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俺、シシャモ、『シノビピロウ』、『エレファントバズーカ』VS『マギミスリル』、『マギサファイア』『ロクヤスター』の戦いはお互いに場所を変えながら進む。
ヒーロー側は敵基地内ということで、ここで死んだら高確率のアイテムドロップ、つまり核を失う可能性が高いため、それなりに慎重で、俺たちは全員、復活位置が『街』や『城』に設定されているために死ねばもうここで戦力になれない。
お互いに死ねない状況ゆえに、激しく位置取りをするものの、決定打を避けて動き回る。
戦場は自ずと広い場所を求め、修練場まで動いた。
俺と『マギサファイア』は何故かとても良く似ていた。
お互いに一対一を作る【誘う首紐】と【作られる道】。
相手の動きを止める【封印する縛鎖】と【悪魔封印の秘密】。
お互いがソレを知っていて、それが終わりの始まりだと知っているからこそ、使いどころを探り合っていた。
それぞれが牽制しながら動く。
俺こと『闇の堕天使』と『シノビピロウ』はHPが多いタイプの怪人じゃない。シシャモはまだ『動く棺桶』を出していないので、今現在、前に立てるのは『エレファントバズーカ』だけだ。
『エレファントバズーカ』をタンク役に遠距離攻撃である【地獄の河】を狙うが、『マギサファイア』には【魔操撃】がある。しかも【魔操】というホーミング性能を持たせるスキルもあるので、遠距離戦は不利だ。
「僕が行きます!」
シシャモが取り出したのは壁のような盾だ。
湾曲している四角い盾で、ひとりで要塞みたいに見える。
「きゅ……お前も怪人だったか!? 来るな! 【角放電】」
『ロクヤスター』が角から自身を包み込むような放電を放つ。
『マギミスリル』と『マギサファイア』は素早く後ろに逃げた。
距離が離れた。チャンスだ。
「ゐーんぐっ!〈シシャモ、手を離せ! 【熊突進】〉」
俺はシシャモの後ろから壁のような盾に突進。
盾そのものをぶっ飛ばした。
「きゅーっ!」
『ロクヤスター』の放電に装甲を削られながら、盾が飛ぶ。
シシャモが持つ盾は重い。【装備重量無視】だから、どれだけ防御力を上げてもいい。ただ、大きいものは取り回しが辛くなるし、素材を大量に使うので、量産できないのがネックではある。
そして、俺の【熊突進】はとにかく5mは何があっても進めるというスキルだ。
超重量の盾に突進速度でぶつかれば、俺もただでは済まないが、そのダメージは【サーベルバンパー】が折れることで吸収していた。
飛んだ壁の盾が『ロクヤスター』を巻き込んで、修練場の本当の壁にぶつかる。
『ロクヤスター』は壁と壁にサンドイッチされて、身動きが取れなくなっていた。
赤い光に俺が包まれる。殺気だ。
だが、予想の範囲内だ。
俺が隙を晒せば、当然、『マギサファイア』が動く。
だから、ターゲッティングは同時だった。
お互いに回避を優先。
ここまで似たようなスキルだと、当然、動きも似てくる。
ひとつ確信めいたものがある。
『マギサファイア』は俺の【野生の勘】によく似たスキルを持っている。
しかも、精度が高く、予知に近いスキルだ。
おそらく【神秘の伝道者】じゃないかと思っている。
七大天使のラジエル。
七大天使の一人だというのは知っていたが、詳しく知らなかったので調べた。
ラジエルの書という伝説があった。
その書には天界と地上、宇宙の神秘の全てが書かれているとされている。
アダムやノアの方舟のノア、ソロモンの手へと渡されたとされ、サファイアで作られていたという話もあり、モーゼの十戒の石版もこのラジエルの書だったのではないかという話もあるらしい。
天界と地上、宇宙の神秘の全てを知るのなら、スキルの軌道や範囲が分かることもあるだろうと思う。
残念ながら弱点らしい弱点は伝承からは見つからなかった。
お互いに動きを止めるスキルを俺と『マギサファイア』は持っているが、その弱点も理解している。
それは、相手を捕える時に視界の中に収めていなければならないということだ。
修練場には的や武器ボックス、障害物などが置いてある。
相手から瞬間的に隠れれば、避けることは可能だ。
だからこそ、俺と『マギサファイア』はお互いに牽制しあって、決定打が打てない。
『マギミスリル』は『エレファントバズーカ』と『シノビピロウ』を相手に長い戦いに入った。
幻影と幻覚、素早さを使う『シノビピロウ』にパワーとディフェンス、強力なバズーカを使う『エレファントバズーカ』はいいコンビだ。
バランスが取れている。
シシャモは壁の盾でサンドイッチにした『ロクヤスター』を押さえつけていた。
時が過ぎる。
「肩パッド……次は決着よ……」
「ゐーんぐ……〈やりづらいから、なるべくなら来ないでくれ……〉」
ヒーローたちは転送された。
ラグナロクタイムが終わった。
俺たちの基地は、ボロボロだった。
特に装備部と個人ロッカーが酷かった。
狙って念入りに破壊したようだった。
『大部屋』に戦闘員たちが集まっていた。
「個人ロッカーの修復が最優先!
装備部の機材で無事なものは街へ運んで!」
レオナが声を張り上げていた。
「時間がある戦闘員はフィールドに素材を取りに行って!
糸、素材採取の割り振りを!
名古屋さん、食堂部の被害は?
オオミさんは……」
忙しそうだ。
俺は仲間たちに挨拶の連絡を入れて、ログアウトした。




