431〈side:シシャモ 変身〉
痛い。ズキズキと脇腹が疼く。
普通の痛みとは違う、魂を削られたような痛みが僕を襲う。掠っただけの傷なのにだ。
『天雷』の『天雷の不出来槌』は、僕にとって特別な痛みを与えるようだ。
痛みには慣れたはずなのに。
初めて鮫島に反抗して殺された時のような恐怖を伴う痛みが、僕の心を蝕んでいく。
「シュオォウァッ! 何度でも運命など壊してやろう。
それが破壊を司る雷神の役目だからだ!」
『天雷』が近づいて来る。
全身金で胸に獅子がついた鎧。その獅子がテイムモンスターたちに向かう。
「フオォォウ! 燃え尽きろ、【百華の豪炎】」
獅子の顎から白炎が吐き出される。
「こまっつ……」「アレー、ソレー……」「マン……ドラ……」
ごうごうと響く炎の音の中、テイムモンスターたちが炭化していく。
「ああっ、みんなー!」「いかん、ロミオ!」
孫を留めようとして、じいじさんの背中が、ジリジリと焦げていく。
ロミオくんも焦げつく熱に構うことなく手を伸ばしていた。
くっ……こんな痛みに、負けてたまるか!
僕はHPポーションを出して被る。
痛みは引いても、恐怖が消えない。でも、その恐怖に負けないように、僕はグレンさんの真似をする。
「クソッタレがぁぁぁっ!」
僕が足掻いている時、豪炎の中から飛び出す影がある。
キウイとフジンだ。
キウイの羽根は黒く煤けていて、フジンも渇いて、今にも燃えそうだ。
飛び出した二匹は、ヨレヨレと僕の前まで来て倒れた。
「あ、ああ、ああああああ……」
先程までグレンさんの真似をして力を得ていた僕は、目の前で死に行くキウイとフジンを見て、急激に身体から力が抜けていく。
「き、きうー……」
フジンが腹の下で大事に守っていたであろうアイテムを僕に差し出す。
黒い羽根だ。
「コア……」
確かに預かった。でも、使うつもりはなかったから、置いて来たはずだった。
でも、フジンが持っていた。
『何故』は今の問題じゃない。
これが、今、僕の手にあることが問題なのだった。
僕が『黒い羽根』を受け取った瞬間、フジンがコテンと倒れた。
『天雷』を見る。
執拗に炎を浴びせていた。もう、全部消し炭になってしまったのに、さらに念入りに炎を吐く。
笑っていた。
自身の強さなのか、テイムモンスターたちの弱さなのか分からないが、『天雷』はタガが外れたように笑っていた。
核が僕の手の中で熱を持っている。
グレンさん、ごめん、使わせてもらいます。
「変身!」
僕は叫んでいた。




