表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
111/122

宿敵と書いてとも、と呼び……たくはない

ptブクマありがとうございます

ロウ達が各地に飛ばされて……って時間なんて気にしてる場合じゃないですよ!


何せ今はクティと一騎討ちの真っ最中ですから!


リーアさんと特訓したお陰かクティの攻撃は避けられますがこっちの攻撃も全然当たらない!


拳は避けられる、肘や膝は距離を開けられる、蹴りは蹴りで落とされる、破れかぶれの頭突きは避けられた挙げ句に転倒……といった具合に見事な膠着状態ですよ。


まあ逆もしかりなのですが。


「何なんですの、まるでわたくしの動きを知っているかの様に……さてはリーアの仕業ですわね?」


「そういうクティもあたしの動きを随分と研究なさった様ですね……大方アトラさんの報告からの推測か、ザトーとかいうシスコン忍者の仕業でしょうか?」


「……」


「……」


え、図星なんですか?


あたしも人の事は言えませんが……まあいいです、これに関してはお互い様みたいですし。





「ふぅ……こうなると打ち合いでは埒が明きませんわね、それならば」


クティの右拳から魔力……そこに風……あ、成程。


「まあ、それしかありませんね……」


ぶっちゃけ持久戦になるとあたしが不利ですし……本当に体力は並ですから。


この勝負、勝敗は左の3発……魔拳に全てを託します。


先ずは1番威力の低い……光弾(ホーリーライト)に出来る限りの魔力を込めて、握って……よし!


「……【風】!」


「……【光】!」


……風と光が相殺、お互いただのパンチになりましたか。


奥の手の為の魔力は残したとはいえそれなりに込めた筈なのに相殺……ん?


地の女神の眷属であるクティの魔力を、あたしの平均以下の魔力で相殺出来た?


もしかしてあたしの知力が急上昇……はありえませんね。


あ、もしかして?


「クティ、貴女実は勉強が苦手だったりしますか?」


「……キュアさんにだけはバレたくありませんでしたわ」


やっぱりですか……こうやって打ち合って解りましたが、同じ眷属とはいえ現状は普通の人間であるサーグァ様やセバスチャンさんに比べても高いとは言えない魔力でしたからね。


補正を貰った上で非戦闘職より低い魔力なあたしも大概ですが、そこはトゥグア様への信仰心でカバーします。


因みに翡翠さんは人間の姿を維持したり、幻獣を呼び出したりするのに消費してるから魔法の類は一切使えないそうです。


まあそういった事は契約した幻獣がやってくれるみたいですから困ってはいなさそうですが。




さて、魔力はほぼ互角……ならば次は気で!


「【毒】!」


「【雷】!」


ぐっ……読み違えましたか!


この雷は水に対して使いたかったのですが……しかし今更止める事は出来ません!


「まさか、デュロック様と同等の雷を使うとは思いませんでしたわ」


「クティの毒は最後の切り札だと思っていたんですけどね」


つまりクティにとっては水が最も威力の高い魔拳……それにあたしの使う属性を知らなかった?


確かに収得したのは修行が終わる頃で、しかも滅多に使っていませんでしたが……雷はアチコチで連発してましたけど。


って何だか頭がクラクラする様な?


「っく……身体中がビリビリしますわ」


「あー……この頭痛と目眩は毒の効果ですか」


しかし今は治療している暇がありませんね。


それにある程度の魔力は手甲に蓄えてありますが相手はクティ……全てを攻撃に回さなくては絶対に勝てません。


「どのみちこれが最後の1発……勝敗はこの鋼に全てを託します」


「キュアさんには本当に驚かされますわね……魔力と気を同時に使うのもですが鋼属性を使うとは」


そう言われても出来たんだから仕方ありません。


とはいえこの目眩のせいか維持が大変なので、さっさと撃ちたいから準備して下さいよ!


……だからってあたしの背丈程の水の珠を拳に宿すのはどうかと思うんですが?


あ、圧縮して小さくなった……威力も圧も凄そうですね、切り札にするのも納得です。


まあ、ここまで来たらあたしの全力を鍛練通りにぶつけるのみ!


「【水】!」


「【鋼】!」


ぬぁぁやっぱり水圧のせいで正拳突きの速度が殺された!


ですが鋼の威力は簡単には落ちな……クティの水とあたしの鋼が解けた!?


クティもそれに気付いたのか驚いてますね。


そういえばアプさん、あたしの鋼には耐久や耐性を無視する効果があるとか言ってましたね……恐らくクティの水にも同様の効果があったのでしょう。


ですがこのまま引き分けでは終われません!


とはいえ再び魔拳を発動する余力はない、となれば……


残った力を気力を全てこの足に!






いつの間にか気を失って……何やら天井が見えますね。


「……気が付いたか」


「バイコ……って事はここ、休憩所ですか」


ぐおお……起き上がろうとしても力が入らずしかも身体中が悲鳴を挙げてる!


「無理はなさらない方が宜しいですわよ……わたくしの毒を受けた状態であんなに動いていたのですから」


クティも居ましたか……って何であたしの隣で寝ているのですか?


「それで、勝敗はどうなったのですか?」


「慌てるな、今から見せてやる」


あ、天井がスクリーンみたいになってあたしとクティの戦いが写ってる。


そういえばバイコは光を使うとか言ってましたっけ……映像も光だからこうやって見せる事が出来るのですね。


見れば丁度あたしの鋼とクティの水がぶつかり合った所でした。


確かあの瞬間は引き分けで終わりたくないと思って……あたしが最も得意な回し蹴りに全力を注いで、よく見たらクティも回し蹴りのモーション?


そしてお互いの蹴りが、お互いのこめかみ……テンプルにクリーンヒットして、同時にダウン?


そのままスコルがあたしとクティを背負って……成程。


「引き分けでだけは終わりたくないと思った挙句の果てが引き分け、ですか……」


「口惜しいですわ……」


久しぶりに敗北以外の結果となりましたね……負けてはいませんが勝ってもいない。


日本に居た頃、引き分けは負けと一緒だと言う奴は居ましたが……それに対する師範の一言は「試合の内容による」でしたっけ。


未だにその意味が解らないままですが……いつかは理解したいです。


「それで、クティの毒は何時になれば抜けるのですか?」


「毒は既に浄化した、今は身体が必死に治ろうとしている所で……少なくとも2日は安静にするんだな」


2日もこのままですか……


まあ、回復魔法を使おうにも今は杖を握る事すら出来そうにないですし……仕方ありませんね。


ここは素直に従っておきましょう。


「それにお嬢様も電流を浴びた状態で無茶をしたな……右足と右腕の筋肉が焼け切れる寸前だったぞ、ある程度の処置はしたがキュアと同様2日は大人しくした方がいい」


つまり……2日間はずっとこのまま、クティが隣に居るのが確定なんですね。


せめて寝る時はライコにでも間に入って貰いましょう。


「まあいいですわ、わたくしの目的は果たしましたし後は結果を待つだけですから……引き分けなのは悔しいですが」


それは同感ですが現状だと再戦も出来ませんからね……


といっても、もう1度戦うならあたしがトゥグア様かトゥール様の眷属にならねば不可能ですが。


もしくはヨグソ様にでもお供えしながらお願いしてみれば可能かも……って私情で最高神様に頼む訳には行きませんね。


「……それはそうとキュアさん、何故あの時に解毒をしませんでしたの?神子(プリースト)であれば簡単に出来た筈ですわよ?」


「そういうクティも簡単な治療なら出来た筈ですが?少なくとも雷を受けた直後にしていればそこまで悪化はしてなかった筈ですよ?」


単純な回復魔法なら従者でも使えるとセバスチャンさんが言ってましたからね。


同じ女神の眷属であるクティなら確実に使えた筈です。


「……本当に、わたくしとキュアさんは似た者同士ですわね」


「……認めたくはありませんけど否定が出来ませんね」


「所で……わたくしもキュアさんも動けないのですが、まさか2日間このまま飲まず食わずで寝てますの?」


ん?


ってああ、クティは知らないんでしたね。


「安心して下さい、あたしのレシピのいくつかはライコに教えてあげましたから」


料理に関してはコカちゃん並に優秀な猿ですからね……味もバッチリです。


「ライコってあの喧嘩っ早い猿……わたくしには懐かなかった癖に何でキュアさんの言う事は聞いておりますの?」


そういえば翡翠さんも気性が荒いとか言ってましたっけ?


あたしからすれば普通に良い子なんですけど。


「ちょっと電流の力比べをしたら懐かれましてね」


「ああ、キュアさんは雷を使えるから……納得ですわ」


それで納得されるのもアレですが……まあいいです。




因みにその日ライコが作ったのは野菜のみじん切りと粉末状にした干し肉をじっくりと炒めて、そこに水と米を加えて弱火で煮込み味噌で味を付けたおじやでした。


確かに美味しく作れてはいるんですが……


「食べ続ける内にセロリ……ではなくセローの臭いが鼻に来てキツいんですが?」


ライコ、あたしはセロリが苦手だと教えた筈なのに……何故入れたのですか?


「これ……タマネギが入ってますの?わたくしはタマネギが苦手だと知っている筈ですわよ!」


「ウギィ!」


「ライコ曰く、喧嘩両成敗……だそうだ」


ぐぬぬ……そう言われると反論は出来ませんね、喧嘩ではなくれっきとした勝負だったんですが。


せめてクティはタマネギが苦手だと覚えておきましょう。


「せめてキュアさんはセローが苦手だと覚えておきますわ」


「……やはりクティとだけは仲良くなんて出来ませんね!」


「……やはりキュアさんとだけは仲良く出来ませんわ!」


「ウギィ!?」


「いいから早く食って寝ろ、と言っているぞ」


はい、ちゃんと食べます。


だから全身に電流を流しながら近づくのは止めましょうね?


あたしもクティも今その状態でくっ付けれたら確実に死にますから!

「……所で2日間はお風呂も着替えも出来ないのでしょうか?」


「……でしょうね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ