番外編 2組の眷属と女神
これで主要メンバーがほぼ勢揃いになりました
時間軸は13話の前辺りです。
~SIDE クティとアルラ~
わたくしはクティ…女神アルラ様に仕える眷属。
トゥグアの世界でモンスターの作成が終わり報告に戻ったのですが…最後の最後でしくじってしまったわたくしをきっとお叱りになるでしょう。
アルラ様を失望させるなんて…わたくしは何と愚かな事をしてしまったのか。
「…只今戻りました、アルラ様」
「お疲れ様、面倒を押し付けて申し訳ないわねクティ」
「いえ、それがわたくしの役目で…うぷっ!」
言い切る前にわたくしの顔が何かに覆いつくされてしまった…
いえ、何かではないです、アルラ様の豊満なバストです、とても温かで柔らかく良い匂いです。
「もう、いつも言ってるでしょう?2人きりの時は?」
「ご、ごめんなさい…お姉様」
「はい、よろしい」
【地】と【楽】の女神アルラ様…他の神々からの評価は
・水の女神曰く「自分が面白いと思う事しかしない破天荒な存在」
・風の女神曰く「面倒事を徹底的に避けるサボリ魔」
・炎の女神曰く「生理的に受け入れられない奴」
確かにアルラ様の司る【楽】には楽しい、楽チン、といった堕落的な要素が多分にあります。
ですがちょっとした癇癪で津波を起こす母…ではなく水の女神に破天荒と言われる筋合いはありませんし
1分と同じ場所に居ないせいで連絡もままならない風の女神にサボリ魔扱いする資格はないし
トゥグアは…たんなる僻みなので割合します。
「…以上で報告は終わりです」
「ふーん…トゥグアちゃんったら思ったよりも早く行動に出たのね」
それはそうとあれからずっと抱きしめられたままなので呼吸がし辛いのですが…そろそろ開放してくれないでしょうか?
いえ、勿論こうされているのはとても嬉しいのですが…それ以上に苦しくなってきました。
「ごめんなさい…わたくしがもっと早く動いていれば」
「クティのせいじゃないわ、元々あの世界はトゥグアちゃんの愛が満ちているせいで怨みつらみが霧散され易いんだから…そんな場所で7体も作れれば上出来よ」
そういえばあの女神は愛も司っていましたね…。
すっかり忘れてました。
「それよりも…ごめんなさい、嫌な役を押し付けて」
「そんな、お姉様のご命令で嫌な事など」
てっきりわたくしが怒られると思っていたのに逆に謝られてしまうとは…
「私以外の者にその唇を使うなんて…辛かったでしょう?」
実を言うとこれは最初の1体を倒された時に、ご褒美代わりにと指示されていたのですが…
実際は倒す以前に作れなかったので止むを得ずって奴ですね。
「はい…実を言うとちょっと」
別に唇同士で触れた訳ではないので言う程嫌って訳でもないのですが…
これを言うとアルラ様が拗ねてしまうので墓の下まで持って行きましょう。
「じゃあ、ご褒美を上げるわ…目を閉じて」
「ありがとうございます…お姉様」
それからおよそ丸1日…ディープなキスから始まりベッドでは生まれたままの姿でギシギシアンアンして頂けました…わたくし、本当に幸せです。
この幸福の為にアルラ様に尽くしていると言っても過言ではありません。
…訂正します、アルラ様の与えて下さる快楽もです。
「それでは行って参ります」
「お願いね…でも無茶はしちゃ駄目よ?負けても構いません、でもクティの身体に傷を付ける事は許しませんよ」
「はい…お姉様」
アルラ様の望むままに…それこそがわたくしの生きている意味です。
アルラ様が命令なさるなら最高神すらも討ち取ってみせます。
ですからどうか…
わたくしをずっと愛して下さい…お姉様。
~SIDE サーグァ~
「…よし、出来ました」
何がって?
それは我が姉、トゥグアに祈りを捧げる為の祭壇です。
アプさんの家の空いているスペースを間借りして建てさせて頂きました。
あ、旅立つ前にはちゃんと解体して片付けるのでご安心下さい。
「もう出来たのですか?」
「はい、これの前で祈ればその黒の水晶を姉の元へ届けられるでしょう」
本来なら私が直接届けに行かねばならないのですが、生憎試験の真っ最中ですからね。
例えるなら進級試験の最中に一旦帰宅する様な物です…そんな事したら間違いなく不合格です。
祈祷や祈りも同様に、テスト中に答えが分からないから家族や友人に教えて欲しいと言ってる様な扱いになってしまいます。
といっても姉の方から私に連絡をするのはアリなんですけど…何故でしょうかね?
まあ姉にとっての一大事ですし、いざとなれば不合格上等で動きますが…
幸いここには姉を熱心に信仰しているキュアさんが居ますので私が無茶をする必要はありません。
祭壇建てるぐらいならセーフですしね…セーフですよね?
「その御神体代わりの赤の水晶の前にそれを置いて…はい、準備出来ましたよ」
「判りました…ではいきます」
「ふんぐるい むぐるうなふ トゥグア ほまる はうと うがあ ぐああ なふる たぐん」
「あのキュアさん?その詠唱は?あなたは一体何を祈っているのですか?」
何でしょうかこの冒涜的な詠唱は…いえ、姉を慕う気持ちは伝わってきますし、全否定したい訳ではないんですけど。
「いあ! いあ! トゥグア!」
あ、どうやらちゃんと送られたみたいですね…
詠唱はともかくキュアさんの信仰は本物みたいですし…本当に問題があれば姉から直接神託があるでしょうし。
うん、私からとやかく言う事でもないですね。
職務放棄?何の事ですか?
「キュアちゃん…一体…どうしちゃったの?」
「目に光がなかったんだが…本当に大丈夫なのかい?」
「あ、うん…大丈夫、あいつ女神に祈る時はいつもああなるんだ…その内慣れるから安心してくれ」
~SIDE トゥグア~
『あら?これは…』
黒の水晶…何でこれが私の世界から?
これを作れるのは確か最高神様と…ああ、そういう事ですか。
下界の様子を見る為の泉の中に、魔力を流した水晶を入れて…これで込められたメッセージを聞ける筈ですが。
「はぁい、元気だったかしらトゥグアちゃん?」
『くっ…やっぱり貴女でしたかアルラ!』
おのれ…これ見よがしに映像付き、しかも無駄に脂肪を蓄えた胸のドアップ!嫌味ですか!嫌味でしょうね!
「ここで悲しいお知らせがあります、私アルラは今回の昇神試験で不合格となっちゃいました」
私にとっては何よりも嬉しい吉報ですが何か?
というかそのグニグニ揺れてる目障りな贅肉をどうにかしてくれませんかね!
「はぁ…やっぱり女の子だけの世界じゃ認めて貰えなかったみたいねぇ」
でしょうね、神も人も男と女が居てこそ栄える物です。
「まあ、私が不合格なのはいいとしても…他の2神はまだしもトゥグアちゃんの下に付くのだけは嫌なのよね」
その気持ちは判らなくもないですね…私もアルラの下に付くぐらいなら死を選びます。
「という訳で…トゥグアちゃんにだけは合格させない様に妨害しちゃう事にしました」
ファッ!?
そんな理由で私の世界に踏み入ったんですか貴女は!?
「あ、心配しなくても無闇に人間を死なせたりはしないからね?個神的な嫌がらせで死んじゃったら浮かばれないでしょうし」
それ以前に下手したら死ぬ様な真似をしなきゃいいだけでしょう!
「それそれとして…私の最愛の眷属が作ったモンスター、貴女の自慢の眷属と使途だけで倒せるかしらね?」
アルラの眷属って…確か上位神ダゴン様と水の女神ハイドラとの間に生まれた1人娘でしたね。
4女神の初の眷属のお披露目で出てきた時のハイドラの驚いた顔は未だに忘れられないわ。
「あら、もう時間ね…それじゃ頑張ってねー」
おのれアルラ…まさか目的が私怨だったとは思いませんでしたよ。
ですが現状キュアさん達に伝える手段はありませんね…サーグァには年1でしか連絡出来ないし。
まあ伝えてどうにかなる物ではないんですけれど。
何にせよ私に出来る事は無事を祈る事しか…せめてもう少し信者が増えてくれれば神託を出せるんですけど。
あ、でも信者が増える=キュアさん考案のあの呪文が…でも善意の行動ですし…いやでもアレはちょっと…
うん、ここはサーグァに任せましょう。
あの子ならきっと良い解決方法を見つけてくれるでしょうから…丸投げ?いいえ、これも眷属の試練です。
本当に…期待してますからねサーグァ!
女神姉妹、まさかのすれ違い。




