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ある意味親子と言える……かもしれない

サーグァ様を満腹にさせて早5日……屋台を出していたらようやくロウとナクアちゃんが合流しましたよ。


無事だと聞いてはいましたが中々来なくて心配だったけど、これでようやく元通りです。


「ほれザトー、出てこい」


「……不覚、でも、指輪の中、意外と快適」


「あの指輪の中って快適なんですか?」


「ウギッ!」


「サンショクヒルネニオヤツツキダカラナ……ソレニゼンシンまっさーじモアル」


食事やオヤツが出るのにビックリですが追求は止めておきます。


あたしは中に入れませんし。


その後はロウがイケボスライムと契約して、此方の経緯とロウ達の経緯を聞いて……


「後1回、命令出来るんなら……それで、ちゃんとした契約……出来ない……かな?」


「……翡翠さん、出来るのか?」


「出来なくはないけど、流石の私もその発想はなかったよ」


どうやら出来る様ですね……


何にせよ地の女神の企みは潰せましたから……急いでする必要はないですよね?


「断る、そんな事したら、童貞、感染(うつ)る」


「いやどうやったって感染(うつ)らねーよ!」


「なら今から卒業を……」


「しないぞ?」


残念……とはいえ初めては2人きりがいいですからね。


「ねぇキュアお姉ちゃん、どーてーってなぁに?ロウお兄ちゃんは、ナクアにはまだ早いって教えてくれなかったの!」


「……ナクアちゃんが知るのは5年程早い物です」


まだ子供のナクアちゃんに言える訳がありません!


うん、今回は流石にあたしが軽率過ぎましたね……


今後は控えます。


「むー、ロウお兄ちゃんと同じ事言ってる……スパウンちゃんは知ってる?」


「知ってはいるが教える事は出来ん……」


「ナクア、ザトーの事は忘れてたのにそのスライムの事は覚えてたのか?」


「うん!スパウンちゃんは、ナクアといっぱい遊んでくれたんだよ!」


ほほう……それならイケボスライムはナクアちゃんの遊び相手にしとけば安全ですね。


「スパウン……ナクアは、ザトーの事、忘れてた……なのに、何故?」


「いや我に聞かれても……というか怖いからその血の涙を止めろ!」


血の涙ってリアルに流れる物だったんですね……


実際に見たら確かに怖いです。


「ナクアはやはりザトーの事を覚えていなかったのですわね?」


「ああ、ザトーの事はスッパリと忘れてたな……それにクティの事も」


「あ、オマンジュウのお姉ちゃん!」


「わたくしの名前はクティですわよ、覚えておいて下さいまし」


ああ、オマンジュウのお姉ちゃんと記憶していたから本名が解らなかったんですね……


というか、ナクアちゃんがクティの事を呼んだ瞬間にザトーが血反吐を吐いて倒れましたが……まあ、放っておきましょう。





あたしの屋台は売り切れになったのでロウとナクアちゃん、何故かクティにイケボスライムと一緒に水晶集め……


ってナクアちゃんが一緒なのにトウカとリコッタはまだ屋台を出してるアプさんが預かっていますし。


「ザトーの件が片付いた時に新しい技能を覚えたみたいでな……見ておいた方がいいと思って」


成程……融合の時の様に確認が目的でしたか。


「ナクアには疎通と融合以外の技能は与えていなかった筈ですわよ?」


という事はクティも知らない、と……


まあ粘糸も後から覚えた技能ですからね……それに融合も幅が広くなりましたよ。


「手頃なコボルトが居るな……よしナクア、【変身】」


「はーい!」


変身……名前的に嫌な予感しかしませんね。


ナクアちゃんが光ったと思いきや背後からズシンと地響き、振り返れば……やはりいつぞやの大蜘蛛!?


光ってたからか変化する光景を見なくて済んだのは幸いでした。


……って動く気配がありませんね?


「俺も初めて使ったから良く解らん……指輪で効果を調べたけど詳しい説明がなかったし」


疎通の時は詳しい効果も解ったのに……


まあ、だからこその確認なんでしょうけど。


「まさか……1番戦いに向いていなかったナクアが、わたくしの想像を越えた成長を?」


「ナクアまで強くなられたら我の立場がないのだが……」


クティですら想定していなかった成長……そう考えるとナクアちゃんの伸び代って凄まじい物があるのでは?


おや、大蜘蛛の身体にヒビが……そのまま砕けた?


ってナクアちゃんは無事なんですか!


「ナクア、ぱわーあーっぷ!」


ショートヘアーからセミロングに伸びた髪、身長も20センチ程伸びて、胸がクティよりも大きくなって、仁王立ちで現れたぁ!?


着ている服もメイド服に変わって全体的に黒を強調しつつ白いフリフリが付いていて、スカートには蜘蛛の巢みたいな刺繍を施したゴスロリ衣装?


背中には蜘蛛の足みたいな物が8本……その衣装だと首輪もちょっとしたオシャレになっています。


「ロウお兄ちゃん、この格好どう?可愛い?」


「「「「カワイイ(カワイイ)」」」」


全員の意見が一致した貴重な瞬間でした。


見た目は大幅に変わりましたが中身は全く変わっていませんね……安心しましたよ。


「ってあれ?ナクアの技能が変わってる……しかも名称以外がサッパリ解らん」


技能が変わる……ってそんな事があるのですか?


まあ1から確認するしかありませんね。





「よしナクア、【鋼糸】」


ほう、粘糸は掌から出ていましたが鋼糸は背中の蜘蛛の足から出るんですね。


ってコボルトを縛ったと思いきや一気に引いて……輪切りになったぁ!?


ちょっと、えげつなさが増していませんか!


「ナクアちゃん、ちょっとその糸を触ってもいいですか?」


「うん、いいよー!」


どれどれ……成程、糸は粘りがなくてかなりの硬度があります。


触った感じだとワイヤーとか、釣り糸に近い気がしますね。


確かにこれなら武器にもなりますか……




「次は……ナクア、【同化】」


「はーい!」


「おわぁっ!?」


おや、先程の糸がイケボスライムを掴んで……背中の蜘蛛の足に捕まった?


「ふむふむ……そーだったんだ」


ナクアちゃん……一体何を?


「どーてー、性行為を行った事がない男性の」


「ストーップ!それは声に出してはいけません!?」


これ、何がどうなっているのですか!?


「1回使ったからか効果が頭に入って来たな……つまり同化は背中の蜘蛛の足で捕まえた相手の技能が使えたり、知識を見る技能って事か?」


「そーみたい……でもスパウンちゃんはスライムだから、技能は種族的に無理かな?」


つまりあの魔法を消す魔法は技能ではないと……


「……ねぇキュアお姉ちゃん、クティお姉ちゃん、ちょっとだけナクアと同化して欲しいんだけど、いい?」


「それは構いませんが……」


「わたくしも構いませんわよ」


まあナクアちゃんなら悪用はしないでしょうし、魔法は使えないならあたしやクティの技能でナクアちゃんにも使えそうな物はないですからね。


ってこの蜘蛛の足、やけに力強いですね!


「んー……うん、覚えたー!」


ふぅ、解放されましたか。


って同時にナクアちゃんが元に戻りましたね?


「成程な、どうやらあの変身は1日に3分しか出来ないらしい……技能も元に戻ったぞ」


何処の光の巨人ですか……ナクアちゃん、岩に向かって何を?




「んー……えい!」


……………………………は?


ナクアちゃんの右拳に黒い気が集まって……まさか、魔拳!?


「あれは……闇属性、ですわね」


しかも非力なナクアちゃんの1撃で岩が砕けていますし、威力も申し分ありません……


「……あたし、最初の属性を拳に宿すのに3日は掛かったのですが?」


「……わたくしもそれぐらいでしたわよ」


「次は……こっち!」


今度は左拳に炎が……こちらは魔力が集まっていますね。


1撃で地面が焦げてるし此方も威力が凄まじいです。


「あたし、2つ目と3つ目の属性は7日程掛かったのですが?」


「わたくしは2つ目が6日で、3つ目は10日ぐらいでしたわ」


「……ナクアちゃん、僅か1日でアレですよね?しかもあたしは左拳にしか発動しないのに対して両拳」


「スパウン所か、わたくし達の立場すらありませんわね……因みにわたくしは右拳にしか発動しませんわ」


しかしこうして見ると同化……恐ろしい技能ですね。


その気になれば世界征服も容易でしょうが……ナクアちゃんが良い子で本当に良かった。


当のナクアちゃんは何やら不機嫌ですが。


「むー……ライコちゃんと仲良くしたかったのに、キュアお姉ちゃんみたいにビリビリしない!」


あー……ライコと仲良くしたくて、あたしの雷を使いたかったんですね。


あたしもクティも、アッサリ魔拳を習得されたのはショックですが理由が可愛いのでよしとしましょう。




「そういやキュアの鋼は魔力と気を混ぜて出すんだよな?」


「確かにそうですが……」


「なら……こうかな?」


おっと、闇と炎を同時に出してそれを合わせて……って難易度高そうな事を平然と実行しないで!


「気と魔力を同時に操るのも充分に難易度が高いですわよ?デュロック様は気しか使えませんし、わたくしも魔力しか使えませんわ」


「まあ、狂信者(キュア)だから出来たんだろうけどな……何故かナクアも同じ事してるが」


何か気になる事を言っておりますがそれはさておき、闇と炎は消えて何やら微かな光が両手を覆ってますが……妙な耳鳴りがしますね?


って周辺を彷徨いていたゴブリンやコボルトが耳を抑えながら悶えて、次々と水晶に!?


「これは……音波攻撃か?」


「成程……ナクアの3つ目は音属性ですわね」


つまりナクアちゃんの属性は闇、炎、音……音属性とか初めて聞きましたよ。


「……あたしの光とナクアちゃんの炎って交換出来ませんかね?」


「……わたくしの毒とナクアの音って交換出来ないでしょうか?」


「お前等、本当に良く似てるよな……」





夜……ロウがクティに呼ばれて郊外に行ったので後を着けています。


またロウを殺そうというならばあたしが止めなければ……とはいえクティに殺気はないしそんな雰囲気でもありませんね。


「……で、用って何だ?」


「ロウさんにだけはお話しておきますわ……昼間のナクアの姿と技能、あれはわたくしが最初に造ろうとしたアトラ・ク・ナクアそのものでした」


あの姿のナクアちゃんが……クティが造ろうとしていた本来のアトラク=ナクア?


「ですがわたくしの力ではそれを生み出す事は出来ませんでした、そこで思い付いたのが人と蜘蛛の役割を別け必要に応じて融合するモンスター、ロウさんもよく知るアトラとナクアですわ……最も融合した姿はわたくしの理想とは違いましたけれど」


成程……人としての頭脳と、蜘蛛の力を1体ではなく2人に別ける事で安定させたのですか。


「はっきりと申し上げますがあの姿のナクアは、アトラと融合した本来の姿よりも強いでしょう……きっとロウさんと出会った事がナクアの成長に繋がったのですわね」


「えっと……この場合はどういたしまして、でいいのか?」


それは何かが違う気がしますが、後を着けたのがバレるから黙っておきます。


「……ですが貴方は、ナクアのあの力をどうお使いになるつもりですの?」


それを聞き出すのがクティの目的だったんですね。


って、あの威圧感が……返事次第でロウを殺すつもりですか!?


「まあ……たまに水晶集めるのに使うぐらいだな」


「…………はぁ?」


何で素っ頓狂な声を出してるんですかクティ……気持ちは解りますけども。


あの姿のナクアちゃんが水晶集めってオーバーキルにも程がありますよ。


「俺は別に、ナクアが強いからって理由で契約した訳じゃないからな……俺にとってナクアはキュアと同じぐらい大切にしたい存在だから傍に居て欲しい、それだけだ」


ロウ……ナチュラルにあたしを熱くさせるのは止めてくれませんかね?


いや、凄く嬉しいんですけども。


「まさか……あれだけの力を手に入れておきながら、何の野心もないんですの?」


「やっぱり親子だな、さっき翡翠さんを通じてハイドラ様にも同じ事を聞かれたぞ……俺はキュアとナクアが傍に居ればそれで満足だ、それ以上は望まないよ」


あ、もう心臓が限界です……鼻血が出そうです。


ってあの威圧感が消えた?


「……どの道キュアさんと引き分けた時点でわたくしの負け、アルラ様の計画も潰された以上ロウさんを殺しはしませんわ」


「そうか……それは助かった」


「ロウさん……ナクアは非常にヤンチャな娘ですが、宜しくお願い致します」


「……絶対に幸せにすると約束するよ」


終わってみれば只の結婚の挨拶でしたね……


まあ無事に終わったんなら何よりです。


さて、気付かれる前に戻って寝ますか。

「キュアお姉ちゃん、ナクアにカラテっていうの教えて!」


「空手は技能扱いじゃなかったんですね……まあいいですよ」

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