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「ゐーんぐ!〈お前ら、中学生かよ!〉」
「似たようなもんミザ」
「ゐーんぐ……〈まあ、煮込みの場合は見た目が中学生だからな……〉」
「まあまあ、レオナさんもアレで怒っている訳ではないですから、平気ですよー」
サクヤがフォローを入れる横で、煮込みのローキックが俺の太ももにいい音を発していた。
おう、バカ……鋭すぎて痛みはほとんどないが、これは後から足にクるタイプの蹴りじゃねえか。
「それで、グレンは新しいスキルが入ったピロ?」
「ゐーんぐ!〈ああ、ちょっとスキルと変身を試してみたくっ……てな〉」
ほら、足にキた。綺麗に正座しちゃってるよ、俺。
「いいですねー手伝いたいカマ!」
にゃんこの日。普段は挨拶を交わす程度だが、ムックのPKK部隊の一員だ。
中身は女性らしいが、目出し帽に黒の全身タイツで凹凸はあまりない。身長は百六十五くらいはあるだろうか。
レギオンイベント時の核︰鎌を気に入って、そのまま買ったらしい。
「ゐーんぐ!〈ああ、ぜひ頼む〉」
俺は正座のまま言った。
ところ変わって、『城』に戻ってきた。
にゃんこの日によると、『城』の中にも『警備部』の施設があり、そこで秘密の特訓が出来るらしい。
スキル確認なんかは『プライベート空間』でも良いかと思ったんだが、周囲にどんな被害が出るか分からないから、スキル確認は『警備部』でやるのが正解と言われれば、俺に否やはない。
『城』の門番NPCドールは良く見れば赤い犬マークがついている。アカイヌさんだ。
───お前、また来たのか?───
「ゐーんぐ!〈ああ、訓練場を借りたい〉」
───ふむ、中に入って最初の通路を右、突き当たりの扉だ。許可なく別方向に行くと罠が発動する。他の道は行かないようにな───
「ゐーんぐ!〈分かった〉」
俺たちは言われた通りに進む。
最初来た時は分からなかったが、たしかに関係ない通路などは俺の【トラップ感知】に真っ赤に引っかかっていた。
言われていた扉を開ける。
デカい土の屋内運動場だな。はじっこに的が置いてある。
「あのマトは好きに使っていいカマ。それとこれをインベントリに入れるカマ」
にゃんこの日が渡してくれたのはお守りだ。銀色のプレートに文字が書いてある。
「ゐーんぐ!〈なになに……訓練用お守り。あなたの死の直前、一度だけこの部屋と連動して死を防ぎます。黒くなったらお守りを所定の位置に。新しいものをお使い下さい、か。魔法かなにかかね?〉」
「えーと……グレンさんが読めるということはー。これは古代語で書かれているわけですねー」
ん? そうなのか。自動的に変換されているからなのか、自分では判別できないことが多いんだよな。
言われて見れば、たしかに普通の言語じゃない。
古代語だと意識すれば、古代語として読めるんだが……。
もしかして、俺が気づいていないだけで、これまでも知らぬ間に読んでいた古代語とかあったんだろうか?
分からんが。
「部屋から出したら無効になるって言ってたカマ」
「それはつまり、部屋とこのタリスマンが連動しているからってことだったピロ」
「おお! 謎の魔法文明技術の部屋だったわけミザ!」
「いやあ、面白い発見ですねー。魔法文明世界というには、あまり魔法文明を感じられていませんでしたが、こういう風に使われていたんですねー」
「さあ、それじゃあ、さっそく新しいスキルを見せて欲しいカマ!
次はどんな変体を見せてくれるカマ?」
おい……とツッコミたいのは山々なれど、変体だか変態だかするからなぁ。
俺は静かに的を用意する。
「ゐーんぐ!〈まずは新スキル【エレキトリック・ラビット】!〉」
俺の頭からうさ耳が飛び出し、そのうさ耳が勝手に動いて電撃が上空へと向かう。
屋根があるから、上空8mほどに滞空したかと思うと電撃が走り、俺が狙う的へと落ちた。
ダメージは30点ちょい。要するに通常パンチと同じだ。『ショック状態』の状態異常が起きている。
「うさ耳カマ! いい、いいカマ!」
にゃんこの日はキメラ化をリスペクトしているんだそうだ。なので変体系スキルを集めたいとかなんとか……大丈夫か?
色々とやってみる。半径3m範囲なので、密集しているとして二~三人くらいは巻き込める。
『ショック状態』の状態異常は一瞬の行動不能だ。今の俺でヒーロー相手に0.5秒程度だろうかか?
『シノビピロウ』に実験台になってもらって使ったらそれくらいで、ヒーローより倍率は少し劣るが特殊はヒーローより高めなので、仮想ヒーローとして考えやすい。
ウエイトタイムは1秒ほど。
モンスター相手ならMP切れになるまで延々と止めていられるくらいには強い。ただ、半径3m範囲なので、味方がいると至近距離で戦闘しているやつは巻き込むな。
そうか、たしかに使い勝手が良くない。
一対一の状況を作れて、仲間が遠距離攻撃の時なら使える。限定的だな……。
今度は【ウサギ跳び】。
こちらも3m範囲の好きなところに跳べる。
実際に『シノビピロウ』を相手にすると、一撃目は避けられる。ただそれほど距離を跳べるわけではない上、跳んだのが見えているので、二撃目で捕まりやすい。
他の回避スキルと併用前提だな……。
さらに【雷瞬】を使って見る。瞬間的に雷の線が出て、そこをなぞるように移動する派生アーツだ。
悪くはないが、これも移動先が見える。
俺は触れても問題ないが、雷の線は数秒間残り、これに触れると『ショック状態』になる。
使い方次第では面白くなりそうだ。
俺は【サーベルバンパー】を起動する。顔が熊になって大きな牙が伸びていく。
うさ耳はうさ耳のままらしい。
「ひょー、プリティ感が増したミザ!」
笑いながら言うんじゃねえ!
周りの笑いを振り切るように【熊突進】を使用する。
5mの突進攻撃。防御力のない的相手なら「80」点ちょいダメージが出る。
次は『マンティスミザリー』、『カマスコティッシュ』『シノビピロウ』に並んでもらう。
「のぉミザ!」「あぅっカマ!」「はぶっピロ!」
全員が吹き飛んだ。ダメージは一律、「1」点だが、ヒーローへの崩しとしては最高に使える気がする。
ただし、曲がれない。止まれない。
逆に距離が5mで良かった。隙が少なくできる。
【サーベルバンパー】が折れていても使える。ダメージの増加は無いが根元だけでも牙があるならいいらしい。
問題点がひとつ。カウンターパンチで腹に穴が開いたままでも5mは走った。
しかも、意識が残っていて、めちゃくちゃ痛い。カウンターされると俺の攻撃力が跳ね返るらしい。
お守りが無ければ、死んでいた。
いや、いっそ死んだ方がマシだった。リセットされないし、『出血』は弾くしで酷い目にあった。
使う時はホントに気をつけよう。
【角待ち】も色々と使えそうだった。ダメージ増加はないが熱源感知が強い。バレバレでも命中増加がないだけで、熱源感知は使える。問題はMP消費の激しさだが、俺の二百超えのMPなら、そこまで問題にはならない。
「ゐーんぐ……〈さて、最後のスキルというか、変身か……〉」
「いやあ、どんな感じになるか、楽しみですねー」
「翼は生えるとして、他の部分ですカマ!
足が三本になるとか、クチバシはどうなるのかとか、興味がつきませんカマ!」
「わくわく……ピロ」
「最初はちょっとだけ痛いかもしれないミザ。
でも、最初だけミザ……だんだん気持ち良くなってく……あぅっミザ」
とりあえず、煮込みにはチョップを打ち込んでおいた。
ふぅ……少しドキドキするな。
言うだけだ。「変身!」というだけで変身が始まる。
俺は腹の辺りに緊張を感じながら、大きく息を吸った。
久しぶりに【言語〈古代〉】仕事をする!w




