第7話 ケイトの心境
「ケイトが推理をしている!」
「それは褒め言葉?」
「あ、うーん……。公開訓練の日程を個別に伝えるくらいに親しいなら、学園でも噂になっていたりしないの?
ケイトに知られると思って隠してる?……差し入れ持ってきてるなら隠してないの?」
学園内では目立たないようにしていて、学園外の王宮騎士の訓練場でだけ親しくしているようなら秘密の恋人のように見えるが肝心の婚約者に隠していないなら「秘密の恋人」とも言えない気がしてよくわからなくなる。
首を捻っていると、ボソボソとケイトが語った。
「学園内でもキャーキャー言ってる。でも、他の娘もキャーキャー言っているから。」
「ああ……、確かに人気よね。ダフネル伯爵令息は。」
ダフネル伯爵令息は将来の騎士団長と噂されるだけあって、強いし顔も良い。
背が高くて体格も立派で、女子生徒に人気がある。
クラスが違うやらあまりよく知らないが休み時間などは他のクラスの生徒が見にきて騒いでいるのだそうだ。
その騒いでいる女子生徒の中に、「恋人」が混じっているとケイトは言う。
「えぇ?それって、婚約者の目の前で、隠しもせずにイチャイチャしているってこと?最低じゃない?」
「……。」
コニーの言葉にケイトは頷くでもなく、静かに薬草茶を飲んでいる。
わざとスルーしているという雰囲気でもない。
「ケイトは別に妬いたりとかはしないの?
……そのまま結婚するのは嫌とか思わないの?」
ケイト自身は、政略結婚で相手に対して思い入れがなさそうなのはこれまでの話でも理解できた。
しかし、いくら相手に思い入れがないとしても、結婚後もその恋人との関係が続いていたら思うところはあるだろう。
「妬いたり……は、特にはないけど……。子供が産まれたら少しややこしそうな気はする。」
「他人事ねぇ。」
ケイトは婚約破棄など不名誉なことは嫌だとは思っているようだが、
結婚自体に関心がなさそうだ。
「ねえ。婚約者が浮気しているなら、ケイトの方から婚約解消の申し出ができるんじゃないの?」
「……ああ、そうか……。」
コニーの言葉に、ケイトは初めてその事実に気がついたように目を見開いた。
そして、顎に手を当てて色々と考えを巡らせている様子だ。
「……婚約解消……出来る……?しかし、家同士の繋がりが……。
でも、婚約破棄されたら……。うーん……。」
「……ご実家の利益の問題はあるかもしれませんけど、私としては、
負けたら婚約破棄などと言う脅しのような事を相手は、ケイトに相応しいとは思えませんわ。」
ベラドンナの言葉に、コニーが賛同した様子で大きく頷いた。
「そうですわよ!ケイト様ならもっと他に相応しい方がいると思いますわ。
だって……、婚約者がいるのに他に恋人を作ったり、剣術大会の前に脅しのような事を言ったりする人、将来功績なんて残せそうもなくないですか?」
「ああ〜……。そうか、将来性か……。」
ケイトは納得できた様子で、椅子から立ち上がった。




