47〈無常なる高野の山脈〉
本日、二話目!
まだの方はひとつ前から見てね!
仕事が終わり、飯を食う。
確か、材料から作ると違うって話だったか。
従妹はこの話、あんまり食いつかなかったな。
唐揚げを自作してみた。
調理器具はまな板、包丁だけ買ってきた。
後は人工合成食料から材料を作る。
下ごしらえというのを、情報閲覧しながら見よう見まねでやる。
なかなかに時間が掛かるな。
コンロに鍋? 持ってないから料理機でやるか。
チン! と料理終了の音がする。
唐揚げと白飯、みそ汁、お新香。
世に言う唐揚げ定食だ。
真っ先に大振りな唐揚げに齧り付く。
バリガリッ、と衣が豪快な音を立てる。
口に拡がる油と肉汁が、うまい具合に咀嚼に合わせて混じり合う。
あ、美味い。
少々、不揃いで形は変だが、何故かそれが口の中で新しい食感を生み出し、鶏肉のしつこくない風味と醤油の香り、生姜とニンニクの刺激が感じられる。
くっ……違うじゃないか!
少し味が濃かったりする部分もあるが、それもまたアクセントだと感じられる。
食べるのは一瞬だった。
ふぅ……もしこれが、天然物の食材だったりしたら、もっと違うのか?
俺はさっそく『リアじゅー』にアクセスするのだった。
『大部屋』で仲間を待ちながら、畑の整理を行う。
種がどれだけ入るか分からんが半分くらい空けておくか。
そうして画面を見ながら操作していると、声が掛かる。
「お待たせしました! 」
「ゐーっ! 〈いや、そうでもない。悪いな、買い物まで頼んじまって〉」
レオナだった。
「いえ、初めてだと分からない物とかもありますから」
そう言ってレオナは俺に『釣竿』『回復道具一式』『特殊弾レオナお勧めセット』などを渡してくる。
俺は言われるがままに代金を渡す。
「お待たせー! 」
む、この声はと見れば、やはり煮込みだった。
「ゐっ! 〈ぶふっ! 〉」
「に、煮込みさん!? くっ…… 」
煮込みめ。いつもの目出し帽と黒タイツの上に探検隊帽子、虫取り網、虫かごという夏休みルックで来やがった。
「どうしたの? 何かあった? 」
これは分かってて聞いてるやつだ。
「ゐーっ! 〈くそ! やられたぜ! なんだ、そのシュールな感じは! 〉」
「よし! 勝ったな! 」
「お待たせしました! わあ、煮込みさんかわいーですねー」
「ゐー、ゐっ! 〈おう、サク……ぶっ! 〉」
「どう……くっ……負けた…… 」
「サ、サクヤさん!? 」
サクヤは顔出しピンクタイツの浦島太郎だった。
「ゐーっ! 〈なんなんだお前らは! 〉」
「いかがです? うなぎとか捕れそうじゃないですか? 」
「いやあ、昨日ログアウト前に煮込みさんと盛り上がりまして…… 」
これから向かうのって推奨レベル70のスポットだよな?
「ゐーっ! 〈ピクニックでも同人誌即売会でもないんだぞ! 〉」
「お待たせしましたピロ」
「ゐーっ! 〈まさか! 〉」
いや、普通だわ。というかムックも呼んでたのか。
俺はムックの肩に手を置いて、しみじみとした。
「ゐーっ! 〈良かったよ。普通で〉」
「は、はぁ…… 」
良く分かっていないムックを加えて、俺たちは『幕間の扉』から『無常なる高野の山脈』へと飛ぶのだった。
俺たちは山の麓の寺院らしき扉を背景に、その山を見た。
右手は降り道だが、途中で終わって崖になっている。
左手には登り道がゆるやかに続いて、木々の間を進む道になっている。
「じゃあ、グレンは絶対にはぐれないように!
この中の誰かと必ず一緒に動くようにしてね! 」
くそ! 虫かごを肩から掛けた奴に注意されるとか、屈辱すぎる。
「ゐーっ! 〈いや、サクヤも俺と似たようなもんだろ? 〉」
「ご心配なさらずー。
この辺りは何度も通った道ですのでー、スキルの入れ替えで低レベルの立ち回りもばっちりですよー」
ちぃ! これだから三周目は!
俺は四人に囲まれるように登り道を進むのだった。
ジャイアントキリングだ! と意気込んでいたが、やっぱりパワーレベリングだった。




