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雪が降りました

ptブクマいつもありがとうございます

トゥグア様達にアイスクリームを捧げた翌朝……


空は曇っていますが出発の時が来ました。


リベンさんにラスカさん、領主のエリオ様やジャム屋のオジサンに見送られつつセラエに向かいます。


因みにあたしが教えた梅酒は早くも人気だそうで、奥さんが魔力不足を嘆いているそうです。


……いや、本当にスミマセン。


「それにしても……レンにしろンガイにしろ、ボリアを出てから立て続けに凄いトラブルがあったな」


「半分以上が料理絡みだったのがアレですがね……」


何せ料理だとあたしかデストさんが解決せざるを得ませんからね……つまり現状だとあたしがやるしかないという。


セラエではそんな事が起こらない様にトゥグア様へ祈っておきます。


「では私達もレンに向かいます……お世話になりました」


「……レシピ、ありがとうございます」


イブとクロマ君も、ンガイの神子(プリースト)を連れてレンに戻る様で……


あの時の書状は要約すると【人手が足りなくなったから助けて下さい】と書いてあったらしいです。


まあ、セクハラ神官は残さず投獄されたから大丈夫でしょう。


道中もクロマ君が居れば何とかするでしょうし。


「で、アーチはこの後どうするんだい?」


「私はこのままムリアの魔術ギルドに行くわよ……クロマの婚約を報告しなきゃだし、移転の申請もしなきゃね」


ああ、クロマ君も魔術ギルドに席があるって言ってましたからね……


つまり今後はレンにも支部を置くんでしょうか?


「ついでに私もレンに支部を立ててそこに居れる様に脅迫(おねがい)しなきゃね」


脅迫はお願いとは読みませんよアーチさん……


まあでも、アーチさんなら確実に実行してしまうんでしょうね。


「そうそう、勝手ながらセラエ支部にはコカちゃんの話を通しておいたわよ」


「それはまた厄介事の依頼の前降りかい?」


「まさか、姪同然のコカちゃんがやりたい事を私なりに応援したかっただけよ」


魔術ギルドは国から独立した勢力と聞きましたし、貴族の権力に振り回される事はないでしょうからね……協力してくれるならば有難いです。


これで多少は動き易くなりました……かね?


「ただ、私にもダイズ豆の豆腐の作り方を教えて欲しいなぁって、ね……蕎麦豆腐の要領でジャガイモを使ってみたんだけど、妙に土臭くなっちゃって」


それが理由ですか……いやまあコカちゃんが心配なのも本当なんでしょうけれど。


そんな回りくどい事しなくたって、普通に聞いてくれれば幾らでも教えますのに。


因みにジャガイモのデンプンは集めるのが手間ですけれど片栗粉みたいに使えます。




アーチさんにもレシピを渡してようやく出発出来ました。


セラエまではおよそ5日の距離ですがモンスターが増えて来ましたし、1週間は掛かると見た方がいいでしょう。


それに今にも振り出しそうな天気ですし……というか寒いです。


「……持って後2時間って所だねぇ、今日の所は近くの休憩所で様子を見るよ」


「解りました」


あたしの屋台は屋根が付いてるから何とかなりますがアプさんと翡翠さんの荷車には雨避けがありませんからね……


商品が濡れたら大損になってしまいます。


それに雨の中での戦闘は通常より体力を持って行かれますからね、可能な限り避けたいのです。




「ふぅ、降る前に着けて良かったが……雨じゃなくて雪だったな」


「これは……暫くはここで足止めせざるを得ませんね」


雪の中荷車を引くのは重労働だし、下手したら転倒して壊れてしまいますし。


何より雪は滑るし、体温が急激に下がりますからね……


「大丈夫、雪さえ止めば私の幻獣が何とかするから」


「ピーニャにそんな技能があったのですか?」


「あ、そういえばロウ君とナクアちゃん以外にはまだピーニャしか見せてなかったっけ……私の幻獣は全部で7体居るんだよ」


7体も居たんですか!


「雪をどうにかするとなると……ロシンかバイコ辺りか?」


「因みにそれはどんな幻獣なんですか?」


「何と言うか……ロシンは体毛が炎の狐で、バイコは角が生えた馬だな、先に言っとくけど2匹とも言葉は話せるぞ」


成程……様は雪を溶かすか退かすか、ですか。


「先にナクアちゃんに会わせたのは、ナクアちゃんの融合を試す為だよ」


そういえばピーニャとも融合出来たとか言ってましたね……


「でもね、ナクアはピーニャちゃんとロシンちゃん以外とはあんまり仲良くなれなかったよ」


「ピーニャとロシン以外は気難しい子達だからねぇ……7体の内4体と意気投合したロウ君は普通に凄いよ」


流石は幻獣に好かれ易いロウですね……


翡翠さんと契約した幻獣まで手懐けるとは。


「因みにその4体に、ピーニャは入ってない」


入ってなかったんですか!


「なくあノアルジダカラ、タノミグライハキイテヤルケドナ……アトゴハンヲクレルカラ、きゅあニハシタガウゾ」


やはり餌付けって大事ですよね……うん。


「どの道、今日中には止みそうにないし……飯にしようじゃないか」


「確かにそろそろ夕飯時ですね……急いで作りますよ」


雪が降って寒い時はやはり汁物が1番ですが……


うーん……思い付くのは全てお魚の鍋かスープばかりですね。


ンガイの川にはお魚が居なかったしセラエも内陸ですからお魚は取れないでしょうし……


あ、丁度良い物がありました。


焼いた干物をほぐして、その皮と骨から出汁を取って、切ったジャガイモとほぐした身を入れて、魚醤と味噌で味を付ければ干物汁です。


これと釜揚げうどんで体は温まるでしょう。


うどんのツユは梅干しを入れたお酒のアルコールを飛ばして、醤油で味を付けた物を使います。


それとトウカに干物を焼いて、ピーニャには叩いた梅干しを挟んで焼いたクックー肉を出せばいいでしょう。


……作っておいて何ですが梅肉挟んだクックー肉はあたしも食べたいですね。


多分ロウとサーグァ様(分体)も食べるでしょうから余分に作っておきます。


ついでにナクアちゃん用で梅肉とチーズを挟んだのも作って、他の皆さんはチーズだけ挟んで焼けばいいでしょう。




「梅肉挟んだ肉が美味ぇ」


「チーズも入ってるの美味しー!」


「コノスッパイノガくせニナル」


「ピーニャはよく平気でその酸っぱいのを食べられるねぇ……うどん美味しい」


梅干し、美味しいんですけどねぇ……


「このツユ?も酸っぱいけど、これぐらいなら普通に食えるねぇ……どうやって作ったんだい?」


「それはお酒に梅干しを入れて火に掛けて醤油で味付けしたんですよ」


「これ……あの酸っぱいの……入ってたの?」


酸っぱいのって……間違ってはいないんですけど。


というかコカちゃん、レモンは平気で食べられるのに何で梅干しは駄目なんですかね?


「この味噌のスープも美味しーね、体がポカポカしてきたよ!」


「ミャー!」


トウカ……いつの間に干物汁まで食べてるんですか!


っていうか冷まさずに食べてますけど貴方、見た目は猫なのに熱いの平気なんですか!?


……まあ少し前にタマネギ入りのおじやも食べていましたからね。


トウカは猫みたいな見た目の別生物と思っておきましょう。




さて、あたし達は6人、この休憩所に毛布は4枚。


とりあえず翡翠さんとピーニャで1枚として……


「今晩の見張りはあたいがやってやるから、1枚は使わせて貰うよ」


「了解、ならトウカはアプさんに付いてやってくれ」


「ミャッ!」


となると後は……


「公平に……くじ、引こっか」


それが1番揉めないですね。




「何と言うか……スマン」


「いいの……本当は、キュアちゃんとが……良かったけど……グスン」




「あたしはナクアちゃんとリコッタが一緒ですか……」


「スゥ……んん」


「ピィ……」


もう寝てるし……


まあ、結婚したら4人で暮らす事になりますし……今夜はその練習と思いましょう。

「くぅぅ……このモフモフが気持ちいいねぇ」


「ミ、ミャァ……(苦しい……)」

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