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端から見ればハーレムらしい

模擬戦を終えて帰宅しました…


帰り道は何故かマリー様と荷物を抱えたミラさんも付いて来てましたけど。


「あの…夕飯にはまだ早いと思うのですが?」


夕飯どころかオヤツの時間にすらなってませんよ?


「今日は無理に付き合って頂いたので、お礼の品を渡そうと思いまして」


「先程も言いましたが今回の事は王様には内緒ですからね…」


あ、それで早い内に済ませようという事ですか。


まあ貰える物は何でも貰う主義ですし断る理由もありませんからね。


で、何故かマリー様はアプさんと酒盛りを初めてしまいましたのであたしが受け取っておきましょう。


「ではこちらがお礼のアマミズの水を煮詰めた物になります」


アマミズ…って事は甘いのでしょうか?


この世界では砂糖がポクー肉以上の高級品で手が出せませんからね…甘味を得られるなら嬉しいです。


まあ1瓶しかないんですけれど…後でちょっと味見してみましょう。




「お、帰って来たか」


「ああデストさん、戻りましたよ…それでアマミズの水とやらを頂いたのですが」


「いいねぇ、アマミズの水ってのはアマミズっていうこの辺りにしかない植物の根を切ったら出てくるんだが、少し青臭いけど微かに甘くてなぁ…青臭さも煮詰めれば消えるし甘味が増してシロップみたいになる」


ふむ、という事はデザートに使えそうですね。


「にしてもそれを煮詰めたのが1瓶って…そんなに集めるのは大変だったろうに」


「全然苦ではないですよ、デストに教わった通りに集めたんですから」


おや?デストさんが壊れたロボットみたいな動きでミラさんを見つけましたね?


「み、ミラか…久しぶりだな」


「ええ、2年振りですね」


やはり知り合いだったのですね…


一体どういう関係なのですか?


「姐さんの指導(シゴキ)から独立した時にたまたま知り合ってな…一時期パーティーを組んでたんだよ」


「懐かしいですね…私とデストにジェネの3人で色んなダンジョンに潜りました」


やはりダンジョンもあるんですね…ミラさんの強さの理由が少し解った気がします。


トゥグア様の依頼が終わったらあたしも潜りましょう。


「所でジェネって誰ですか?」


「ジェネはキュアさんと同じヒーラーだったのですが…今は神子(プリースト)になって神殿に勤めていますよ」


「そういやこの町の神殿で働いてるとか言ってたな…」


「貴方ね…仲間だったんだから顔ぐらい出してあげなさい、女の子を待たせる男はモテませんよ」


ジェネさんは女性でしたか…


「いやだってこの町の神殿って忙しそうだし、俺とは崇めてる神が違うからなぁ…後お前達はもう女の子って歳じゃないだろ」


「私もジェネもまだ22ですよ!十分女の子ですよ!」


そういえばデストさんは自分を転生させたツァトゥって神を崇めてましたっけ…


あたしもあたしとロウを転生させてくれたトゥグア様を崇めているので気持ちは判ります。


「ま、私達の歳はどうでもいいんですが…今度ジェネに休日がいつか聞いといてあげます」


「そうしてくれ…流石に仲間の職場で宗教戦争は嫌だからな」


それが最大の理由ですか…うん、充分過ぎる理由ですね。


「それはそうとデスト、そろそろいい返事が欲しいのですが?」


おっと、ミラさんがデストさんの左腕にくっつきましたね。


普通ならふくよかな脂肪が当たって照れる場面でしょうが…残念ながらミラさんもあたし達と同じ持たざる者でした。


まあ、あたしがこの世界で会った事があるふくよかな脂肪の持ち主はエリナ様とアバズレぐらいですがね。


「まだ諦めてなかったのか…」


「当然です、私達はもうデストなしでは生きていけないんですから」


ほほう、やはりデストさんも男だったという事ですね。


何気にミラさんはデストさんより年上で好みの範疇ですから肉体関係があっても不思議じゃないですね。


…この場にアトラさんが居なかったのは幸いでした。


「待て、俺とお前達の間に爛れた物はないだろ…主語はちゃんと言え」


「私もジェネも、もうデストのギョウザなしでは生きていけません…だから私とジェネと結婚しなさい」


乱れた関係ではなく2人揃って胃袋を掴まれてしまったのですね…デストさんの餃子は美味しかったし判らなくもないですが。


というか神殿勤めの神子(プリースト)って結婚してもいいのでしょうか?


…崇めてるのがトゥグア様なら神託で推奨すらしてそうですけど。


「お前達はなぁ…たかが餃子の為に結婚しようとするな!」


「たかがとは何ですか!あんなに美味しい料理が他にあるとでも言うんですか!」


「そんなのいくらでもあるわ!」


いくらでもはないですよデストさん…少なくともこの世界には。


あ、あたしの料理は異世界の知識で作ってますからノーカウントです。


何か言い争いが始まってしまいましたし…このアマヅルの水を涼しい所で保管してきましょう。


「なあ、兄貴が女の人と喧嘩してるんだが何があったんだ?」


「昔の仲間らしいので心配はいりません、それとあの人は今マリー様の専属護衛をしています」


「ああ、あの人がミラさんか…オッサンとは全然似てないな」


「それは同感です」


きっと母親似なんでしょうね…


「それはそうとキュア、兄貴に習って捏ねてた餃子の中身が出来たんだが…この後どうすればいいんだ?」


遂にロウが料理を!?


多分デストさんの影響でしょう…ありがとうございますデストさん。


「当の本人が今アレですからね…宥めて来ます」




それにしてもこの2人…言い争いしてる割に笑顔なのは何故でしょうか?


もう付き合っちゃえばいいのではないでしょうか。


まあ、当のデストさんはアプさんが好きなので難しいでしょうが。


「あのデストさん…ロウが次の指示を求めているのですが?」


「ん、やっと出来たのか…なら厨房に戻るか」


「ちょっとデスト、まだ話は」


「ミラさん、夕飯はお望みの餃子みたいですが」


「…少し席を外します、夕飯までには戻りますので!」


あっという間に外へ…件のジェネさんを呼びに行ったのでしょうか?


というかマリー様の護衛はいいんですか?


…仕方ないのでオツマミ出しながら周囲を警戒しておきましょう。


薄切りにしたジャガイモを素揚げして塩を振るだけの簡単な物ですけどね。






で、夕飯の時間になったのですが…


予想通りお客さんが1人…ジェネさんが増えました。


因みにジェネさんはデストさんの右腕にくっついています。


それに対抗するかの様に左腕にはミラさんが、背後にはアトラさんがくっついています。


尚、ジェネさんも持たざる者みたいです。


やりましたね、同志が増えましたよ…全然嬉しくありませんけどね!


「流石は兄貴…モテモテだな」


まあ…本人は微妙そうな表情ですけどね。


「おいジェネ…神殿の仕事はいいのかよ?」


「デストのギョウザを食べる為なら給金の出ないサービス残業なんて幾らでも放棄してやりますわ!」


神殿勤めの割に中々はっちゃけた人ですね…


というかこの世界にもサービス残業なんて概念があったんですか?


「あー…ジェネと言ったかな?その話をもう少し詳しく聞かせてくれるかな?」


「はっ!?お、王様…これは恥ずかしい所を…と言いますか何故ここに?」


恥ずかしがりながらデストさんを離そうとしない辺り本気でデストさんを狙っているみたいですね…


「このキュアという娘の作る料理はサーグァが気に入る程美味くてね、ここに居る間はお相伴に預かっているのだよ…それはそうと詳しい話をだね」


何やら難しい話をしてますが…内容がサッパリ判らないので割合しましょう。


とりあえず神殿の上層部は総入れ替えが確定した様ですが…即決断にも程がありませんかね?


「ではこれまでの残業分の給金は後日払おう、それと君は神子(プリースト)でミラの知り合いなら丁度いい…1つ仕事を頼みたいのだが」


「は、はい!何なりと!」


あ、ルルイに向かう皆さんの回復役にするんですね…


そういえばジェネさんの戦闘能力はどれ程なのでしょうか?


「ジェネは純粋な回復・支援特化だからな…攻撃力は0に近いぞ」


「デストさん、その言い方だとあたしが不純と言われている気がしてしまうのですが?」


「普通のヒーラーは前線に出たりはしないだろ?」


そう言われても他のヒーラーには会った事すらないので知りませんが…


「デストったらあの子が考えてる事を解っているみたいな…ま、まさか!」


「おいコラ…ジェネ、その想像は100パーセント間違ってるからな!」


仮にそうでもアトラさんを敵に回したくないから辞退しますけどね。


というかあたしにはロウが居ますし。


それを示す意味を込めてロウに抱き付こうと思いましたが…コカちゃんがハイライトのない目でこちらを見てるので止めておきました。




で、夕飯が終わって王様達が帰ったにも拘らずミラさんとジェネさんはまだデストさんにくっついたままなのですが…


「もう勘弁してくれ…」


「デストぉ、もう諦めて私達と幸せになりましょうよぉ…」


「別に毎日ギョウザを作れとは言いませんが結婚して下さい」


「デスト様、私もその中に入れて下さいませ」


遂にアトラさんもはっちゃけてしまいましたね…あの2人に当てられてしまったんでしょうか?


というかミラさん護衛はどうしたんですか?


「マリー様の護衛なら…母さんがお城まで…代わりにしてくるって…言ってた」


成程…アプさんなら問題ありませんね。


「それはともかく、コカちゃんはちょっと離れてくれませんかね?」


「……やだ」


うん、知ってました。


「キュア、同じ事をお前にも言っていいか?」


「嫌です」


あんなラブラブな空気が溢れてるのに離れるなんてとんでもない。


「キュアお姉ちゃん、ナクアも抱っこー!」


「今は抱っこ出来ないので…代わりに膝に乗ってもいいですよ」


「わーい!」


ははは、ナクアちゃんは素直な良い子ですね。


そのまま、純粋なまま大きくなって下さいね?


「キュア、マジで放してくれ…トイレに行きたいんだ」


あ、良く見たらブルブル振るえてました…悪い事をしてしまいましたね。


「それなら仕方ありませんね…」


とはいえ後で2人きりになってお詫びしておきましょう…もしロウに嫌われたらコンマ1秒でトゥグア様の元に旅立つ自信があります。


「キュアちゃん…しんじゃ駄目」


…今のコカちゃんならあたしを物理的に止められそうで怖い。


丁度いいタイミングで神子(プリースト)のジェネさんと知り合えましたし…色々教えて貰いましょう。




「成程…あの子はデストとは何もないのね」


「やっと判ったか」


「いつ見てもキュア様の周りは下手な演劇より面白いです」


「フフ、まるでかつての私達みたいです」


何やら不穏な視線を感じる…気のせいでしょうか?

「最近…ボクの台詞…少なくない?」


A:気のせいだ

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