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青の回廊。
「じいさん、あんまり前に出るな!」「おい、幹部、お前も無茶すんな!」「こら、孫! お前が前行っちゃうと、じいさんから俺らが怒られるんだよ!」「痛いの大丈夫だもん! じいちゃんを守るんだ!」「なんでこの部隊って年寄りと子供ばっかりそう好戦的なんだよ!」「痛くない、痛くない、痛くない、友達のことを考えろ……みんなを失う方が辛いんだ、耐えろ、耐えろ、耐えろ……」
『りばりば』が押している。
それに耐えるヒーローが一人。
マギクリスタに似た、女性的フォルムの、部分的に宝石カバーで覆われている鎧を着ている。
色から見て『マギサファイア』だろうか。
「くっ……援護を! 避けるばかりでは戦えません!」
すげぇ……『マギサファイア』はまるで全てが見えているかのように最前線に立ちながら、攻撃を避け、時に一枚の盾で弾いている。
白部隊の俺たちは一瞬、呆けてしまう。
前のめりに戦う青部隊、一歩も引かない『マギサファイア』。
まともな戦闘が成立している。
じゃあ、この均衡を崩しに行こう。
「ゐーんぐ……〈変し……〉」
「グレンさん!」
「ゐーんぐ?〈なんだ、サクヤ?〉」
「グレンさんは今、私たちの象徴だと言うのは分かりますかねー?」
「ゐーんぐ?〈いや、象徴なんてガラじゃないだろ?〉」
いきなりサクヤは何を言い出すのか。
それよりも俺としては、早くおじいさんや糸の加勢に行かなきゃいけない気がする。
「今後は飛んで目立つところで変身してください。味方が来たアピールをするんです!
確実に士気が上がりますねー!」
「ゐーんぐ!?〈マジか!? それって必要か?〉」
「必要アミ」「必要コラ」「必要のり」「他の怪人さんも合わせてくれるようにお話しておきました!」
『アミ棒ジラフ』『コーラブル』『のりミノタウロス』、他四人の怪人に説明したのはシシャモだった。
シシャモ、お前もか!
「ゐーんぐ?〈せ、せめて最初の一回だけにしてくれ……〉」
「んー、やりすぎると効果が薄れそうなのでー……妥協しましょう!」
サクヤが握手用に手を出してくる。
後から冷静になって考えれば、これが悪魔の契約だったと気付けるんだが、この時の俺はどうかしていたんだろう。
つい、悪魔の手を握ってしまった。
「ゐーんぐ!〈よし、いくぞ、【飛翔】!
変身!〉」
「「「変身!〈アミ、コラ、のり……〉」」」
「おお!」「援軍だ!」「か、神よ……」
「ゐーんぐっ!〈闇の堕天使!〉」
「さて、みなさーん! 一気に行きましょう!」
「「「イーッ!」」」
サクヤの号令につられるように、白部隊が一気に動き出した。
『マギスター』側もただ見ている訳じゃない。
なだれ込もうとしている白部隊に必死に発砲してくる。
「行きましょう! みなさん! 僕たちも!」
糸もまた号令を掛けた。
「おうとも!」「いくぞー!」「だから、孫は出るなよ!」「こ、怖ぇ!」「当たりませんように……でも、孫に当たるなら俺に当たりますように……」
「NPCドールは援護射撃しろよ!」「どうしてもの時以外は俺たちが死ぬからな!」「だから、来るなよ!」
NPCドールを心配する声も挙がる。
「くっ……なんで、こんな……誰か本部に連絡! 他のヒーローを回せるだけ回すように言って!」
『マギサファイア』が叫ぶ。
『マギスター』側で元気なのは、『マギサファイア』とヒーロー側NPCドール、後は一部で声を張り上げているやつらはいるが、大抵の戦闘員は萎縮してしまっている。
ヒーロー側NPCドールは完全にロボットだ。
形としては球体関節人形なのは同じだが、金属製ボディで、形式番号で区別しているようだ。
彼らは、『りばりば』と同じく必死だった。
俺は飛べる。飛べるから前に出る。
プレイヤー相手なら、いくらでも電撃を落とせるし、爪で切り裂き、尻尾で穿つのに躊躇いはない。
例え、恐怖に慄いていようと、条件は同じか相手の方が上だからだ。
ただ、NPCドールはつい、ためらいが生まれる。
俺たちが勝てば、彼らは結果的に消える。
ここで殺しても、消える。
同じことなはずだが、つい、知り合いのNPCドールたちの思い出がチラつく。
俺が近づくと逃げるプレイヤー。斧やナイフを手に、俺を倒そうと向かってくるNPCドール。
なんだか悲しくなってくる。
NPCドールのナイフが俺の脇腹を抉る。
「ゐーんぐっ!〈くそっ! もう来るなよ!〉」
そいつの頭を腕の爪で切り裂く。
胸には『MS-2525』の文字。
誰かがつけた愛称なのか、下にマジックで『ニコニコるん♪』と書いてある。
手は抜けない。俺だって痛いのは嫌だ。
だが、俺が殺した『ニコニコるん♪』はくずおれるように倒れながらも、俺の足にしがみついた。
次のNPCドールが拳銃を俺に向ける。
【自在尻尾】でそれを跳ね飛ばす。
だが、そいつはすぐさま腰の斧を抜いて、躍りかかって来る。
しがみつかれているのとは、反対の足で蹴った。
【ベアクロー】は両手両足に顕現している。
NPCドールを胴体から真っ二つにした。
最後の瞬間に投げられた斧が、俺の【サーベルバンパー】に弾かれた。
「それ以上、私の仲間を傷つけるな! 【魔操撃】!」
『マギサファイア』から放たれた悪鬼の形のエネルギーが俺を襲う。
【野生の勘】が反応するが、しがみつくNPCドールの遺体をそのままにした俺にそれを避けることはできなかった。
牙が折れる。
「ゐーんぐ!〈守りたいなら前に出すな!〉」
少しだけ俺は助かったような気持ちになった。
「私と戦え! 戦士として!」
「ゐーんぐ!〈望むところだ!〉」
正直、一対一は俺に不利だ。
不意打ちや、仲間の力を借りてなら、ヒーローを倒す方法はたくさんある。
もしくは、そうしてユニーク持ちを喰らった後なら、一対一でも戦える。
他のゲームでいうデバッファーなので直接攻撃力はほぼ【神喰らい】頼りなんだよな。
だが、今はありがたい。
NPCドールの相手はツラいからな。
俺は少しの感謝と共に構えた。
土日来るの早すぎん?
もうちょい時間欲しいのよ……( ̄▽ ̄;)




