144〈日曜特別リベンジ企画! 協力レギオン合同、どきっ! 作戦だらけの大行動会! 射撃もあるよ〉
大画面では先週と同じく同時進行の『作戦行動』があちこちで行われている。
さて、『マギスター』はどこに現れるだろうかと注目しているが、なかなか出て来ない。
『マギスター』以外のヒーローと戦闘になった『作戦行動』は暗く表示される。
ひとつ、またひとつと画面が暗くなっていき、やがて全ての画面が暗くなった。
『マギスター』が出てこなかった。
『大部屋』内がザワつく。
「え、どーすんの?」「大手が譲るっておかしくない?」「今日の担当区域外した?」
こんな時に声を張り上げるのは、そうレオナだ。
「静粛に!
こほん……ありがとうございます。
幹部会でも懸念されていたことではありますが、これは敵が同じ戦法を取って来た可能性があります。
この場合、我々は火炎浄土の援護に入ることになっています。
糸さん、火炎浄土に連絡を。
続いて、怪人『ユニコーンガン……』『スカラベブレイン』出動!
『マギスター』ヒーローが来る可能性が高いです。気をつけてください」
二人が手を上げてポータルへと消えた。
大画面では『火炎浄土』の怪人『麒麟ホッチキス』なる口と左腕がホッチキスになっている擬人化麒麟怪人がヒーローレギオン『ヴィーナスシップ』の『リリーフラワー』と『遊興区』の遊園地で戦っている。
「お前も綴じ込んでやるホッチ!」
「あのねえ! 適当に男女をカップル認定して二人を繋ぐとか、あなた恋愛舐めてるでしょ! セクハラよ、セクハラ!」
「単純接触の効果でずっと近くにいれば恋愛に発展するものホッチ。
ちゃんと電子書籍で勉強したホッチ!」
「それだけで恋愛に発展するなら、誰も苦労はしないのよ!」
「ふん、さすが百合の戦士は言うことが違うホッチ……まあ、同性同士にも俺は理解があるホッチ」
「そういうこと言ってんじゃないのよ、このボッチ! 【彼岸花】」
『リリーフラワー』が球根型のエネルギー弾を放つ。
「だ、だ、誰がボッチホッチ! 【ホッチキスネイル】」
瞬間的に『麒麟ホッチキス』の左腕のホッチキスが光って、エネルギー弾を防ぐ。
シールドのような扱いのスキルらしい。
「【芯弾】ホッチ」
『麒麟ホッチキス』の顔のホッチキスから、右手で芯を抜くと、それを投げつける。
思わぬ剛腕だ。
「あうっ!」
『リリーフラワー』の右腕がお化け屋敷の壁に縫いつけられる。
「さあ、浄土の炎を見せてやるホッチ!」
『麒麟ホッチキス』が復活石をばら撒く。
「カエーン!」「カエーン!」「いくぞ、てめえら!」
「くっ! 抜けてよ!」
『リリーフラワー』がホッチキスの芯を力任せに抜こうと藻掻く。
どこからともなく、トラックのギュルルルル! という音がする。
『ビーナスシップ』の戦闘員を乗せたトラックだ。
トラックは簡単には近づけない位置に車を停めて、その横腹から戦闘員たちを吐き出した。
『リリーフラワー』の乳白色なミニスカドレスアーマーと違って、戦闘員たちはフリルが最低限つけられた程度のフレアスカートな制服姿で一斉にビームチャクラムを取り出した。
『リリーフラワー』を援護をするためのビームチャクラムが放たれる。
光の円盤が『火炎浄土』戦闘員たちに降り注ぐ。
本格的なレイド戦が始まった。
『リリーフラワー』が戦闘員の援護を受けて拘束から抜け出す。
「よくもやってくれたわね……【天の川】」
『リリーフラワー』は『火炎浄土』戦闘員目掛けて広範囲スキルを放つ。
赤いタイツに革ジャン姿の『火炎浄土』戦闘員たちが天から降る星に当たると、白い炎が上がって、その形はまるで百合の花のように見える。
「カエーン……」「カ、カ、カエ……」「カエー……」
「くそ、距離を取るホッチ!」
『麒麟ホッチキス』が逃げ出した。これは『りばりば』との連携のための逃走だ。
「逃がさないわよ、待ちなさい!」
場面がお化け屋敷前からメリーゴーランド近くの広場へと移り変わる。
近くを無人のジェットコースターが走っている。
「さあ、ここで相手になってやるホッチ!」
「そう、ようやく観念したのね……【貞淑の女神】」
『リリーフラワー』の腕が白く変色していく。さらにその瞳が黒一色になっていく。
それは白目部分すらも黒で覆ってしまい。
何かの動物のような瞳になる。
あのスキルの正体はすぐに分かった。
ダメージアップスキルだ。
通常攻撃が今までのダメージに百五十点ほど上乗せされているイメージだ。
ヘラね。ユニークスキルだろう。
「さあ、殴り殺してあげるわ!」
「そうはいかないブレ」
「誰!?」
メリーゴーランドが回る。
その回る床に仁王立ちして姿を現すのは、擬人化コガネムシの頭を透明カプセルで覆い人間の脳を入れた『スカラベブレイン』だった。
「『リヴァース・リバース』よりの刺客、スカラベブレイン、義によって助太刀に来たブレ! 【計算された跳弾】【聖なる球】」
『リリーフラワー』が腕輪型通信機に叫ぶ。
「出たわ! マギスターに連絡、トラックも早く回して! きゃあ!」
聖なる球が見当違いのベンチに命中したかと思えば、跳弾して『リリーフラワー』を襲う。
「くっさ……なに、これ……」
「俺が運ぶのはたったひとつ!
そう、それこそが太陽の象徴! 聖なる球ブレ……」
軽快な音楽と共に、『スカラベブレイン』はメリーゴーランドに連れられて消えていった。
「聖腐食……ダメよこれは許されない。【水浴泉】」
「なっ、お前誰だホッチ!」
見ていた『麒麟ホッチキス』が驚愕に声を上げる。
『リリーフラワー』は縮んだ。二十代前半だった姿が十代前半の姿に変わる。
それと共に聖なる球によって与えられたダメージも『聖腐食』も回復してしまった。
どうやら、直前ダメージを若返ることでキャンセルする技らしい。
「ふふっ……驚くのはこれからよ! 【不死の林檎園】」
十代少女の『リリーフラワー』がスキルによって出した黄金の林檎を齧ると、ひと口ごとに年齢を重ねるようだ。
二十代、三十代、四十代、五十代、美魔女だな。
「さあ、これで回復完了よ!」
『リリーフラワー』が食べかけの黄金林檎をベンチ横のゴミ箱に投げ入れる。
若返りでダメージキャンセル、黄金林檎で年を重ねると、体力、疲労、MPが回復するようだ。
メリーゴーランドが回る。
ガタガタン、と『スカラベブレイン』が狼狽えた。
「ええ……お前、誰ブレ?」
「リリーフラワーよ、おバカさん!」
メリーゴーランド半周の間にまさか、十歳若返って、四十歳年をとるとは思わないわな。
「くっ……俺を馬鹿にすんなブレ!」
『スカラベブレイン』が復活石をばら撒いた。
「スカラベブレイン応援部隊、出動!
みなさん、はりきっていきましょう!
いってらっしゃい!」
「「「イーッ!」」」
俺は『ユニコーンガン……』部隊なので、出番はまだだ。
おそらく『ユニコーンガン』は『マギスター』のヒーローに備えて身を隠しているのだろう。
それでも、仲間たちを見送るため、大きな声で叫んだ。
「ゐーっ!!」




