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第26話 たった3週間で凱旋帰郷

「しかし、すごい荷物だね」

「そうだろう。農園の人達にそれぞれプレゼントを買ったらこうなるな」


宿屋の中庭にずらっと並んだ箱。

中には、大量のプレゼントが入っている。


農園には農奴も含めると100人ほどの人達がいるんだけど、全員にプレゼントを用意した。

そこまでしなくてもって言ったんだけど、ロジャーが必要だって。


「さて、行くとするか。シオンの凱旋だ」

「凱旋?」

「そうさ。成功した男は故郷に成功したことを見せつけに帰るんだ」

「ふーん。そういう物なの?」

「そうだよ。凱旋するためにがんぱっている奴はたくさんいるんだ。特にスカウトされた男はな」


凱旋して成功した姿を見せることで、スカウトが夢を叶えてくれることだと知られる。

誰もがスカウトされることを望むようになる。


「しかし、3週間で凱旋というのは、最速だろうな」

「そうなの?」

「普通は10年は掛かるぞ。それでも早いくらいだ」

「うん。じゃー、この荷物、収納しちゃうね」

「おい、ちょっと待った! これは収納しないでラバで運ぶんだ」

「ええっ、何で? これくらい収納できるよ」


意味が分からないけど、しばらく待っていたら、ラバを5頭つれた人がやってきた。

手際よくラバに荷物を積むと出発になった。


のんびりとラバと一緒に歩く。

街道を歩いていると近くの村の子供達が寄ってくる。


「すげー、凱旋だって!」

「凱旋って何?」

「何って。とにかくすげーことなんだよ」


そんな寄ってくる子供達に、ロジャーは笹でくるまれた餅菓子をあげている。

子供達はどんどん増えて、12人くらいになっている。

村の大人達は遠巻きに、こっちを眺めている。


「ね。ロジャー。なんか僕ら目立ってない?」

「そうさ。凱旋は目立ってナンボだからな」


僕とロジャーが先頭を歩いていて、その後をラバと子供達がついてくる。


ロジャーは普通の旅商人の恰好をしているけど、僕は紺色のスーツという服を着ている。

襟や袖口には銀で縁取りされていて、キラキラ光る。


今日の為に、ロジャーが用意してくれた物なんだ。

ちょっと窮屈だけど、意外と動きやすい。


特別な服を着ている僕が、こま行列の主役だってことはすぐにわかってしまうなぁ。

こういう目立つこと苦手なんだけどさ。


「もう少しすると、農園が見えてくるな」

「うん、あのこんもりとした里山の先が農園だよ」

「さっき、ひとりの子供を先に行かせたから、そろそろ迎えがくるだろう」

「うん」


その言葉通り、農園の方から3人が歩いてきた。

農園主様と奥様、そしてアリア姉ちゃん。


まだ3週間しか経っていないけど、いろんなことがあったから懐かしく感じるなー。


「シオン!」

「アリア姉ちゃん!」


アリア姉ちゃんが走ってくる。

僕も走っていく。


姉ちゃんが抱き着いてくる。

あ、ふわっとした。

相変わらず大きい胸が気持ちいいなー。


「シオン! すごいわ。こんなに立派になって」

「うん。ありがとう」

「アリアも嬉しいわ。うちの農園からこんな立派な商人が生まれるなんて」

「商人?」


うーん、僕は商人なのかな。

錬金術士じゃないし。

あ、そうだ。


「商人じゃないよ。時空師っていうんだ」

「時空師?」


レベルアップの時、たしかそんなアナウンスが流れたから。

きっと、僕は時空師なのだろう。


「時空魔法を使って、人々を幸せにするのが時空師なんだ」

「シオン、すごいわ」

「うん」


アリア姉ちゃんの腕の中に抱えられて、頭をなぜられている。

なんか、安心するなぁー。

アリア姉ちゃんの腕の中って。




あの。

よかったら、でいいんですが。


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