191 side︰グレン
胸糞注意です。
今話あとがきにて、超あらすじ載せておきます。
苦手な方はそちらへどうぞ。
「やっぱりコレじゃない気がするんだよな……」
肉でできたマギ系ヒーローの鎧を着たやつが、ぶつぶつと言っている。
グロい……ホントにヒーローかよ……妖怪人間の方がマシな見た目してるぞ。
シルエットはマギミスリルのような騎士鎧という感じだが、肉と骨と血管と血液でまだら紅白に青い筋が入り、血が滴っているというグロさだ。
「殺してくれ!」「いぎぎ……痛え……」「もう嫌だ……」
怨嗟の声はその肉鎧から聞こえる。悪趣味だな。
「ゐーんぐっ?〈こいつマギ肉ゴーレム?〉」
「違う、やつはマギフレッシュ。
やつの装備は全部、俺たち戦闘員だ!」
糸、居たのか……。
『マギフレッシュ』は「どうもこれがしっくり来ないんだよな……」と言いながら、マジックテープを剥がすみたいに腹当てをベリベリ剥がす。
「いぎぃぃぃぃぃぃっ! やめ……痛っ……」
べちゃりと肉鎧の腹当てが棄てられる。
腹当てだった戦闘員は黒い塊になって、叫ばなくなった。
「ひぃっ!」「いやだ! あんな死に方……」「頼む、フォーリン・ジェット、終わらせてくれ……」
「ん……これじゃないか、俺の鎧。【人の鎧】」
「くそっ、せめて一撃……あ、ひゃあぐえっ……」
近づいた戦闘員が捕まって、肉や骨がひしゃげる音と共に一枚の板みたいになった。
それを『マギフレッシュ』が自分の腹に近づけると、シックスパックの腹当てになって張りついた。
「痛えっ! なんだこれ、めちゃくちゃ痛えぞ!
やめろ! 動くんじゃねえっ! 痛えっ!」
「ゐーんぐ……〈趣味悪いな、てめえ……〉」
見たら理解させられる。
最悪な敵だ。
「うぅ……何言ってるか分かんねえ……なんだこのカラス戦闘員……クマ戦闘員……いや、ウサギ……サソリ……なんか気持ち悪ぃな……」
「ゐーんぐっ!〈お前に言われたくねえよ、肉ゴーレム!〉」
「くそっ……全身に仲間が張りついてるなんて……どこか鎧のない部分を探すんだ!」
糸が必死に他の戦闘員に声を掛ける。
「ねえよ、そんな場所!」「関節なんか狙えるか! 俺は嫌だぞ、鎧になるのは!」「動きを止めようにも味方に当たるぞ!」
「痛いよ……殺してよ……」「頼む、限界だ……」「風が撫でるだけで、激痛が走るんだ……」
時間が過ぎていく。
「どうもこっちの肩は俺の鎧じゃない気がする……」
そう言って『マギフレッシュ』は右肩を左腕で掻き毟る。
「うぐっ……ぐっ……うっ……」
「ああ、やっぱり俺のだったかな?」
「じじい!」「てめえ……じじいと孫は離せよ!」「そうだ、そいつらはエンジョイ勢だ。手違いなんだよ!」
「ぐああ……もういい……じじいと孫を解放してやってくれ!」「そうだ、お前なんの恨みがあんだよ!」「嫌だ、俺から殺してくれよ!」
「あは、あははははは……あははははははははっ……あははははははははははは……みんなが俺の鎧だ!
みんなが俺のことを想ってる!
さあ、行こう! 勇者の技を見せてやる!」
「ゐーんぐっ!〈気持ち悪ぃんだよ、てめえ! 【封印する縛鎖】〉」
『マギフレッシュ』の足元に闇が広がり、そこから亡者たちの青白い腕が伸びて、『マギフレッシュ』を捕まえる。
『麻痺』『盲目』『暗闇』『猿轡』『回復無効』『行動阻害』『恐怖』『獄熱毒』『凍結封印』の全九種の状態異常が襲う。
ついでに俺の左腕が破裂する。
痛いが今はこの時間を活用しなければ。
「ゐーんぐっ!〈痛ってえな! 【餅つき】〉」
俺が使ったのはキックバフだ。
【餅つき】
射程︰キック 対価︰MP5
キックバフ。あなたのキックに10秒間、『防具無視』の効果を与える。
・ぺったんこ〜。ぺったんこ〜。あの月を見ているとなんだか力が湧いてくる。
しんとーけい? なにそれ?
確かこんな効果だったはずだ。
半ば賭けだが、恨まれるのは覚悟の上だ。
俺は助走と共に【ウサギ跳び】で上空へと身を躍らせる。
「ゐーんぐっ!〈終わらせてやる! 【満月蹴り】〉」
放物線を描いて、俺のキックが『マギフレッシュ』を捉える。
狙いは鎧のない喉だったが、そんな精密な動きができる俺じゃなかった。
すまん、胸当て。
「むぐぅ……ブハッ、な、なんだよ、真っ暗だ……嫌だ……一人は嫌だ……俺を想って! 俺を……げひゅっ……」
『暗闇』と『恐怖』のコンボだろう。
『マギフレッシュ』は孤独に耐えられない性分らしい。
怨嗟の声で孤独を紛らわせるなんて、アホすぎる。
「ゐーんぐ……〈お前の笑顔はひとりよがりって言うんだよ……〉」
きっかり「1000」点ダメージが入って、『マギフレッシュ』は青白い腕に連れられて足元の闇へと消えていった。
「勝った……」「お、おい、みんなは……」「だ、大丈夫だ……ゲーム、これはゲームなんだから……」
「ゐーんぐっ!〈ああ、くそっ、腕が痛え……〉」
今の俺はRTAの最中だ。
痛みを堪えて駆け出した。
気づいた糸が全員に声を掛ける。
「動けるやつは彼のフォローだ、行くぞ!」
「あ、ああ……」「くそっ、じじいと孫の仇討ちだ!」「ボス戦だ、これで終わらせてやる!」
俺の後ろを十数人の青部隊が追い掛けてくる。
NPCドールと罠が最後に立ちはだかっていた。
「ゐーんぐっ!〈罠だ! 気をつけろよ!〉」
「罠だ! 無闇に壁とか触るなよ!」
糸が全員にフォローを入れる。
俺は【トラップ感知】で赤く見えるから問題ない。
NPCドールを喰らう。
味はない。喰ってる感覚があるだけだ。
最後の扉が見えて、そこを【熊突進】で無理やり突破する。
白い神殿のような部屋だ。
玉座には宇宙服らしきものに身を包んだやつが座っていた。
少し驚いたように腰を浮かせかけるが、考え直したのか、もう一度腰を落とした。
「ヒトのコよ。マサか届クとはな。
ミアヤマッタか」
「ゐーんぐ!〈お前がボスか!〉」
「ツチクレのイノチがココまでのシンカをミせるか。
ワがドレイタチは、マケたヨウだ。
クサッテもリュウだな。アラブルイノチをトトノエてやったオンをワスレたイミゴタチめ……」
「うわっ、なんだこの部屋……」「うぇ……気持ち悪ぃ……」「ど、どうしたんだお前ら?」
「シラズにキタか。ゾウブツシュのマエだ。
インシ……ユニークをモタナイモノへの、シレンだ。
イマ、ココでユニークにシンカスルか、ワがマエにコウベをタレるか、キメよ」
意味が分からない。ただユニーク持ちなら気持ち悪くならないらしい。
「ゐーんぐっ?〈それで口上は終わりか。ボス戦始めるぞ?〉」
「そうセクな……。
ワレにニクタイテキなモノナド、タダノイッテンにスギヌ。
もう、オヌシらのカチだ。
さて、ヴィジョンをウケトレ。
ホウビだ」
宇宙服が指を振る。
宇宙が見えた。
宇宙が揺らめいていた。二重写しのような揺らぎがあった。
それは良く目を凝らせば全てが螺旋のように回っていて、それが二重写しで……偏り方によって残った螺旋が別の螺旋と交わって、新しい螺旋となり……。
悟っ……。
「ゐーんぐっ!〈ざっけんな! 俺らは実験動物じゃねえ!〉」
一瞬、色々と理解しそうになって、俺は宇宙服の首に狼頭を打ち込んだ。
遮光シールドの奥にある爬虫類じみた瞳と目が合った。
違う、違う……そうやって概念を植え付けるのが、今の……。
俺は叫んだ。
狂気判定とかいらねぇんだよ!
やつの首から黒いモヤが噴き出すのを構わずに、俺はソレを噛みちぎった。
危ない……一瞬、世界の天秤を引っ繰り返すところ……俺は頭を振る。
世界は色付き、部屋は部屋だ。
宇宙服の中身は空っぽで、脳内アナウンスが『りばりば』の勝利を告げた。
「なんだったんだ、今の……」「うぇっ……気持ち悪かった……」「……」
───ラグナロクイベントの勝利により運営から報酬が支払われます。レギオンレベルが累計4上昇。『マギスター』の資産還元。その内五割がマジカとして支払われます───
超あらすじ。
敵ヒーローを浸透勁で倒したグレンたち。
最後の敵ボスの部屋へと入る。
お前らの勝ちだから、褒美をやると狂気判定させられそうになるものの、途中で我に返ったグレンにより、敵ボスの喉笛を噛みちぎったことにより、勝利が確定する。
レギオンレベルが4アップした。




