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48〈はじめての鬼一法眼〉

三話目なんだ。まだの人は一話目、二話目を見てね!



 目の前には竹林が見える。

 俺はしっかりと脳内でマップを覚えるべく、時折、方位磁石を見ながら確認する。


 マップから言えば南西が寺院、西に竹林という感じだ。


「タケノコ! タケノコを掘りましょう! 」


 レオナが素早くインベントリから細いスコップのような物を取り出して、辺りを伺い始める。

 たしかタケノコは地面を踏んだ時に微妙なでっぱりがあるんだったか。


 全員で地面を見つめながら、ふみふみ、とやる。


「ゐっ! ゐーっ! 〈お! ちょっと違和感があるな! おーい! 〉」


 俺は皆に分かるように手を上げて大声を上げる。

 足でしっかりと違和感を感じるように地面を踏み締める。


「ギャギャ、ギャローッ! 」


 違和感が突如、浮き上がってきた。


「ゐーっ! 〈げえええ! 〉」


 手足をつけた、ひとつ目人参が飛び上がる。

 タケノコに紛れて、魔物がいるのかよ。

 しかも、人間の子供くらいの大きさがある。


「ギャローッ! 」


 お化け人参が手足を振り回す。

 ゴッ! と固い音がして俺は綺麗にぶっ飛んだ。


 一撃で俺のHPが八割持っていかれた。

 俺はレオナから借りた細いスコップを慌てて構える。

 くそ! 頭がくらくらする。


───【全状態異常耐性フェンリル】成功───


 お、治った。何かの状態異常か。


「マンドラ人参、採ったー! 」


 お化け人参の背後から煮込みの一撃。


「ギャ、ギャ、ギャロ…… 」


「ゐーっ! 〈やってくれたな! 〉」


 動きの止まったお化け人参に正面からスコップを突き込む。


 それでお化け人参は真っ二つに割れて絶命した。


 俺は慌ててHPポーションを頭から被る。


「ゐーっ! 〈助かったぜ、煮込み! 〉」


「なんの、なんの、あ、いきなり種出た! 」


 ドロップは煮込みが『人参の種』、俺は『マンドラ人参の種』だった。

 いや、レアドロップいらねーわ! 


「とりあえず種はまとめてグレンが持つといいね」


 煮込みが『人参の種』を渡してくる。

 まあ、受け取っておこう。


 今さっきの状態異常も確認しておく。

 え? 『昏倒』? 危ねぇ! 耐えられなかったら気絶かよ。


 先程よりも慎重にタケノコを探す。

 ほんの一時間程度で『タケノコ』三本、『人参の種』十個、『マンドラ人参の種』四個が手に入った。

 何故か俺のドロップはレアドロップのみだったことは記しておく。




 場所を移して、滝壷近く。

 ひんやりと涼しい場所だが、川辺りは魔物の出現率が高いらしい。


「釣りをするなら、この滝の上ですねー」


「ゐーっ! 〈いや、移動の前に死にそうだわっ! 〉」


 サクヤがのんびりと話す、その近くで、俺はお化け大根と猪豚の魔物に追われている。


「攻撃しなければ襲って来ないコたちなんですよー」


「ゐーっ! 〈いや、先に言えよ! 〉」


「待つピロ! 」「待てー! 」


 ムックと煮込みが、俺を追う魔物を追っている。

 なあ、いい加減スコップだけで対応しようとするのやめねえ? 

 届いてないんだが……。


 俺はマンダラ大根ってやつから、『方向誤認』、猪豚魔物から『流血』の状態異常を受けた。




「ゐー…… 〈なんかここのモンスターって状態異常攻撃多くねえか…… 〉」


 滝から大回りで滝の上の川を目指してあるく。


「たしか……幕間の扉の寺院の修行場とかそういう設定だったかと…… 」


 レオナが説明してくれる。


「ここの魔物にカラス天狗がいましてですねー。

 そのコのガチャ魂は耐性系スキルが満載なんですー」


 なるほど、状態異常を散々食らわせて、耐性スキルを狙わせる作りになっているのか。

 いや、もしかすると逆か? 

 耐性系スキルを取りに来たやつに状態異常の怖さを教えるとか? 

 まあ、とにかく状態異常が多い場所、ということか。


 そんな話をしながら歩けば、目の前には岩場が広がり、川が流れていた。


「この辺りは魔物がほとんど出ない釣りスポットだよ! 」


 確かに岩場には生き物の気配がないな。

 俺たちは思い思いに釣り糸を垂らす。

 餌は料理機ホームメイダーで作った練り餌というやつだ。


 暫しの和やかな時間。

 晴天の昼状況で山登りは汗が吹き出すが、川の近くは、ひんやりとした風が流れていて、気持ちがいい。


「サンドイッチ作ってみたんですが、いかがですか? 」


 レオナの言葉に甘えて、俺はサンドイッチを貰う。


「ゐーっ! 〈お、これはまた材料からの自作か? 〉」


「ええ、お口に合えばいいんですが…… 」


「ゐーっ! 〈いや、最高だ! 美味い! 〉」


「くーっ! さすがにフィールドで感覚設定リアルは無理だー! く、悔しい…… 」


 煮込みが悔しそうにしている。

 多少減っていた体力が回復する上、すっかりピクニック気分だ。


 ムックが嬉しそうに「ヒットピロ! 」と言って、鮎のような魚を釣り上げた。


 ゲーム的な仕様か、ただ単に魚が豊富なのかは分からないが、結構な頻度で当たりが来る。

 種類も実際に居たとされる魚からゲーム独自の魚まで様々だ。


 俺たちが釣果に満足して、そろそろ戻ろうかとした時、川の中に出っ張っていた岩場の上にそいつは立っていた。


「ゐー? 〈ん? 誰だあれ? 〉」


 黒い濡羽のような肌、カラスの擬人化に山伏と呼ばれる修行者の格好。


「カラス天狗…… 」


 あれがカラス天狗か。


───『山の主・鬼一法眼』の範囲に入りました───


───ボス戦を開始します───


───『ボス戦ルール』によりフレンドリーファイア無効・感覚設定30%upが適用されます───


「ゐーっ! 〈ボス戦! カラス天狗ってボス戦かよ! 〉」


「あー、いえいえ、あれはカラス天狗じゃなくて、鬼一法眼というフィールドボスですねー」


「うわー、グレンの引きの悪さがここで出た…… 」


「ゐーっ! 〈いや、俺のせいじゃないだろ! 〉」


「どうりで今日ってグレンさん、レアドロップばっかりでしたよね? 」


 おう、いらねーレアドロップな。


「ゐーっ! 〈だから、俺のせいにすんなよ! 〉」


「とにかく戦闘準備ピロ! 」


「ゐーっ! 〈まともなのムックだけだな〉」


「えっ!? そ、そんなことないピロ…… 」


 だから、モジモジした変な照れ方すんな。


 俺たちは慌てて戦闘準備を進めるのだった。


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