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遅くなりましたm(_ _)m
ラグナロクイベント終わり。
『大部屋』の俺たちは何とも言えない顔をしていた。
相変わらず細かい部分は記憶にないが、黄色の回廊が完全制圧され、青の回廊を完全制圧したのは覚えている。
ルールによれば、完全制圧した回廊にはそれぞれ十五分の猶予時間が与えられる。
攻撃と防御を同時に行わなければならない。
俺たちが完全制圧した青の回廊は十五分間、俺たちしか入れない。
逆に黄色の回廊は『マギスター』側しか入れない。
その十五分で青の回廊をどこまで要塞化できるか、また、そこから攻撃に出るかどうかも問題になるだろう。
全員がどうする? どうなる? とお互いに顔を見合わせるばかりで、無為な時間が過ぎていく。
「聞いてくれ……」
オオミが壇上から小さく呟いた。
全員の視線がオオミに集まる。
「今後については、参謀部と幹部会で協議したい。
一部ではこの結果に不満がある者もいると思う。
ただ、俺は自分の決断が間違っていたとは思っていない。
だが、おかしいと思う者は幹部会に不信任の一票を投じてくれ。
三分の一の票が集まれば、俺は幹部を退く。
だが、それまでは幹部だ。守るべきもののためにみんなの力を使わせてもらう!」
以上だ。と言ってオオミは壇から降りた。
これから参謀部と幹部会で話し合いだろう。
全員が三々五々、散っていく。
方針が決まるまではどうにも動きようがないだろう。
俺も一度、『プライベート空間』に引っ込むことにする。
ただ、その前に買い物だけは済ませておこう。
買い物を終わらせて『プライベート空間』でお弁当を開ける。
おにぎり三種と煮物、それからバナナだ。
変身すると体力が増えるから、意外と食べなくても平気な上、食べる暇がない。
怪人でいる以上は、前に出るべきだと思うからな。
そして、前に出るとヘイトの高さから、ゆっくりする余裕がない。
まあ、当初の予定通り、呑むか。
日本酒を買ってきた。
テイムモンスターたちには精霊樹の実をそれぞれに配る。
頑張ってくれたからな。
日本酒に『魔力すだち』を搾る。
おにぎりをひと口。人工合成食料製だが、中身に甘辛く煮付けた玉ねぎと肉が入っている。
中身は幻想種だ。
牛丼おにぎりだな。
日本酒の辛さとすだちの爽やかさが、牛丼おにぎりの濃い味付けに合う。
煮物をひと口。
こちらも甘辛だが、出汁の旨味が強い。
酒を口に含むと出汁の旨味と合わさって後を引く。
つい、酒を進めてしまう。
頭の中で殺したNPCドールたちの裂かれ壊れゆく様が浮かぶ。
ふたつめのおにぎりの味は良く分からなかった。
それでも俺は、美味い、最高、と誤魔化すように呑んだ。
「グレン……私も呑んでいいミザ……」
いつのまにか煮込みが立っていた。
「ゐーんぐっ!〈おう、飲め飲め!〉」
「いやぁ、今日は失敗だったミザ……いつもの自分じゃないみたいに、なんだか怖くなって、つい逃げちゃったミザ……」
「ゐーんぐっ!〈煮込みにもそういう日があるんだな!〉」
「今、考えると、全然、意味不明だったミザ!
……でも、そのせいでNPCドールたちが、全員死んだミザ……謝りたくても、謝る相手がいないミザ……」
俺は自分のぐい呑みの酒を飲み干す。
「ゐーんぐっ!〈煮込み、お前、それは悪い酒だなあ。
俺なんかほら、敵のNPCドールを中心にバンバン殺した大殊勲の酒だぞ!
ひと通り殺して、おかわりで来たNPCドールも全部殺したからな!
ひとりで百五十は殺したんじゃないかな……ふぅ……〉」
「グレンも悪いお酒みたいミザ……」
煮込みは自分で買って来たウイスキーを、ぐびりと呑んだ。
「ゐーんぐ……〈そんなことないさ……殺した分だけ味方は助かってる……〉」
そうでも考えないと、帰って来ないNPCドールを殺せなくなる。
「ああ、グレンさん。まだいたんですね!
あら? 煮込みさんと二人で飲んでるんですか?」
「おやー、これは三角関係ですかねー?
お邪魔じゃなければ、ご一緒してもいいですかねー?」
「ゐーんぐ〈ああ、いいぞ〉」
「え、よかったピロ?」
「ほら、大丈夫だって言ったじゃないですか」
「あ、いや、隠れるつもりはなかったんですけれど……すいません」
レオナが来て、サクヤが来て、余計な気を回していたムックとナナミとcoinが顔のぞかせて、結果的にみんなで騒ぐ材料になっただけだ。
少しだけ、良い酒になった。
話題はやはりラグナロクイベントだ。
オオミの判断はどうだっただとか、レオナの武器作りの進捗だとか、ウチのテイムモンスターたちの回復配達についてだとか、お弁当の格上げだとか、今後のことについて、色々と話した。
「そういえばー、グレンさんの【言霊】バフは使わないんですかねー?」
サクヤに言われて、ハッとする。
「変身してからなら、三十分くらいは保つんじゃないですかね? 個人差はありますけど」
ナナミが言ってくる。
「ゐーんぐ?〈モンスターがレアドロップを
出しやすくなるバフって必要か?〉」
「あらら、そういう認識だったんですねー。
たぶん、グレンさんの【言霊】バフは劇的な成果を上げやすくなるバフだと思うんですよねー……逆にデバフで呪いがついたモンスターは部位破損が起きやすかったり、スリップからの転倒が起きやすかったりという感じなのでー」
「でも、今までイベントスタート時はすぐ移動だから、バフを待ってる余裕はないピロ」
「では、明日、イベントスタートの告知をグレンさんにお願いしましょうか?
バフを掛けてみて、有効そうなら継続すればいいですからね」
「ゐーんぐ?〈いや、俺は幹部じゃないから、下手に俺が告知なんかしたら、また反発が生まれたりしないか?〉」
「グレンさんは英雄ピロ。なにも問題ないと思いますピロ」
「ふっふっふっー。戦争に英雄はつきものですからねー。
グレンさんがひと声掛けて、バフが付くとなれば、みんなの士気が爆上がり確定ですよー」
うーん。そんなものだろうか。
まあ、明日やってみるしかないよな。
反発が出るなら、やめればいいしな。
現実時間が深くなって、俺たちは解散。
ログアウトすることにした。




