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特撮VRMMOで戦闘員として暴れてみた  作者: 月乃 そうま


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本日、三話目〜!


 『イナリスター』に見つからないように、ジェットコースターの裏手に回り、そこから全速力で走った。

 なんだか走っていると、初めて『リアじゅー』を始めた時を思い出す。

 あの時はわけも分からず、ただ皆の役に立ちたい一心で走っていたな。

 そういえば、カロリーバーがようやく『りばりば』で実装されたんだった。

 俺はインベントリからカロリーバーを出して、それを口に放り込む。

 そうそう、味わいもこんな感じで、喉が渇くのもこんな感じだった、と懐かしくなる。

 まだひと月も経ってないのにな。


 俺は、たぶん今も最初の時から変わっていないんだと思う。

 誰かの役に立っているという実感が欲しい。

 要らないやつじゃないって自分の存在証明が欲しいんだ……。


 ただ閉じ込められて、一生を終えるつもりか? 俺が本当の父親だから言っているんじゃない。お前の中にある命の渇望を見たから言っているんだ。何故、ここまでの仕打ちを受けていながら耐える? いつか死ぬその時まで耐えるのか? それとも神々が許すまで? 許さないよ、アイツらは。知ってるだろ。永く生き過ぎて新しいことを求めるのに疲れた奴らだ! 最強で最高でそのことに満足した奴らだ! それが倦むことに気付いてない! 世界樹が真っ直ぐ伸びることにどんな意味がある? 整合性の取れた奴らだけの箱庭に面白味があると思うか? お前の状況と同じだよ。根が膿んで腐っていっていることにも気付かずにただ箱庭を眺めるアホ共だ! そういう奴らとお前は同じことをしている。いつまでも、いつまでも縋って『いつか』を願うばかりで、動こうともしない。お前にはその鎖を千切り、喉の小骨を呑み込む力があるはずなのに、それをしない理由はなんだ? 弟は深海に追放され、妹は死者の国。弟や妹に迷惑を掛けられないとでも考えているのか? 違うな。アイツらだって同じだ。神々の憂さ晴らしのツケを払わされているのはお前と何も変わらない。アイツらを理由にして、腐るのはよせ! よく考えろ……頭を使え。お前のお気に入りが言ってた言葉だろ。


 嫌な台詞が頭を過ぎる。アイツ、俺たちを捨てたくせに、何が「腐るな!」だ。

 お前が腐らせたんだよ!

 でも、アイツの言葉が俺の中で反響していく。核心を突いた言葉こそ心を抉る。

 耐えることの意味、か……。


 いっそのこと……。


 俺は一度、立ち止まってエナドリαで喉を潤す。息が上がっている。大した距離でもないのに、すぐ息が上がるのは、おっさんになっちまったんだと実感させられて、少し悲しい。

 ちょっとむせた。

 酸欠気味で幻覚でも見たような気分だ。


「どこまで逃げるガン! 俺はこの恨みを晴らすまで、永遠に貴様を追うガン!」


「しつこいぞ、お前! ガチャ魂酔いしてるだろ! 気付けよ!」


「ガチャ魂酔い? なんのことだガン?」


「リアルのお前は処女厨の女好きか? その程度で自分を見失うほど変態か? 違うはずだ! たまにいるんだよ、ガチャ魂なんて呼び名だから勘違いしちまうんだけどな、スキルの性質に酔っちまうやつってのがな!

 勘違いするな! そのガチャ魂はお前に合わせてお前のために現れたわけじゃない!

 たまたまだよ。確率の問題だ。それなのに、俺はユニコーンの再来……とか言ってたら気持ち悪いだろ?

 VRは夢みたいな技術かもしれんけどな、目を開けたまま見る夢だ!

 眠ったまま見る夢じゃねえ!」


 『ユニコーンガン……』と『イナリスター』の会話が聞こえる。

 身につまされる話だ。

 俺もその『ガチャ魂酔い』なるものに掛かっているんだろうか……。

 だから、変な幻覚を?


 いや、今はそんなことより、『イナリスター』が近いってことだ。


「くっ……俺は……どういうことだガン……くそ、頭が……」


「悪いな……ガチャ魂酔いはあるらしいけどな、お前が酔いから覚めるのを待ってやるほど、お人好しじゃないんでな……悪く思うなよ」


「ゐーっ!〈そこまでだ!〉」


「げえっ! 肩パッド!」


「はっ! そうだ考えるのは後だガン! 今はレイド戦中ガン!」


「くそっ! チャンスを逃がした!」


 俺はところ構わず【トラップ設置】をしていく。


 カチャカチャカシーンッ! カチャカチャカシーンッ!


「なんだこの音? おい、また変なスキルなのか? 勘弁してくれ……お前一人でこのゲームのバランスを崩すんじゃねえよ! 【油揚げ投げ(イナリカッター)】」


「ゐーっ!〈そういうのは運営に言え! 【緊急回避(ウルフステップ)】!〉」


 『イナリスター』が放つ硬質油揚げを瞬間移動で回避する。


「お前は戦闘員らしく死ねよ! 【神使の嗜みシャクジョウ・ステッキ】」


 武器化スキルか。

 俺はバックステップで距離を取る。


「普通より動き重いじゃねえか!」


「ゐーっ!〈ヒーローと比べるなっ!〉」


 あと肉体系戦闘員とも比べて欲しくない。


 『イナリスター』がキツネマークの錫杖を手に殴り掛かってくる。


「ゐー〈あ、そこ罠だぞ〉」


 ズボッ! と『イナリスター』が落とし穴に落ちる。

 俺は手を挙げて、『ユニコーンガン……』に合図を送る。


「ゐーっ!〈おい、今だ! ここ、ここ!〉」


「はっ! 【光魔弾】【マグナムリボルバー】ガン!」


 『ユニコーンガン……』の右腕の拳銃から赤い閃光が放たれる。


「なっ……ま、待て、卑怯だろソレっ……がっ……」


 『イナリスター』が粒子化していく。


「マジかよ……ようやく二軍なんかじゃねえって証明できるはずだったのに……」


 胸に穴が空いたまま、普通に喋られるとちょっと怖いな……。


 『ユニコーンガン……』が寄って来る。


「助かったガン……ありがとうガン」


 俺は残っているHPポーションをありったけ『ユニコーンガン……』に掛ける。

 この隙に少しでも回復させないとな。


「おお、助かるガン!」


 『ユニコーンガン……』も自分のインベントリからHPポーションを出して被る。

 俺は親指を立ててサムズアップして、主戦場へと向かった。




「これが最後の正直だ! 【魔剣グラム】!」


「お前……仲間ごと……」


「こうでもしなきゃ、お前は斬れねえ……安心しな……仲間は飯一回で分かってくれるからよ……」


「怪人どもが、仲間を、語、るな……」


 主戦場に戻った時、『マギアイアン』が『火炎浄土』戦闘員、バルトによって死を迎えた瞬間だった。


「ちょ……マギアイアンさん!

 勝手に死なないで……」


 『雪豹雪美』が白い手甲に包まれた手をわきわきと震えさせていた。


「ははは……どうやら今日のレイド戦は責任重大だねえ……イチローの分までしっかり働かないとなあ、雪美」


「もう、パパ、笑いごとじゃないよ!」


「いやいや、ピンチの時こそ笑う。大事なことだよ!」


 『鷲パパ』と『雪豹雪美』が家族の会話を繰り広げつつ、きっちり戦闘員に対応している。

 『鷲パパ』が腕の多機能リングに触れると肩当ての爪の一本が、音を立てて変色していく。


「ふぅ……母さんに帰ったら感謝しないとな……」


 どうやら、あの爪部分にHPポーションのアンプルが仕込んであるらしい。

 『鷲パパ』のHPが回復した表示が出ている。


「その回復分もすぐに消費させてやるブレ! 【聖球爆走ホーリーシット】」


 おお、どうやら『スカラベブレイン』が生きていたらしい。

 大玉転がしで爆走している。


「スノウジャガー、行ってくれ!」「ああ、こっちは大丈夫だ!」「頼む!」


「う〜、アレの相手は、なんかやだな〜。

 でも、仕方ないか……【ジャガークロー】」


 『雪豹雪美』も武器化スキル持ちか。


「轢き殺してやるブレ!」


「ひええ、触りたくないから、遠距離失礼……【シャープクロー】【止まらぬ力(ジャガーノート)】」


 両手の爪から発した衝撃波が『スカラベブレイン』へと飛んで行く。

 それは貫通型の超遠距離攻撃だった。


「かっ……だ、大首領、さ、ま、バンザイブレ〜!」


 『スカラベブレイン』はダメージが蓄積していたからだろうか、一撃で爆散した。


「ふう……触らずに済んで良かった!

 パパ、そっちは手伝う?」


「いや、パパは大丈夫だ。雪美、あそこの肩パッドくんを頼むよ」


「ああ、イチロー兄ちゃんのお返し、私からはまだだもんね!

 じゃあ、どっちの爪が鋭いか、試してみる?」


 『鷲パパ』め。冷静なフリして、まだまだ怒っているじゃないか。

 試してみないって選択肢はない、よなぁ。

 俺は緊張から、唾を飲み込んだ。


侵食祭り、開催中!

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― 新着の感想 ―
[一言] ジャガーノート、という事はユニークだろうか? 語源のジャガンナートはヒンドゥー系神格の別名だし。
[気になる点] レベルを上げてる様子は無いけど『トラップ看破』のレベルを上げていくと ヒーロー側戦闘員のライフルとかの自爆装置を解除してお持ち帰りできるようになるんでしょう?
[一言] むっちゃ侵食されてますやん。 その思考が自分のものなのか蝕まれてるものなのか、既に咄嗟には判別できてない状態になってますやん。 流石にログイン中だけのものだとは思うけど… よくぞまぁガチャ魂…
感想一覧
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