懐かしさを感じました
今回は短め
ナクアちゃんが確実にあたしよりも強くなった翌日……
あたしの屋台はコカちゃんとクティに出して貰い、ナクアちゃんとライコに空手を教える事に……
いや、ナクアちゃんは魔拳を使える様になってしまったので空手は役に立つだろうからいいのですが……ライコは何故?
「ウギッ!」
「何か面白そうだから、だって!」
まあ空手は覚えて損をする物ではありませんからね……それにライコは電流が使えるからあたしの雷みたいな攻撃も可能でしょうし。
これでライコは料理と空手であたしの弟子になった、という事でいいんでしょうか?
……初めての空手の弟子が猿というのは複雑な心境ですけど。
ナクアちゃんは将来的に義妹という扱いだから弟子とは違いますし……その内イブにも空手を教えてやりましょうかね?
まあそれは追々考えましょう。
「まず覚えるべきは正拳突きという、空手の基本となる技です……拳を突く前は指を上にしながら握って腕を引いて、打つ時は指を下に、反対の腕を背中で引きながら、肩と水平になる様に、かつ伸ばし切る様に突くのです」
「んー……ちょっと難しい」
「ウギィ……」
まあ、口で説明するだけじゃ解りませんよね……あたしもそうでしたし。
ここで用意するのは丸太に藁を巻いた的、藁はナクアちゃんの肩に合わせて拳が丁度当たる様に巻いてあります。
勿論、あたしとライコの分も用意しましたよ。
「この正拳突きを1日1000発……は時間的に難しいので、最初は左右100発ずつから始めましょう……ちゃんと打てる様になるまであたしも一緒にやりますよ」
「はーい!」
「ウギィッ!」
良い返事です。
「6……7……8……9……」
うん、こうやって鍛錬をしていると昔を思い出します……
たまにはこうやって基本を振り返らないと、強くなれた所で全体に隙が生まれてしまいますからね。
ナクアちゃんが空手を教えて欲しいと言ったのは驚きましたが、いい切っ掛けになりました。
「97……98……99…………ひゃく!」
「終わりましたか……では少し休憩しましょう」
ふむ……ナクアちゃんもライコも、筋が良いですね。
突きが藁の中心を捕らえて打っているのがよく解ります。
この基本は毎日続けるのが大事ですから、根気よく頑張りましょう。
「折角だし足技も教えておきましょう……基本は上段蹴りと中段蹴りの2つです」
蹴りはどちらも蹴る方の足の力を抜いて、腰の回転で鞭を振る様に打つのが大事なポイントです。
「上段蹴りは自分の顔、中段蹴りは腰の高さに届く様に狙うといいでしょう……此方は2つ合わせて100発、やってみて下さい」
「はーい!」
「ウギッ!」
流石に蹴り用の的は用意が出来なかったのは許して下さい……
サーグァ様が満腹になるまで、なんて言わなければ作れたんですよ。
だって丸太は1本で20ハウトもするんですから。
「終わりましたね……では今教えた準備運動を朝と夕方に、毎日続けるのですよ」
「キュアお姉ちゃん……これ、準備運動だったの?」
「ウギィ……」
「勿論、空手の基本というのは本当ですよ」
最初はとにかくこの基本を繰り返す事から始まります。
とはいえ何かモチベーションが上がる物がないとキツいのは確かですね……あたしにも覚えがあります。
おや、ロウが水晶集めから戻って来ましたね……丁度良かった。
「ロウ、ちょっと氷の壁を出してくれませんか?」
「え……まあいいけど」
トウカの水壁を氷らせて作られた氷の壁……やたらと硬いのですが、ナクアちゃんのやる気を引き出すのにはうってつけです。
「ナクアちゃん、この氷に魔拳で正拳突きを打ってみて下さい……闇と炎のどちらでも構いませんよ」
「う、うん!」
さて、ナクアちゃんが選んだのは闇……気の方ですか。
「えーいっ!」
ふむ、ギィンっと響くいい正拳突きでしたが破壊は出来なかった様です。
初めてで出せる音じゃない、というツッコミは受け付けませんよ。
「むー……壊れない」
「初めてにしては良い突きでしたがね……」
さて、ナクアちゃんが気をつかったならあたしも気……雷で挑みます。
「スゥ……セイ!」
よし、音はガキィンと……そのままピシピシとひび割れて崩れましたか。
良かった……アプさんに勝てた今なら行けるんじゃないかと踏んで試しましたが、上手くいきました。
「おおー……キュアお姉ちゃん、凄い!」
「ウギィ!」
「鍛えれば魔拳でなくても破壊出来る様になりますよ」
まあ、魔拳を使わずこの氷の壁を物理攻撃で破壊出来る人なんて……あたしには師範ぐらいしか思い付きませんけどね。
もしかしたらアプさんやラスカさんならばいけるかもしれませんが……いずれラスカさんにもリベンジを挑みたいのですが、戦いに行く理由が思い付きませんので暫くはお預けです。
「解った、ナクア頑張る!」
「ウギィッ!」
よし、ナクアちゃんのモチベーションもこれで上がりました。
ついでにナクアちゃんが驕らない様にあたしの方が強いと思わせる事にも成功しましたし、暫くは大丈夫……の筈。
後は鍛錬の後の甘い物で調整しましょう。
「キュアの奴……どこまで強くなれば気が済むんだろうな?」
「ミャア……」
3日後……何やらフサフサな毛皮を着て、猿の尻尾の様な物が生えたナクアちゃんがやたらと喜んでいますが一体?
「ライコちゃんと融合できたー!」
あ、ナクアちゃんとライコが仲良くなれたんですか……
確かに同じ鍛錬に勤しみ、同じ釜の飯を食べる事で芽生える友情があるのは事実です。
ましてやライコは力比べをしたがる性格だし……あたしもそれでなつかれた訳ですから。
一度なつけば素直で良い子なんですけどね。
「ナクアちゃんを見てたら思い出してしまいましたが……日本に居るあたしの友達は元気にしているんでしょうか?」
「え、日本にキュアの友達って……居たのか?」
失礼な……学校ではボッチでも道場には居ましたよ!
言ったのがロウじゃなかったらアバラの5~6本は折ってましたよ!
「同じ道場に通っていた1こ下の女の子と、2つ上の女の子と仲良くしてましたよ!というかこれ前にも言った筈なんですけど!」
「ああ、スマン……俺は会った事がなかったから記憶してなかった」
それはまあ、学校が違うせいで道場でしか会えなかったから仕方ありませんね……
遊びに行こうにもあたしは携帯もスマホも持っていませんでしたから連絡しようがなかったし……ネットは基本的に漫画喫茶で使っていましたよ。
そういえば下の女の子は稽古中にやたらとあたしに突っ掛かって来てましたけど、今思えばライバル視してたのでしょうね……
肝心の実力は残念でしたけどあのやる気は見習うべき物がありました。
上の女の子は趣味が腐っていましたが悪い人ではありませんでしたね。
因みにあたしの某神話の知識はその友達の影響です。
この世界に転生した時点でもう2人に会う事は不可能ですが……元気に過ごしてくれているのを願ってますよ。
「……よく考えたら変身した後にライコと同化すれば電流が使える様になったんじゃないか?」
「それは言ったらいけませんよ」




