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牛8豚2がベストだと思う

王様がグヌットに使者を送った翌日…


あたしはロウとアプさんと一緒に水晶を集める為に郊外へ出ています。


今日の夕飯はコカちゃんが作る日なのでビフーとポクーのハンバーグのレシピを渡しておきましたが…まあ大丈夫でしょう。


「そういやアプさん、今日は酒場じゃないのか?」


「ああ、今日は月に1度の休肝日って奴だよ…」


つまり今日はお酒を飲まない日って事ですね。


「余り飲み過ぎるとコカが泣いちまうからねぇ…」


やっぱりアプさんはコカちゃんには甘いですね…1人娘だし判らなくはないですけど。




さて前方に見えますのはゴブリンの集団…


オークには人権があったけど奴等は普通にモンスターだそうです…基準がよく判りませんね。


豚肉もといポクー肉が高かった事から推測してこの世界の豚には何か特別な力でもあるのでしょうか?


「数は7匹か…ロウ、まずはあんたがやってみな」


「お、おう…」


ロウはまず3本の矢を放ち、全て前線に居たゴブリンの眉間に命中…何気に難易度の高い事してますね。


そして怯んだ中衛の2匹に接近してナイフで頸動脈へ斬りかかって、逃げようと後ろを向いた2匹の後頭部に矢を放って終了…


この間僅か35秒の出来事でした。


「まだナイフの使い方…それと接近する動きにも無駄があるねぇ…あの数なら後3秒は削れる筈だよ」


「マジかよ、厳し過ぎだろ!」


アプさんがスパルタ過ぎて辛い…でもアバズレと戦うにはそれぐらいして貰わないと勝てないでしょうからね。


この世界にレベルという概念がない以上、強くなる為には場数という経験を積むしかありません。




「次はコボルトが5匹かい…キュア、支援魔法抜きでやってみな」


「あ、はい」


さて、あたしは攻撃魔法は使えませんから接近して殴るか蹴るしかないんですよね…


支援魔法無しなら…まず先頭のコボルトの腹に正拳突き!


左右に陣取った2匹は回し蹴り!


おっと、蹴り飛ばした左足のコボルトがもう1匹巻き込んでくれましたね。


最後に逃げようとしてるコボルトの背中に抜き手を刺して…はい、終了しました。


「大体38秒って所か…」


「キュアは回復と支援のヒーラーだった筈だよねぇ…自衛出来るに越した事はないがちょっと前に出過ぎだよ」


そう言われましてもこれ以外の攻撃なんて出来ないのですが…


というか前に出ちゃいけないならどうやって戦えと?


「ヒーラーの役目は仲間を死なせない事、それと絶対にやられない事だよ…いざとなったら逃げちまうぐらい臆病で丁度いいのさ」


つまりコボルトから逃げるのが正解だったと言う事ですか…


ですがモンスターから逃げるつもりはありませんので諦めましょう。




「というかキュアの実力ならもう格闘家(モンク)になれるんじゃないかと思うんだけどねぇ…ってそういや2人は外来人だったか、ならまだ初級職でも当然か」


まあ職業はトゥグア様に付けられただけですし。


というか初級職って事は上位職があると?


「普通なら10歳で初級職を受け取って、成人前に転職するのさ…因みにコカはまだだがあたいは転職済だよ」


詳しく聞いてみたらアプさんは最初は戦士(ウォリアー)だったそうで…


そこから神殿で掲示を受けてタンクになったと。


「ヒーラーの上位職には神子(プリースト)格闘家(モンク)があるんだが…まあキュアの性格からいって格闘家(モンク)一択だろ」


何故か決め付けられてますが…とはいえ自分でも自覚があるので否定は出来ませんね。


「狙撃手の上位職は狩人(ハンター)魔物使(テイマー)いがあるが…ロウは動物には好かれなさそうだねぇ」


「まあ、そこらの飼い犬にすら噛みつかれるぐらいだからなぁ」


そういえばロウは学校で飼育していた兎にすら避けられてました…


流石はアプさん…よく見てますね。


「因みにコカちゃんの上位職はどういうのがあるのですか?」


魔導師(マジシャン)の上位職は魔術師(ウィザード)学者(プロフェッサー)だが…実はそれで悩んでんのさ」


「アプさんが頭を抱える悩みって一体…」


「まず学者(プロフェッサー)になったとしたらどこかの研究所に在籍しなきゃならないし、魔術師(ウィザード)の場合は魔術ギルドって呼ばれる所に入らないと魔法を使う事が出来なくなっちまう決まりがあるのさ」


「それだけ聞くと魔術師(ウィザード)になった方が良さそうだが…まだ何かありそうだな」


「ああ、魔術ギルドはいわば有事の際の伏兵って奴でねぇ…ボリアの他にもある程度大きい町に支部があるんだが在籍したら自由に動けなくなっちまうんだよ」


成程…コカちゃんは旅人で行商人ですし動けないのは困りますね。


それに今はアバズレの企みを潰す仲間ですし攻撃魔法がなくなるのは避けたい所です。


「実力は十分あるしもう転職したっていいんだが…旅が出来なくなるのは嫌だってずっと初級職のままって訳さ」


「因みに転職しないでいると何か問題があったりするのか?」


「旅人なら何も問題ないんだが行商人となると転職も出来ない奴ってのは回りから信用され辛くなっちまうんだよ、商売するには何より信用が第一なんだが」


ふむ…この場合行商人である事が枷になっている訳ですか。


かといってコカちゃんに行商止めろと言える訳もありませんし…言ったらアプさんにブン殴られてしまいます。


うん、あたし達では名案は浮かびませんし今度王様かサーグァ様に相談してみましょう。


余り権力に頼りたくはありませんが親友の為です、なりふり構っていられません。


あくまでも親友ですからね、嫁でも婿でもないので勘違いはしない様に。






その後はやっぱり名案が浮かばず、モンスターも余り湧かなかったので早めの帰宅です。


でもあたし用の黄と赤は確保しましたよ。


「あ、皆…おかえり」


「おかえりー!キュアお姉ちゃん、お土産頂戴!」


「お土産はねだる物ではありませんよ…ちゃんと用意はしてますが」


因みにお土産は食料の買い出しついでに買ったチーズの焼き菓子です。


ナクアちゃんはチーズが大好きですからね。




「そういえばアトラさんとナクアちゃんの職業って何ですか?」


「私もナクアも職業は従者です、だからメイドになったのですよ」


従者って職業があったのですね…それでナクアちゃんもメイドに。


「因みに詩人や従者、商人には上位職がないのですよ…まあ神殿で掲示を受けるのも無料(タダ)ではないので、その辺は助かりましたけど」


中々に逞しいですね…尊敬しますよ。


それにしてもお金が必要とは…トゥグア様は素晴らしいお方ですが神殿の神官はそうでもないのでしょうか?


でも神官が腐ってるとは限りませんし、何度も出来ない事だからこそ必要な経費である可能性もありますね。


うん、幾ら掛かるか判りませんし行商市の後もなるべくお金を稼いでおきましょう。


いざとなったらビフーやクックーで作れる料理を屋台で売って稼ぎます。




そんなこんなで夕飯です。


コカちゃんの作ったハンバーグに舌鼓を打ちつつ王様に転職の話題を出してみたのですが…


「ふむ、君の言い分は解るし私も力になってやりたいのだが魔術ギルドは国から独立した勢力だからねぇ」


やはり簡単にはいきませんか…


有事の際の伏兵とか言ってましたしそんな気がしてましたけど。


「だが学者(プロフェッサー)になったのならば少なからず力になれるぞ、例えばサーグァのお抱えという肩書きを付けたりとか」


ああ、国が抱えちゃった扱いにするなら問題ないですね…


旅を続けてても国務と言い張れますし。


「まあその場合私達に子供が生まれた際には一定期間教育係として勤めて貰う事になるが…」


流石にこっちにだけメリットがある訳がありませんでしたね。


まあギルドに縛り付けられるより遥かにマシですがコカちゃんの反応は…


「な、ならボク…学者(プロフェッサー)に…なる」


これでコカちゃんの転職問題は片付きましたね…アプさんもホッとした表情してます。


「では詳しい話は行商市の後転職を済ませたらにしよう…それとおかわりを頼む」


王様はハンバーグをいたく気に入ってしまった様ですね…もう3皿目ですよ?


サーグァ様は既に7皿食べてますけど。


「おおそうだ、行商市で思い出したがグヌットから例の物を入手出来たと知らせが入ったぞ」


それは有難いですね…出来れば先に言って欲しかったのですが。


「早ければ明日の昼には到着するだろうから明日の夕飯はその試作品を所望したい」


当番では明日もコカちゃんが夕飯を担当する筈だったのですが…


王様には今後もお世話になる予定ですし仕方ありません…精一杯煮込ませて頂きましょう。


あ、朝一で骨を貰いに行かなくてはいけませんね…肉は熟成した方が美味しいですが骨は新鮮な方がいいので。






その日の夜、お風呂も済ませて寝ようとしてたらドアをノックする音が…


「キュアちゃん…まだ…起きてる?」


コカちゃんが来ました…え、夜這いですか?


まあすぐ横の部屋に休肝日のアプさんが居ますし嫁入り前の娘の暴走は見過ごしたりはしないでしょう…多分。


因みにあたし達は2階の部屋を割り振りましたがロウは1人だけ1階にある部屋を使っています…まあ唯一の男子ですし。


とはいえここは素直に応じていい物でしょうか?


とか考えてたらギィィって音が…寝てると判断されてしまった様ですね。


仕方ありません…一線越えようとされない限りは寝たフリを貫きましょう。




「キュアちゃん…母さんが…教えてくれたよ…ありがとう」


コカちゃんの為というよりトゥグア様からの依頼の為なのでお礼を言われるのは何か違うのですが…まあ悪い気はしませんけど。


「ボク…またキュアちゃんに…助けられちゃったね」


結果的にそうなっただけですしお気になさらず。


「今は…こんな事しか…出来ないけど」


ん?何か右頬に暖かい感触が…


「エヘヘ…唇同士はまだ…恥ずかしいし…キュアちゃんが起きてる時に…ね」






コカちゃんが部屋から出て暫くして寝ようと思ってたのですが…


「…何であたしはロウ以外の相手に、しかも同性相手にこんなにドキドキしちゃってるんですか?」


はい、いつだったか盗賊に襲われた時みたいに眠れません。


きっと寝たフリがバレないか冷や冷やしてたせいでしょう。


間違ってもコカちゃんを意識してるからじゃないです…よね?




結局この動悸は明け方まで収まらず、王様の使者が来てナクアちゃんのフライングボディプレスで起こされる昼まで寝過ごす羽目になりました。


後でアプさんに叱られたのは納得いかない所がありましたよ、ええ。


尚、ポクーの骨はアトラさんが貰って来てくれていました…助かりましたよ、本当に。

「ロウはあたしが同性愛に目覚めたらどうしますか?」


「キュアの嫁なら俺の嫁と同じだろ?問題ない」


「殴っていいですか?」

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