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とある作者の独り言8)自分の文化を知る

 入り組んだ地下街に、複数の鉄道路線が入り乱れた現代の都市の地下は、地下迷宮(ダンジョン)に例えられることもあります。幾層もある地下は、慣れない旅行者にとっては迷宮でしょう。


 現地人であっても、時に迷う地下街です。地図や案内板を読むことが出来ても迷う時は迷います。


 スマートフォンを片手に、地図や案内板を前に、日本語であぁでもない、こうでもないと話し合っている人達には、日本語で。こちらには全く分からない言葉で話し合う旅行者には、通じたら良いなと願いながら英語で、現地人は声をかけます。

「あなたはどこに行きますか?」 “ Where are you going to go? “

次の瞬間、地下迷宮がある都市に住む現地人は、ロールプレイングゲームの案内人になります。


 地上で地下で。時に自分のスマートフォンを使って、目的地を確認して案内していた現地人は、不思議なことに気づきました。


 日本語話者ではない鉄道の乗り継ぎで困っている人に質問をする時に、必ず一つ質問を追加することになるのです。

“Which station are you going to?” 「あなたはどの駅に行きますか?」


 では、これを読んで下さっている方々(Webの向こうにいらっしゃると信じて)への質問です。


 路線図を前に悩んでいるときに、案内してくれそうな人が、どこに行きますか?と聞いてきてくれたら、あなたは何と返事をしますか?


 現地人ならこう返事をします。

「○○駅に行きます」


 日本語話者では無い方は、ほぼ絶対と言って良いくらい、最終目的地を口にされるのですね。行楽地、観光地、店舗などなど。現地人は、それを言われても困ってしまいます。現地人は、悲しいことに地元の観光地に、あまり行ったことありません。観光地そのものを知らなかったり、最寄り駅を知らなかったり、色々問題があります。


 何でこんな、不思議なことになるんだろうというのが現地人の謎でした。


 そんな時に出会った本がこれです。(敬称略)

題名:異文化理解力 相手と自分の真意がわかるビジネスパーソンン必須の教養

エリン・メイヤー(著)、田岡 恵(監修)、樋口武志(翻訳)


 大変に面白い本ですので是非どうぞ。この本に書かれていた事を見て、現地人は納得しました。

「日本語は、ハイコンテクストな言語である」


 詳細は省きますが(是非読んでください)、日本語でのコミュニケーションでは、言語化されない情報もお互いに理解することが求められるのですね。言い方を変えると、言外の意味が多いのです。「暗黙の了解」とか、「行間を読む」とか、「以心伝心」とかです。


 つまり。日本語話者の現地人は、路線図の前に立っている人に質問をする時点で、駅について質問するという意図を持っているのですね。かつ、それを相手も駅についての質問をされているという理解をしていると考えているのです。つまり、言外の意味を文字化すると。


 路線図の前で迷っている人に、現地人が言う「あなたはどこに行きますか?」は、「あなたはどこ(の駅)に行きますか? 」なのです。駅という単語が省略されているのです。


 他言語の話者とは、それが成立しません。そう考えると。

“Where are you going to go? ” 「あなたはどこへ行きますか?」

と言われたら、目的地を応えますよね。


 ふとした日常の疑問から、現地人の中にあった、無意識の前提、あるいは思い込みを自覚しました。


 異文化を知ることは、己の文化の理解に繋がります。面白い本ですから是非どうぞ。できればお近くの書店でご購入いただけましたら幸いです。

(出版不況を悲しく思っている本の虫より)


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