新しい技能を覚えた様です
ptブクマいつもありがとうございます
「えっとね、鳥さんはまずこっちの山に行って、その後あっちの山に行って、そのちゅーしんの湖に行ってからまたここに来るんだって言ってたよ!」
要約すると先ずは西の山に向かい、続けて南の山に向かい、最後に2つの山の中間地点にある湖……地図にもちゃんと載ってる場所に行ってからンガイに戻る……と。
何でそんな面倒な事してんだ?
「おそらくは撹乱が目的でしょう……イノシシがンガイに来れば誰だって山に拠点があると考えるでしょうし、実際私もそう思っていました」
「加えて山に手下を配置していれば私達が山に入った所で逃げられる、と……まあイノシシをけしかけている以上、確実に居るでしょうが」
成程なぁ……そんな細かい所まで仕込んでいたって訳か。
「ピー!ピー!」
「ふんふん……その湖にある小屋で、女の子が何人か居るのも見た気がする、だって!」
「この湖に居るのは間違いなさそうですね」
「では、早速向かいましょう」
さて、俺も準備しないと……矢は十分な数用意したし頭にトウカが乗ってるな、よし。
……何かもう頭にトウカが居るのが普通になっちまったな。
慣れって恐ろしい。
「……ねぇアプお姉ちゃん、この鳥さん飼ってもいい?」
「ああ、いいよ」
「わーい!」
またペットが増えちまった……いや、トウカはペットじゃなくて契約した幻獣なんだけど。
トウカをペット扱いしたら同じ幻獣のナクアとアトラさんまでペットになっちまうからな……それは避けなければ。
「トウカ、あの鳥を食べるんじゃないぞ?」
「ミャァ……」
何でそんな残念そうな声を出すんだ……
「……またキュアに干物抜きにされても知らんぞ」
「ミャッ!?」
うん、やっぱトウカの奴はキュアを恐れてるわ。
気持ちは痛い程によく解るけど。
「ナクア、その鳥の名前はどうする?」
「んー……じゃあ、リコッタ!」
それって確かチーズの名前じゃ……いや、これは言うまい。
とりあえず俺とナクアとミラさんが先行し、少し離れてアプさんとコカとマリー様とラスカさん、大分後ろからジェネさんと領主の私兵という布陣で進んで……
湖を目視出来る辺りから暗殺者の姿も確認出来たが、数が多いな。
「数は5人……流石に2人では厳しいですね」
ナクアは戦えないからなぁ……トウカの水縛で無力化は出来るが他の仲間に見つかると面倒だし。
「あ、いい事思い付いた!」
ナクアがおもむろに何か書いて鳥……もとい、リコッタの足に括り付けた?
「ゴニョゴニョ」
「ピー!」
リコッタはそのまま後ろに向かったと思いきや暗殺者の方に向かって……あ、力尽きた?
「リコッタは死んだふりをしてるんだよ!」
器用だなリコッタ……それともそれを教えたナクアが凄いのか?
お、足の紙を開いて慌てて下がっていったな?
「あの紙にはね、南の山に騎士団が入ったって書いたよ!」
成程、それで報告に戻ったと……
「では今のうちに接近しましょう」
「了解」
「はーい!」
おっと、リコッタも回収しないと……既にナクアの頭に乗ってる!
気のせいかリコッタがドヤ顔している様に見えるんだが……気のせいであってほしい。
よし、何とか小屋まで来れた……だがこの小屋には窓がないから中の様子は解らんな。
何かガタガタ音がするが……
「あそこ、屋根の所に穴が空いてるよ!」
確かに穴が空いてるがとても人が通れる広さでは……お、そうだ。
「トウカ、中の様子を見てきてくれ」
「ミャッ!」
よし、今こそ魔物使いの技能を使う時だな。
「……【共有:視覚】」
魔物使いの技能【共有】、これは契約した魔物、または動物と視覚か聴覚を共有する技能。
ハイドラ様や翡翠さんが幻獣使いになるなら、と教えてくれたがようやく役に立ったぜ。
慣れれば嗅覚や味覚も共有出来るらしいが……少なくともトウカが小鳥やネズミを狩ってる時の使用は控えたい。
「ドアの前に3人、四隅に各1人、中心に地下室もある……多分拐われた子達と黒幕はそこだな」
「ふむ……ならばマリー様達が合流次第突撃しましょう」
大体5分後、アプさん達と合流した……現状の説明をしたから行動開始だ。
「まずはあたいとラスカで突っ込むよ、ロウはそのまま様子を見てな」
「了解」
まあ、1分もせずに鎮圧しちまったんだけどな。
2人共強過ぎだろ……
ジェネさん達と合流したら私兵の皆さんには待機して貰いつつ地下に降りたのはいいが……何か迷路みたいなんだが。
「これは……まるでダンジョンみたいになっていますね」
「奴隷商は長い間計画を練り上げて、こんな事までしていたのね……その労力を他に使えなかったのかしら?」
イノシシを爆弾代わりにしたり地下に逃げ道作ったり……随分と時間の掛かる事やってんな。
まあンガイの森は直接燃やされなかっただけマシか。
「下手に動いたら迷う可能性がありますが……今からマッピングする時間はありませんし」
うーん……勘に頼ったら戻れなくなりそうだしなぁ。
こんな時キュアだったら……壁を全てぶち抜いて進みそうだな、却下だ。
「……うん、何処に行ったか解るかな?」
「チュー!」
「皆ー、このネズミさんが逃げた人達が何処に行ったか解るって言ってるよー!」
ナクアが頼もし過ぎて辛い……俺が来た意味ってあったんだろうか?
「ナクア、キュアはネズミが大の苦手なんだ……だからそいつは飼えないぞ」
「そーなんだ……」
「キュアちゃん……苦手な物、あったんだね」
「意外な弱点だねぇ……」
ネズミはおろかハムスターのイラストですら泣いて逃げるぐらいだからな……
以前デフォルメされたハムスターが主人公のアニメがあったが、始まった瞬間テレビから逃げだしたのも今ではいい思い出だ。
後、キュアもお化けが苦手なアプさんにだけは言われたくないと思う。
「チュー」
「住み慣れたここが気に入ってるから構わない?そっかぁ……」
ネズミよ、気を使わせてしまってスマナイな……
帰りにチーズを差し入れてやろう。
「トウカ、このネズミを襲ったら一生干物が食えなくなるからな」
「ミャッ!?」
最早トウカは【自分<<(越えられない壁)<<干物=ナクア<<キュアへの恐怖】という図式が出来上がってそうだな……
俺はどの辺に居るのか気になるが……追及はすまい。
最悪立ち直れなくなりそうだし。
まあネズミのお陰で迷う事なく進めたし、やけに広い空間に入った辺りで追い付けたからいいか。
「き、貴様等……あれだけ仕掛けた罠を全て潜り抜けたというのか!」
「チュー」
「罠のない道を選んだから1つも作動してないぜ、だって!」
うん、ネズミよ……帰りも案内を頼んだぞ。
何て考えてたら大勢の暗殺者に囲まれたか……
「そこの神子とハーフエルフとメイドは無傷で捕まえろ!他はどうなろうと構わん!」
ジェネさんはマリー様とミラさんが居れば大丈夫だろうし、コカはアプさんが守るだろ……なら俺はナクアを守ればいい。
「ラスカさんは隙を見てあの子達を救出して下さい」
「解りました」
さて、拐われた子達も居るしサクッと終わらせないとな。
「トウカ、【水縛】!」
「ミャッ!」
よし、こっち側の奴等は全員動けなくなったな。
それなりの実力があるんだろう暗殺者達があのザマだが……そう考えると水縛を受けて動いてた……ザトーっていったか、あいつ相当強いんだな。
クティに作られたとか言ってたし、単に水属性に耐性があるのかも知れないが。
「ちょっと大人しくしてろよ」
水縛に青の矢を打って氷らせて、っと。
これで暫くは動けまい。
顔は氷ってないから死にはしないだろ、多分。
他はどうなったかな……アプさんが攻撃を受け流した所でコカの炎が!
更にミラさんが相手を一ヶ所に纏めた所でマリー様の槍で横凪ぎられてる!
それらを辛うじて回避した所でラスカさんの拳が容赦なく急所に入ってる!
もう相手に同情するレベルだろこれ……一部の暗殺者なんて壁に埋まってるし。
ってやべえ、奴隷商が奥の通路に逃げようとしてやがる!
「トウカ、【水壁】!」
「ミャーッ!」
水壁……レンの村の一件でトウカが新たに覚えた技能で、文字通り水の壁を作る。
そこに青の矢を打てば氷の壁、こいつは簡単には砕けねぇぞ。
まあ、物理攻撃にはかなりの耐性があるがコカの炎魔法には弱いんだけどな……一度試してみたが2発で蒸発しちまったし。
何にせよこれで逃げられないだろ。
って奴隷商に付いてる暗殺者が赤を出して……強引に溶かすつもりか!
「ねぇロウお兄ちゃん……何だかナクア、手がムズムズするー!」
手が……ん?ナクアの首輪の宝石が光ってる?
これってトウカが水壁を覚えた時と同じ……成程、いい技能だ。
「ナクア、両手をあの赤を出してる暗殺者と、無駄に偉そうなオッサンに向けるんだ」
「うん!」
「よし……ナクア、【粘糸】!」
うん、やっぱりな……いつぞやの蜘蛛の糸と全く同じのが出たよ。
あれも確か火には弱かった筈だが、肝心の赤を持ってる奴が縛られてはどうしようもないだろ。
……何で亀甲縛りになっているのかは気になるが聞かない事にしよう。
確かに身動き取れなくなってるけど、オッサン2人の亀甲縛りとか誰得なんだ?
「エヘヘ、糸が出たらムズムズがなくなったよ!」
「そ、そうか……」
ここに来てナクアが凄く強くなってるなぁ……って他にも何か覚えてるな。
【融合】……これってキュアがクティから聞いた話だと確かアトラさんと一緒に居る時にしか使えないんじゃ?
しかもトウカまで同じ技能を覚えて……ああ、ナクアが仲良くなった動物となら何でも融合出来るのか。
……まあ近い内に色々と試してみるか、ぶっつけ本番で使うのは怖いし、下手したらSAN値が減るかもしれないからな。
叩きのめした奴等と奴隷商をふん縛って、残ってた赤を根こそぎ押収して、何とか脱出が出来たな……拐われた子達も無事だし、これで一安心だ。
「ネズミさん、案内ありがとー!」
「チュー!」
うん、そのチーズはお礼だから遠慮なく食うといい。
「ではミラさんは私兵の皆さんと一緒に罪人達を連行してきて下さい、ジェネさんとラスカさんは子供達の手当てを」
「解りました」
もう辺りも暗くなってるし、ンガイに戻るのはこの小屋で一泊してからだな。
「ロウくん、鞄から……食材、出して」
「おう、何を作るんだ?」
「人数が多いし……シチュー、かな」
えっと……シチューなら小麦粉、牛乳、じゃがいも、タマネギ、干し肉だな。
個人的に鶏肉入りのシチューが好きなんだが今はクックー肉がないし、諦めるしかないな。
それに俺は料理が出来ないから、コカに任せるしかない。
出来上がるまでは見張りでもしておこうと外に出たらナクアも付いて来た……何故?
「ねぇロウお兄ちゃん……今日はナクア、いっぱい頑張ったよ!」
そうだな……下手したら俺より活躍してたからな。
「えっとね……だからご褒美欲しいから、ちょっと屈んでくれる?」
ああ、そういう事か。
こういうおねだりは昔のキュアとソックリだ……今では懐かしい。
最近だと強引に迫ってくるからなぁ。
断る理由も避ける理由もないから素直に受け入れるけど。
当然ナクアを避ける理由もないから好きなだけしてやるが……トウカにリコッタ、頭の上からニヤニヤしながら覗くのは止めような?
「あれ……逮捕案件………かな?」←覗き中
「まあ歳は3つ差ですし、セーフでしょう」←覗き中




