雑草という名の草はないそうです
タイトル変更しました
旧【旅する双子】→新【あたし、料理をする為に転生した訳ではないのですが?】
それと新たにptとブクマをありがとうございました!
ボリアを立って早5日…モンスターの襲撃も強盗、山賊の類も現れず平和な道のりです。
毎回こうなら楽なんですが…水晶が集まらないのは困り物ですね。
ボリアで多目に集めてはいましたが赤と緑が少ないのがちょっと気になります…転職した後の水晶集めで少しだけ増えましたけど。
特に赤はあたしの魔法と屋台にも使いますからね…最悪屋台の方はコカちゃんの魔法で何とかなりますけれど。
「何で赤と緑が出難くなったのか…翡翠さんかサーグァ様は何か知りませんか?」
女神の眷属なら何か知っているんじゃないかと思ったのですが…
「恐らくですが…誰かが水晶を独占している可能性がありますね」
「水晶はお金みたいな物だからね…使わずに貯めてるだけじゃ回らないんだよ」
予想より的確な話が聞けましたね。
「最近モンスターが出ないのもそれが原因じゃないかな?元になる水晶がないんだから」
使った水晶は何処に消えているのか疑問でしたが…新しいモンスターになってたんですか。
成程…水晶を使う、モンスターが生まれる、倒して水晶を集める、と上手く循環しています。
そりゃ使わずに貯めていたら止まりますよね。
「ですが…緑はまだ解りますが赤が少ないのは気がかりですね」
緑なら植物の成長を促進する=野菜を沢山作る、と解りますからね。
「赤は攻撃か、火を出す水晶だし…何か危険な事が起きなきゃいいけど」
火…火災…ンガイ…止めましょう、フラグになったら申し訳ありませんから。
「ふぅ…このペースなら明日にはレンに着くねぇ」
一切の妨害なしで来ましたし…予定より3日は早く着けそうです。
「レンに着いたら…まず宿を確保して、後はどうする?」
「そうですね…蕎麦粉も気になりますがまずは骨を調達して、血抜きして煮込んで、麺を打たねば…ああ、具も用意しなくてはいけませんね」
「キュアちゃん…もう考え方が…完全に料理人…だよね」
「破壊僧だからな…」
失礼な…破壊僧はその通りですが、仕事しているだけですよ。
いや、この場合誉められたと思っていいのでしょうか?
「キュアお姉ちゃん、あそこにおうちがあるよー?」
おうち…こんな所に家があるのですか?
って本当にあった!家というよりは小屋でしたけど。
「ああ、あれは旅人用の休憩所だ…突然の雨とか、怪我や病気で動けなくなった場合の為に建てられてるんだよ」
そういえば前にミラさんから聞いた覚えがありますが、確か地下室があってそこからデストさんが出てきたとか。
…着替える時は地下室に注意しましょう。
「ああいう場所には製造者の為の工房がある場合があるからねぇ、入る時は地下室に注意しておきな」
製造者…デストさんの鍛治師や翡翠さんの製薬師がそれに当たりますね。
「あ、なら…地下室…ボクが使って…いいかな?」
コカちゃんが?
「学者の技能に…【印呪】っていうのがあって…紙があればスクロールを…作れるの」
スクロール…確かデストさんがスライムにブッパしたという貴重な品でしたね。
効果はなかった所か敵が増殖してしまった様ですが…まあ相手が悪かっただけなんですけど。
「スクロールなら安くても700ハウト、込める魔法次第じゃ3000ハウトで売れるからねぇ…反対する理由はないよ」
そんなに高いのですか!
そんな高価な物を使って…その時のデストさんの心境が想像出来ませんね。
因みに売られている紙はB4サイズしかなくて値段は1枚2ハウトになりますから…スクロールの値段はほぼ制作費と人件費みたいです。
羊皮紙は貴族か王族でもなきゃ使う機会はありませんけど、1枚50ハウトはするとか聞きました。
「翡翠さんはいいのか?」
「造っておいた薬がそのまま残ってるからね、それに私の知ってる薬に必要な材料にはハイドラ様の世界でしか採れない物があるし」
まあ、翡翠さんはハイドラ様の世界から来たんですし…この世界とレシピが違っていても不思議ではありませんね。
いや、薬なら処方箋と言った方が良いのでしょうか?
さて、コカちゃんがスクロールを作るから休憩所で一泊する事にしましたが…夕飯は何にしますかね?
「キュア…食料が干物と干し肉と小麦粉しかないぞ」
何…だと!
「…サーグァ様、つまみ食いしましたね?」
「何で真っ先に私が疑われてるのでしょうか…してませんよ?」
とりあえず食べ物ならサーグァ様かなと…違ったなら失礼しました。
「近くに川もないから魚の調達は出来ないな…」
「まあ目的地は近いですし…1食ぐらい何とかしますよ」
さて小麦粉に塩と水を混ぜて…塊になるまで捏ねて叩き付けて、布で包んだら踏んで丸めて、と。
生地を寝かせてる間に干し肉と乾燥昆布を水に浸けて出汁を取っておきましょう。
少し置いたら生地を伸ばして、小麦粉をまぶしながら麺状に切って茹で、水洗いすればうどんの出来上がりです。
生地には卵も使いたいのですが…ないから仕方ないですね。
おっと、出汁は醤油で味付けして一煮立ちさせねば。
あ、薬味になる物がありません…生姜は手持ちにはないし大根おろし…はこの世界で大根そのものを見掛けた事がないし、大葉も
「いやー、まさかこの世界にもシソがあるとはビックリだよ」
「うん、何事かと思ったし、採集を手伝わせるならそう言って欲しかった」
「ナクアは楽しかったよ!」
ロウと翡翠さん、ナクアちゃんが青紫蘇の葉を持ってキター!
少し貰って、千切りにすれば薬味もオーケーです。
ついでに青紫蘇の葉をもう少し貰って、天ぷらも作っておきましょう。
チュルチュル
「へぇ、この喉越しは悪くないねぇ」
チュルチュル
「これ…歯が押し戻されて…噛むのが…楽しいね」
チュルチュル…サクッ
「まさか薬の材料がこんなに美味しいとは…今までちょっと損した気分」
チュルチュル
「うどんって美味しー!」
うん、部屋中でチュルチュルと少し五月蝿いですが概ね好評ですね。
うどんに限らず麺類を食べる時に音を立てるな、とか言われる事もありますが…まあ日本じゃないから問題ないでしょう。
ロウは勿論、あたし自身麺を啜る時に音を立ててしまいますし。
「まさか麺だけでこんなに美味しいなんて…もしかして小麦粉だけでも美味しいのでしょうか?」
「サーグァ様、お腹壊しますよ?」
確か米や小麦粉に含まれているデンプンはそのままじゃ消化が出来ないらしいので…必ず火を通してから食べましょうね。
「所でこのシソはまだ生えていましたか?」
「薬に使える大きさのはもうなかったよ」
つまりまだ育っていない、もしくは育ち過ぎていると…少し集めておきたかったのですが仕方ありません、今回は諦めましょう。
「シソ集めて何をしようとしてたんだ?」
「天ぷらを追加しようかと思ったのです」
だって翡翠さんとサーグァ様にナクアちゃんまでサクサクと食べてらっしゃいますし…ってナクアちゃんそれはあたしの天ぷらです!
欲しいならちゃんと言えば分けてあげますから!
余談ですが夜、物音がして目が覚めたらつまみ食いの犯人が判明したのですけれど…
「…まさか貴方の仕業だったとは思いませんでしたよ?」
「……………ミャー?」
うん、可愛い…あざといけど可愛い。
見た目子猫ですからね…これでは怒るに怒れません。
まあ、飼い主の責任という事で説教は明日ロウに一任しましょう。
「あ、でも明日は干物抜きですからね」
「ミャッ!?」
ご飯抜きにはしませんけれど、干物はあげません。
罪には罰、これが鉄則ですから。
だからトウカ、あたしの手にすがり付いたって無駄ですからね。
というか泣きながらすがり付かれると借り物の布団が湿ってしまうから止めなさい!
「トウカちゃん元気ないけど、どーしたの?」
「ミャァ…」
「あー、キュアお姉ちゃんに怒られちゃったんだね…」




