、休日まで班で行動しなければならない訳ではない。これは飽くまで私達が仲が良いから自発的に、誰からとなく「ねぇ、休みどうする?」という事になったからだった。
私は少年下士官学校に入校した妹の七海に逢いに行こうと思っていたけど、妹と連絡が取れず、妹の予定がわからなかったので今回は見送る事にした。
外出前の金曜の夜。課業終了後、食事も終わった消灯までのひと時。私達は自室にて、購買で購入したお菓子とジュースで一ヶ月お疲れ様会をしながら休日の予定を話し合った。鎌倉に行きたい、戦艦三笠を見てみたい、箱根の温泉に入りたいとか色々な案が出たけど、時間や距離や外出に伴う手続きの関係から横浜散策に決まった。
「横浜と言えばやっぱり中華街は外せないよね?」
と真樹が提案すると、
「じゃあ、関帝廟にお参りに行かなくちゃ。」
ひとみも乗り気で賛成した。お参りって、そこは巫女さんだから?
「横浜港でドイツの仮装巡洋艦が大爆発を起こしたんだよね。」
「へー、そうなんだ(モグモグ)」
ミリオタエリカのトリビアを華麗にスルーする真樹。ちょっとは構ってあげようよ。
「ねぇねぇ、中華街に行くなら私の親戚がやってる中華料理屋さんに行かない?サービスしてくれると思うからさ。」
「「「「賛成!」」」」
史恵の提案で昼食は決まり、夕食は横須賀に戻って、エリカのたっての希望で横須賀海軍カレーを食べる事となった。
そろそろ消灯時間。私達は廊下に整列して消灯前点呼を受ける。何時もはキヲツケの姿勢で静まっている点呼前の整列も、明日の外出を前にクラスのみんなも気がそぞろになっているようだった。
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