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特撮VRMMOで戦闘員として暴れてみた  作者: 月乃 そうま


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429/447

429〈side:シシャモ ファイブハート博士〉

ひぃぃ……すいません。

遅くなりました。


 そこは船の艦橋と呼ばれる場所だ。

 だだっ広い空間に、ぽつぽつと座席が埋め込まれていて、天井から機械の塊のような座席がひとつ、垂れている。

 そして、正面のガラス窓に映るのは、星々の海、宇宙。


「ああ、こっちは第二艦橋だよ。レギオンのボスは第一艦橋だから……」


 その垂れた座席に座って、あれこれと機械をいじっているおじさんが、こちらを見もせずに言った。


「……五杯」


 じいじさんが、呟いた。


「うん? おや、先輩……なるほど……知っていて僕には隠していた訳ですか……」


 ちらり、とおじさんがじいじさんを見て、すぐに興味を無くして機械に向き直った。


「私も知ったのは、お前に席を譲った後だよ。

 その頃には、お前に何かを伝える気力は失ったがな……」


 僕は二人を交互に見てから、じいじさんに聞く。


「あの、お知り合いですか?」


「いや、昔ならいざ知らず、今の知識欲に取り憑かれた彼は、私の知らない怪物だ……」


「ははっ……悔しいんですね。

 こりゃ傑作だ。後輩の僕が結果を残すのが、そんなに気に入りませんか?」


「結果? こちらの世界の技術をサルベージするだけが、君の言う結果か?」


「こんなものは副次効果ですよ。

 スポンサーから金を引き出すための手段でしょ。

 僕はちゃんと脳の働きを特定して、超能力を効果的に目覚めさせる手段を構築したんです。

 あなたが自分には無理だと、手を引いた研究でね」


 おじさんが手を止めて、椅子に座ったままこちらへと向き直った。


「極限状況下におけるソウルコマンド励起と活性について、か」


「ああ、情報を抜いていたのも先輩でしたか……」


 正直、二人の話していることが難しい話だということしか分からない。

 そうしていると、後ろのロミオくんが小声で話し掛けてきた。


「ねえ、僕、アイツ、嫌い……撃ってもいいかな?」


 どうやらロミオくんの子供心にも、おじさんは『嫌なヤツ』として映っているらしい。

 ただ、嫌いだから攻撃するというのは、少しロミオくんの為にならない気がした。

 僕は無言でロミオくんを引き寄せて、その肩を抱いて、ゆっくりとロミオくんの興奮が収まるようにしていた。


 じいじさんとおじさんの口論は次第にヒートアップしていた。


「……息子さんに顔向けできるのか、五杯。

 なぜ、変わってしまった?」


「変わる? 何も変わってなどいませんよ。

 最初から息子の話なんて、あなたの出方を探るための方便です。

 だって、お好きでしょう?

 息子のために、なんて話……」


「なっ……」


 じいじさんの顔色から、あからさまに血の気が引いたかと思うと、小刻みに身体が震え出した。


「五杯ぃぃぃっ!」


 なんだろう。じいじさんにとって息子さんの話というのは禁句だったのか、それとも、常に上から目線の後輩らしきおじさんの態度に堪忍袋の緒が切れたのか、じいじさんはいきなり『ショックアロー改』を構えて、その矢を放った。


 おじさんの肩口に矢が刺さる。

 それは『1点』ダメージだ。


「え……?」


 僕はつい声が出てしまった。

 変身しているようには見えない。

 それに、じいじさんはレベルがカンストしているはずだ。

 なのに『1点』ダメージしか入らないのはおかしい。


「やれやれ……先輩は昔から変わりませんね……。

 頭は悪くないはずなのに、直情的で冷静さに欠ける短絡的な面を持つ。

 よく観察すれば、違和感にも気づけたはずですよ。

 現実でスポーツのひとつもして来なかった科学者風情が、戦火の坩堝にいるはずなのに、悠々とゲームで遊んでいる……それは何故なのか?

 まあ、現実にいる僕も既に完成していますから、今頃、まだ仕事中でしょうけれどね」


「何を……」


「分かりませんか?

 まあ、検体は僕が確保してしまいましたし、触れてもいないんじゃ、無理もないですね。

 僕は……」


「ファイブハート博士。仕事の邪魔が入るなら、呼んで下さいとお願いしていたはずですが?」


 僕たちが入って来たのとは反対側の扉が開いて、『天雷』の変身前アバターが現れた。


「天粕くん、だいぶ押されているようじゃないか?

 忙しそうだったからね。気遣いだよ」


「無用な気遣いです。しょせんは仮想空間。

 こちらで負ければ、隊員たちはより深く学習するでしょう。

 あまり勝ち過ぎても、驕りが生まれるだけです」


「こちらの研究だって、スポンサーを黙らせるためには、必要なんだけどね……」


「ははは……これは異な事を。

 現実ではすでに五割近くの掌握に成功しています。

 黙れと言えば、黙りますよ、この国は。

 さて、仕事にお戻りを……こちらはやっておきますから」


「はぁ、やれやれ……働き過ぎは良くないんだけどね……」


 おじさん。ファイブハート博士と呼ばれた人は、また視線を機械へと戻して、何やら仕事に戻ってしまう。

 代わりに、『天雷』の人がゆっくりとこちらに近づいて来る。


「さて、『ドラゴン』を引き連れての登場ですか。

 まあ、素人集団のプレイヤーよりはマシだといいですね」


「マンダラー!」「マメー!」「……」


 僕は前に出る。インベントリから巨大な斧を出す。


「今度こそ!」


「また、貴方ですか。神話のようにはいきませんよ。

 いい加減、理解すべきですね……もう鎧もないじゃないですか……」


「何度でも、何度でも、僕はやる!

 お前を倒すのが、僕の宿命だ!」


「ああ、ここはゲームですが、そんな漫画みたいなことは起きないんですよ。

 早く大人になって、国のために働きなさい。

 それが生かされている国民の義務ですよ。

 変身……」


 何故かお説教されながら、変身された。

 これで能力値は十倍差。


 僕は巨大な斧をぎゅっと握りしめるのだった。



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