443〈side︰響也〉
本日、三話投稿の一本目になります。
───ザザッ……えてるか?…………ちら、じいじ……ナロクイベントは勝った……オーディンもアダムが倒した。繰り返……ラグナロクイベントは勝った! 外概念オーディンもアダムが倒した!───
無線が復活した。
それはつまり、『フリズスキャールヴ』を破壊して、この地域に張り巡らされた『アースガルズ』が解除されたのだろう。
だが、じいじさんが喜びの報告をしてくれるのはありがたいが、こちらはそう暢気に構えていられない。
「SIZUさん! グレンさん!」
山田さんが研究棟があった場所にできた穴に向かって叫ぶのを、他のメンバーが必死に押し留めていた。
このままでは、山田さんまで一緒に落ちてしまいそうだ。
僕は山田さんのことを他のメンバーに任せて、無線に応えることにした。
───じいじさん。こちら響也です───
───響也くんか! ようやく繋がったか……状況は?───
───作戦目標は達成しました───
最も重要な部分はひと言で済む。
じいじさんは、こちらの続きを待つことなく、喜色に溢れた声を上げる。
───そうか!───
───……ただ───
───うむっ……誰だ……?───
僕の言い淀んだ声色に、色々と察したじいじさんが、多くを語らず、ただ、それは誰なのかを聞いた。
───SIZUさんとグレンさんです───
───……そうか───
───今、一人、Bグループの実験体らしき子を保護しています。どうやら、その子の力で『エデン』の外殻から内殻まで貫通する大穴を作ったようで、今はMP不足で失神しています───
───では、その子が?───
───はい、二人は穴に落ちて、機関部のマグマ溜りへ……───
───エデンは?───
───穴に反応して、冷却剤の爆発を確認しました。スペック通りなら、大事故は起きないはずです───
ただ、冷却剤の爆発によって、二人の生存はより絶望的になっていた。
僕は続ける。
───重軽傷者が多数出ています。これから戻ります。受け入れ準備を……───
───ああ、会長くんも居る。なるべく早く戻れるよう、祈る───
───はい───
僕は全体に撤収の指示を出す。
SIZUさんはいないし、まりもっこりさんは重症だ。
山田さんは取り乱していて、他のメンバーも動揺している。
僕が背負うしかない。
こうして、僕たちは撤収した。
後日、今日のことはニュースになるだろうか?
それとも、闇から闇へ葬られるか?
今後、『マギクラウン』の壊滅によって、超能力者は増えて行くだろう。
ふたつ、いや、今となっては三つの文明のバランスは転換期を迎えた。
僕はSIZUさんが目指したように、この世界のバランスを取って行こうと思う。
これから、激動の時代が来るだろうから、その揺れを少しでも小さくするのだ。
そのために『灰色の画布』は存続していく。




