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解決人シャルロット

「ということで解決人シャルロットさん。お願いします」

「任せなさいって、突然始まったけど何? もう夜だし寝ない?」

「突然の呼び出しに驚いたっすよ。なんすか?」

 イガグリさん完全に寝間着状態なんだけど。帽子までかぶっちゃって、一応姫の前なんだけど?

「イガグリさんの結婚相手って花屋さんなんですよね」

「そ、そうっす。えへへ、城に勤務中はお弁当を作ってくれる良い女性っすよ」

「その花屋さん、来月には経営破綻で無くなるかもしれないって知ってました?」

「なっ! 何故それを!」

 知ってたんだ。

「悪い言い方をするけど、多分その娘さんってイガグリの収入目的じゃないの?」

「うーん、あまりそうは見えないっす。一緒に出掛けるにしても特にお金を使った記憶は無いっすよ?」

「そう言えばガラン王国軍の副隊長って収入どれくらいなの?」

「第一部隊の副隊長となれば貴族とそう変わりないわよ。ちなみにラルト隊長も結構もらっているけど、ほとんどは奥さんの喫茶店にお金を回しているみたい」

「へー、凄い立派な建築物だったし、それなりにお金もかかった様にはみえたけど」

「そうよ。こっそり聞いたんだけど、あそこの喫茶店はお客さんも多くて男女が良い雰囲気になる場所としてもすっごく好評らしいのだけど、経営が黒字になることは無いらしいわ」

「え、そうなの?」

 確かに店はすごく立派だし珈琲は美味しいかったけど、そういえば値段は安かったっけ。ごちそうしてもらっちゃったけど。

「ラルト隊長も合意の上で経営しているみたいで、若い世代が良い時間を過ごせる場所を提供して、奥さんは大好きなお茶を作って、そして笑顔溢れる家庭を作りたいそうよ。まあラルト隊長の収入で全然賄えるらしいけど、もしもの時は手を貸す準備くらいはしているわね」

 ラルト隊長めっちゃ良い人じゃん! 神様をチャーハン職人にしたり精霊にパムレット作りさせたりするどっかの誰かとは大違いだね!

「まあ、それはあくまで結婚して生活が安定してから行ったこと。イガグリに関しては事情は全然違うんじゃない?」

「うぐ! まあ、そうっすけど」

 まだ何かを隠してる? 仕方がない『心情読


「あ、リエン殿。話しますから! 話しますから心はどうか!」

 俺ってもしかして顔に行動が出てしまうのかな?

「娘さん『は』本当に良い子なんっす。問題はその両親で、父は酒に溺れ、母は夜になるとお金のことしか考えないって聞いたっす。初めて両親と顔を合わせた時、なんとなく空気を感じ取ったっすよ。会話の内容もお金の事ばかりで将来については全く触れなかったっす。娘さんがその後謝りに来てくれて、心が痛んだっすよ」

「その娘さんもそこまでが計算通りだとしたら?」

「もちろんそれも疑ったっす。だから『影の者』で鍛えた隠密で時々様子を見に行ったっす。そこで見たのは娘に手を挙げる悲惨な家庭環境だったっす」

 そんな家庭にイガグリさんがこれから関わるの?

「結婚したら娘さんと小さな貸家を借りて生活するっす。あの家から娘さんを俺が助け出したいんすよ」


 何と言うか……。



 イガグリさんがカッコよく見えてきたな。



 と、話を聞き行ってたら扉が開いた。そこには母さんが立っていた。

「だから言ったじゃ無いですか。他所は他所ですよ。花屋の経営についてはワタチも知っていますし、娘さんとは商店街で良く会う人です。記憶の共有はこういう所に影響が出るので一長一短ですね」

「母さんも知っている人だったんだ」

「はい。それで……」



 ヒョウケツさんと母さんの目が合った。



「やばいですリエン。ワタチの秘密がバレちゃいました」

「いやいやいやいや! 自爆じゃん!」

「え、商店街で会う? え? 店主殿っていつもここで、え?」

「ああああああ、パムレ様を呼んでして記憶操作させないと!」

 現場は大騒ぎだった。


 ☆


「あまりにも恐ろしい情報を前に腰が抜けそうです。店主殿が『魔術研究所の館長様』だったとは」

「ヒョウケツさん、できればこのことは内密に」

「元『影の者』の領主として、そして恩人である店主殿の事です。安心してください」

「助かります。それで母さん、見事格好良く登場したつもりが従業員に正体がバレてしまい残念な状況になったわけだけど、花屋さんについて何か知ってるの?」

「ベインプローリーの生花店。あそこは代々受け継がれていた花屋でしたが、今の奥様になってからは経営が上手く行ってないみたいです。野草や花の勉強をおろそかにした所為で品物は少なく、年々収入は減っているそうですね」

「花の勉強はなんとなくわかるけど、野草って何か意味があるの?」

「植物は薬にもなります。それにゲイルド魔術国家と交流している今は、野草が高値で買い取ってくれる人もいるので、植物を扱う店が破綻することは無いはずなのですが」

 多分シグレット先生なんだろうなーその野草や薬を買う人って。

「事情を聞いたら野草や花の本は全て売ってしまったそうです。本は高値で売れるっすから。なので俺から娘さんに花の本を買ってあげたんっす」

 おお、紳士!

「が、その本は受け取ってもらえなかったっす」

「どうして!」

「家にあればいつか売られてしまう。そう思った娘さんは『預かっててほしい』と言われたっす」

 それは……何と言うか、その娘さんという人は本当にイガグリさんを考えている人なのでは?

「というか小さな貸家を借りたところで、ガラン王国城下町に住むなら両親がいつ押しかけてくるかわからないのでは?」

「うう……そうっすけど」

 さりげなく思いついた俺の言葉にイガグリさんが固まった。え、それ以上のことは考えてないの?

「ですが、早急に住所を与えないと市民権を失い、ガラン王国城下町から追い出されるっす」

「そうなの?」

「一応救済措置等もあるけど、店の経営破綻は救済措置適応外ね。税金が支払えない場合は出て行くことになるのよ」

「え! それって、野放しってこと!?」

 結構ガラン王国ってひどくない?

「そのための『村』や『集落』なのです。ワタチの慈善事業のお金はそういう村や集落で行われる草刈りや清掃活動に支払われ、そのお金で村の中でお金を使ったり、時には城下町に行ってお金を使ったりしているのですよ」


 母さんすげーや。もうガラン王国のお財布を握っちゃってるじゃん!


「原則村は受け入れの拒否はできません。ですが、そこで犯罪を犯せば追放ができます。あの花屋はタプル村かベガル村等に行くのでしょう」


 タプル村以外に村ってあるんだね! 今知ったよ!


「市民権を一度剥奪されたら戻すのは困難っす。だから結婚をして貸家を借りて住むっす。両親が押しかけたら……我慢するしかないっす」

 それが本当の幸せなのだろうか。

 ラルト隊長を見ていると、娘のアリシアちゃんと奥さんに囲まれて幸せに生活している光景がイガグリさんからは予想できない。

「ねえシャルロット。どうにかできないの?」

「どうにかって……店主殿も言ってるけど他所は他所で」


 とりあえずセシリー召喚。


「イガグリがこの後どういう将来を」


 とりあえずフェリー召喚。


「過ごすかは本人次第の」


 頭にフェリーの鳥召喚。


「みらいがうんたらかんたら」



 膝にセシリーの犬召喚。あ、魔力足りなくてすげー小っちゃい。



「わかったわよ! パムレちゃんいないんだから無理しないでよ! ほら、しまってしまって!」



 ぽぽぽん! っと音を立てて全員消えた。

「絶対という約束はできないけど、それでいいかしら?」

「何かあるんっすか?」

「最近女性の使用人が減ってきているの。原因として使用人はガラン王国城内で生活をしなくてはいけないのよ。母上が何とか緩和させようと努力をしているけど、実行に移るまではもう少し時間がかかるわね」

「つまり使用人になれば」

「そう。あそこはリエンが簡単に出入りしているけど、一応一般人立ち入り禁止。両親と娘さんを引きはがすことは可能よ」

「イガグリさん!」

「それは……盲点だったっす。同じ職場で働くという発想は無かったっす」

「早まらないで。使用人になるためにはそれなりに厳しい試験もあるわ。文字の書き取りや計算。裁縫や多少の料理。それらを合格してようやく入れるわ」

「だ、大丈夫っす! あの人なら……絶対大丈夫っす!」

 涙を流すイガグリさん。

「早速明日から数日有給取って良いっすか!? 試験の手続きや説明など諸々するっす!」

「次期女王の護衛をおろそかにする兵士がいては、将来のガラン王国は大丈夫ですか? ワタチは不安でしかたありませんよ」

「う、店主殿の言う通りっすけど、俺には時間が無いっす!」

「はあ。偶然です。偶然お店のお花が枯れたので今から買いに行きます。そこで偶然今の話をします。そこに偶然イガグリ様の名前が出てしまいますけど、全部偶然なのでしかたないですよね」



 ブフッ!



「なっ、リエン。何笑っているのですか」

「いや、何が他所は他所だよって思ってね。そうだね、偶然なら仕方が無いよね」

「そうです。偶然です。あ、今偶然話をしたらちょっと泣いてしまいました」

 いや、すでに花屋に行ってたのかよ!

「ということでイガグリ副隊長。一応言うけど、使用人の件はガラン王国城下町の掲示板にもある普通に知られている情報を私は言っただけよ。例え貴方が望む未来を掴んでも感謝しないで頂戴。そして望まない未来を掴んでしまっても恨まないで頂戴」

「しゃ……シャルロット・ガラン様」

 イガグリさんはその場で膝をついた。

「一生。お守りすることを改めて誓わせていただきます」

「はいはい。寝間着で言われても誠意は伝わらないけどね」

「あ」


 ほらー! 何が起こるかわからないんだし、油断大敵だよ!


「さて、そろそろ就寝です。明日は海の中に行くのですから休んでください。あ、ここに空腹の小悪魔を設置しますが気にしないでください」


 さらっと普通じゃない事を言ったぞこの母さん。


「リエン殿」

 と、イガグリさんに呼ばれた。

「はい?」

「『影の者』の集落の件に続き今回の件。俺はもうリエン殿に感謝しきれないほどの恩があるっす。絶対に、困った時は頼ってくださいっす」

「う、うん」

 特に何もしていないと思うけど……まあ、感謝は受け取ることにしよう。

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