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エレベーターが動いている。
ゆっくりと上がって来る。
全員がヤバいと思いながら、慌てて準備を整えていく。
ここで新たなレイド戦アナウンスが来たということはニューヒーロー参戦を意味する。
俺たちの怪人『バリスタアーチャー』は作戦の都合のため、近接戦闘力がほぼ皆無だし、ユニークスキルもない。
本来なら『マギクリスタ』一人を倒したら、即座に撤収予定だったのだ。
「他のレギオンが留めてくれるはずだろ」「基地からはまだ戦闘中って言ってるぞ」「いったいどこのレギオンだよ!」「いいから、回復に務めろ」「ショックアローは俺たちごと射抜けよ」
少しの間でも時間があるなら全員で意見を出しあえる。
エレベーター前に十人、部屋前に『ショックアロー』持ち五人を含む十人、残りは階段の見張りが各一人で三人、それ以外は部屋の中で最後の壁になる。
チーン! エレベーターが止まり、ドアが開いてゆく。
「赤金の焔、王権の証となりて、我ここに来たる。
血を爆ぜよ、王の名の元に!
『マギブロンズ』ここに参来!」
「ブロンズ……」「三流かよ」「油断するな!」
青銅の騎士姿、マギ系の強化スーツの中でもデザイン的には騎士鎧に近く、ベータの頃からやってる古株だが、常にギリギリまで追い込まれての辛勝のため、三流ヒーローと呼ばれる。
識者によれば、当時は『マギハルコン』の、今では『マギミスリル』のサブヒーロー的扱いで、『マギスター』内でもいつ終わるかとヒヤヒヤしながら送り出すような扱いのヒーローらしい。
『マギブロンズ』が辺りを睥睨しながら、エレベーターから出て来る。
「マギクリスタめ、俺を呼び出すとは余程、苦戦していると見える……」
エレベーターから出て、右に、スーッと移動してマンション中庭に向けて、ビョンッ! と跳んだ。
「はっ……ああああああああぁぁぁ……」
『移動床』と『バネ床』コンボにキレイに嵌って、一階へと落ちた。
「ダッセ……」「やっぱブロンズか……」「誰だよ油断するなとか言ったの……」「ブロンズに言ってやるべきだったな……油断するなってさ」
エレベーターが下に動き出す。
俺は今ある罠のさらに手前に同じ罠を並べた。
チーン! エレベーターが開く。
「誰だ、罠置いたやつ! ふざけんな! とうっ!」
着地、移動、バネ床。
「え……いや、ちょ……わなぁああああああああぁぁぁ……」
戦闘員の一人が下を覗き込む。
「あ、まだ動けるんだ」「マギ系って頑丈だよな」「ここ八階なんだけどな……」
またエレベーターが降りていく。
「もう一回、やる?」
他の戦闘員に聞かれるが、俺は否定した。
さすがに三回はない。
一回目の罠は効果時間切れ、二回目の罠はまだ残っているが、全員に位置だけ示して終わりだ。
チーン! 扉が開く。
中には五人の『マギスター』戦闘員がビームライフルを構えていた。
「ヤベ、イーッ!」
一斉射撃。俺の牙がまたへし折れた。
『ショックアロー』の矢がエレベーター内に撃ち込まれる。
ちゃんと俺たちに当たらないよう配慮してくれたらしい。
いつの間にか、もう一基のエレベーターが動いていた。
チーン!
「ぶち切れだよ、この野郎! 【星銅矢】」
それは流星群のように『マギブロンズ』のパンチに合わせて青銅の矢が飛ぶスキルだ。
エレベーターの扉が開くと同時に放ってきた。
俺の右太ももと左肩〈じぇと子の下〉に矢が刺さって膝をつく。
ダメージがギリギリだ。
つまり、それほど大ダメージではない。
範囲を広げてダメージを下げるタイプのスキルだな。
「さあ、どいつだ! いや、全員ぶちのめす!
あ、は? 待て、待て、待てえええぇぇぇ……」
『マギブロンズ』が、ずかずかと前に出る。
踏んだ。
慌ててHPポーションを振り掛ける。
途中、矢を抜くのも忘れない。
いってえっ!
あのアホは三回目の一階までご案内だ。
ただ、全く倒せた気はしない。
元気があり過ぎな上、ダメージを気にしている感じがしない。
「撃て!」「前に出ろ!」「俺たちがやるんだ!」
エレベーターからは生き残った『マギスター』戦闘員が傷を押して出てくる。
その使命感は、たぶん、『マギブロンズ』の信用がないからな気がする。
「ゐーっ!〈寝てろ! 【満月蹴り】!〉」
「ぐあっ!」「くそ! 肩パッドだ!」「奴は生かしておくな!」
バシュン!
───死亡───
対怪人用装備で撃たれるのは、どうにもならん。回復しても一発でHPは0だ。
あと、俺、狙われすぎじゃないか?
目の敵にされている気がする。
なんとなく、空いたはずの胸の穴の辺りをさすって、穴のないことを確認して、ホッとする。
復活だ。
「おお! ガイアの怪人がやってくれたスタ!
次はこっちスタ! ガイアの怪人が来てくれるまで、頑張るスタ!」
『マギクリスタ』を倒したらしい。
よし、これで戦争イベント用10ポイント確定だな。
ただ、『マギブロンズ』を倒さないと、ポイントリードできない。
『マギブロンズ』を倒せない場合、それはイコールで『バリスタアーチャー』が倒れたことを意味するからな。
時間をかければ、二対一に持ち込めるなら、俺たちの仕事は時間稼ぎだ。
俺は【サーベルバンパー】【ベアクロー】と発動して、エレベーター前へと急いだ。
ブロンズと言えば?
あとは分かるね。その通りだw




