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昨日、予約したつもりで、出来てませんでした。
んー、遅くなって、ごめんね!
『スカラベブレイン』応援部隊の戦闘員たちがポータルへと飛び込んで行く。
「「「イーッ!」」」
メリーゴーランドを起点として『りばりば』戦闘員たちが展開していく。
『リリーフラワー』の背後からは『火炎浄土』戦闘員たちも自分たちの復活石を運んで追いついて来る。
だが、同時に『ヴィーナスシップ』のトラックも見える。
ベンチやミニ屋台なんかを踏み潰して、絶妙に襲いに行くには遠いがこちらの戦闘員たちが良く見える位置に停車する。
ヒーローレギオン側も色々と考えているようだ。
『リリーフラワー』を戦闘員たちが襲う。
その隙間を縫うように『麒麟ホッチキス』や『スカラベブレイン』の遠距離攻撃が襲う。
『リリーフラワー』の白い腕は通常攻撃力がバカ高いので、戦闘員たちは必死に怪人たちの盾になって散っていく。
ただのパンチが必殺技級の攻撃というのはなかなかに怖い。
その上、致命的なダメージが入ったと思うと『リリーフラワー』はダメージキャンセルで若返る。状態異常までキャンセルされるのは厳しいな。
『リリーフラワー』は継戦能力が高いヒーローのようだ。
ヘラ。ギリシャ神話のゼウスの妻だったか。
時の神クロノスの娘。
自身の時間を行き来して、美人争いで他の女神をぶん殴る、そんな性格を持ったユニークスキルということらしい。
また『ヴィーナスシップ』戦闘員も良く訓練されている。
『リリーフラワー』の動きに合わせて、回復に入ればフォロー、それ以外の時は怪人の足止めと上手くやっている。
これ、怪人二人だから多少は押しているが、
そうでなければ相当に苦しい戦いを強いられるぞ。
『麒麟ホッチキス』の攻撃が『リリーフラワー』を襲った時だった。
瞬間的に『リリーフラワー』が消えた。
当たるはずの【芯弾】が『リリーフラワー』が消えたことで、外れた。
「はっはっはっ! それは幻影! 引っ掛かったな!」
どこからか声が響く。
「なにやつホッチ!」
「ここだ!」
それはジェットコースターのレール上に立っていた。
「晴天に降る雨、私につままれていると知れ!
コンコーンの神使、イナリスター!」
白狐メットに赤の文様が全身に入った白い鎧。『イナリスター』がポーズを決める。
「スターシリーズ……」「マギスターの二軍じゃねえか!」「侮るな! マギブロンズの時はそれでやられただろ!」
『マギスター』はゴーレム系ガチャ魂を持つヒーロー、マギシリーズとそれ以外のガチャ魂を持つヒーロー、スターシリーズに分かれる。
高い防御と豊富なHPに裏付けされたエリートヒーローがマギシリーズなら、多様性の名のもとにマギシリーズの鎧をベースにした機械化鎧ヒーローがスターシリーズという扱いになる。
格の上では、スターシリーズは二軍扱いだが、ヒーローとして一点突破型に作られたスターシリーズは状況にハマれば強いという仕様になっている。
この『イナリスター』が状況にハマっているかどうかが肝になりそうだ。
「こんっ!」
ジェットコースターレールから回転しながら『イナリスター』が飛び降りる。
鎧はゴツいが見た目だけな感じがする。
器用と素早さはありそうだな。
「【油揚げ投げ】」
鋭利な油揚げが手から何枚も射出される。
「カエッ!」「イイッ!?」「【ホッチキスネイル】ホッチ!」
ダメージはそこまででもないが、連射できるのは強いな。
「早いのはいいけど、二軍? 勘弁してよね。【天の川】」
天から降る星が白百合の炎を生む。
広範囲スキルは鋭利な油揚げと組み合わさって戦闘員を大量に撃破していく。
「誰が二軍だ! 方向性が違うだけだ!
【幻炎】」
【天の川】が二倍になった。
当たれば分かるが、ダメージは【幻炎】なら半分程度、しかし、空から降る星が二倍になったことで『りばりば』『火炎浄土』の両戦闘員は逃げ回ることを余儀なくされて、『リリーフラワー』にも『イナリスター』にも攻撃ができない。
「まあ、いいわ。あんたあのコガネムシ担当ね!」
「ふん、俺の恐ろしさに逃げるかブレ!」
「違うわよ! あんた臭いから嫌なのよ!」
「言い訳など無意味ブレ! こいつで轢き殺してやるブレ! 【聖球爆走】」
『スカラベブレイン』が逆立ちをすると同時に、大玉が顕現する。
転がし体勢になった『スカラベブレイン』が大玉を転がして爆走する。
「ひいぃ!」
たしかに『リリーフラワー』は逃げ惑った。
「ならばこちらもやらせてもらうホッチ! 【雲曳く疾走】」
『麒麟ホッチキス』もホッチキス頭の上にある龍のような角を黄色く光らせて『イナリスター』へと突進する。
「はっ! 当たらなければどうということはない! 【賢知回避】」
『イナリスター』は細かいジャンプのような挙動でそれを避ける。
『麒麟ホッチキス』の疾走跡が雲曳くように残っているかと思えば、そこにダメージ判定が残っているようで、本体の攻撃は避けたものの、雲に当たって『イナリスター』はダメージを食らう。
「ぬおっ! なんだと!」
麒麟は雷雲を伴ってやってくるものらしい。
一瞬のショック状態。
『イナリスター』は状態異常耐性が高めのようだ。
俺からしたら、『リリーフラワー』、『イナリスター』どちらもやりづらい相手だ。
「ああ、もう! 【鉄拳制裁】」
「ぬおっ、ブレブレブレ……」
『スカラベブレイン』の爆走が方向を変化させられて遠くのティーカップマシンのフェンスへと突っ込む。
『リリーフラワー』は汚れた拳を汚らしそうに振った。
「うう……くっさい……ちょっとぉ、アイツはあんたの担当って言ったでしょ!」
「知るか! そう思うなら、こいつをなんとかしろ!」
『ヴィーナスシップ』戦闘員のトラックの周りに『マギスター』の車が何台も止まって、中から戦闘員がいつものビームライフルで出てくる。
「各員周囲確認!」「戦闘員が出てきそうな角なんか気をつけろよ!」「異常ありません!」「ヴィーナスシップのお嬢ちゃんたちに、俺たちのガン捌きを見せてやれないのは残念だが、代わりにもっと長くてゴツいものを操るところを見せてやれ!」
『マギスター』戦闘員がライフルを撃ち始める。
いや、下ネタじゃねえか。
『ヴィーナスシップ』の戦闘員は鼻で笑うやつ、普通に喜ぶやつ、恥ずかしそうに顔を伏せるやつ、良く分からんって顔のやつ……アイドルとしてどれが正解なんだろうな。
そんな中、赤い一条の閃光が大気を震わせて『マギスター』の戦闘車両を爆発させた。
「なに?」「なんだ?」
『リリーフラワー』と『イナリスター』が閃光の先を確認する。
ティーカップマシンの方向だ。
その方向には、クラクラと頭を振る『スカラベブレイン』がいるばかり。
さすがに『スカラベブレイン』が撃ったとは思われず、二人のヒーローは目を凝らす。
「イーッ!」「カエーン!」「イーッ!」
戦闘員たちが、今だ! とばかりに殺到する。
ヒーローの意識が戦闘員に向いた瞬間、またもや一条の赤い閃光が『マギスター』戦闘車両を爆発させる。
二人のヒーローがまたもやそちらへと目を向ける。
『スカラベブレイン』がその翅をひろげた。
微妙に視線を遮られて、その先が見えない。
「【光求める翅】ブレ!」
『スカラベブレイン』が飛び立つ。
「見えたぞ! ティーカップの中だ! 【油揚げ投げ】」
どうやらそのそそり立つ角は隠せなかったようだ。
ティーカップマシンが爆発と共に吹き飛ぶ。
「ちょっと修理費折半だからね!」
ヒーローレギオンの悲しい現実が垣間見える。
お高いんでしょうね。ああいうの。
「バレたガン……。
じゃあ、もう遠慮なく行くガン!
我こそはユニコーンガン……この戦争に終止符を打ちに来たガン!
いでよ、我が友たちよ!」
『ユニコーンガン……』は右腕が拳銃、肩に回転弾倉を乗せた十二神将が着るような鎧を着た擬人化ユニコーンだ。
パッと見だと『麒麟ホッチキス』の対になっている印象がある。
その『ユニコーンガン……』が復活石をばら撒く。
『大部屋』では、全員がレオナの号令を今か、今かと待っていた。
「ここが正念場です。逆転目指して、はりきっていきましょう!
いってらっしゃい!」
「「「イーッ!〈ゐーっ!〉」」」
俺たちは号令に叫び返して、ポータルへと飛び込んでいった。




