鼻への刺激に泣かされました
ptブクマ、ありがとうございます
まさかの炭酸飲料を作った翌日……
流石にアマミズが足りるか不安だったので残念様を崇める神殿にアマミズの水か粉を貰いに来たのですが……因みにどっちでもカラメルに出来ますよ。
粉の方が時間が掛からないのであれば有難いなぁぐらいです。
尚、あたしはアマミズの絞り方を知らないのでデストさんにも来て貰いましたよ。
「司祭殿、リンゴの代わりにアマミズとレモンの汁を混ぜた物に一晩漬けたイチゴを包んでみましたが意外とイケますぞ!」
「此方は塩茹でしたジャガイモを潰して包んでみましたがこれも中々ですぞ!」
「それは素晴らしい!きっと女神様もお喜びになるでしょう、では今日……は流石に無理だから明日から売りましょう!」
一昨日教えたばかりなのにもう応用してるし……何というバイタリティー。
でもジャガイモのはちょっと食べてみたいですね。
「おやキュアさん……本日はどの様な要件で?」
「ちょっとアマミズが足りなくなったので仕入れに」
「そうでしたか、キュアさんならば何時でも無料で提供して良いと仰せつかっておりますので此方へどうぞ……デスト殿はちょっと採集を手伝って下さい」
あ、ならついでにあたしも絞り方を教えて貰いましょう。
割と使う機会がありますし、覚えて損はない筈です。
「アマミズはまず根を半分くらいまで抜いて、その場で水洗いするんだ……全部抜いたら次から生えなくなるから注意してくれ」
半分まで……って中々に難しいですね。
「そしたら空き瓶を用意して洗った部分をスパッと切る、固いから注意しろよ?そこから出るのがアマミズの水になる……因みに10本の根から採集してようやく1瓶溜まる」
思ったよりも採れないんですね……
最初に頂いた時に大変だったろうに、とか言ってたし予測はしていましたけど。
「採れたらアマミズを弦ごと、魔力を通した緑と一緒に埋めておく……こうすれば明日また採集が出来るからな」
日本だったら物凄く貴重になりそうですね……主に人件費で。
確かにこれは大変です、腰にきますし。
「因みに嬢ちゃんが惜し気もなく使っている状態にするにはこうやって集めたアマミズを、瓶3本……約3リットルが1リットルになるまで煮詰めなきゃならないんだぜ」
……今日からは感謝して使う事にします。
しかしこれは見れば見る程に甘草みたいですが、採れるのはほぼシロップ……
試しに舐めてみたら確かに青臭いし。
「そういえばこの弦は食べられるんですか?」
「いや、弦にも甘味はあるが固いんだよなぁ……何て言うか、ゴムを噛んでる様な感じでよ」
……そりゃ固いですね。
「というか試した事あったんですね?」
「姐さんと出会う前にな……家も金もなく、食い物もない時に飢えを凌ごうと思ったんだが」
固くて食べられなかった、と……
というか残念様、転生させるんならその辺り最低限は用意しましょうよ。
「まあそんな生活を5ヶ月ぐらい送って……身体は鍛えられたが姐さんに出会うのがもう少し遅かったら言葉すら忘れてる可能性があったな……ぶっちゃけ自分の名前すら忘れて思い出すのも時間が掛かったし」
改名したのは元の名前を忘れてしまっていたから、だったんですね……
しかもその理由が色々と酷い!
「それ、残念様を怨んでも文句は言われないと思いますが?」
あたしだったら再会した時にぶん殴りますよ?
本神は自分をクソザコとか言ってましたが仮にも女神だし当たるとは思えませんが。
「ツァトゥ様には地縛霊になりかけていたお袋を成仏させて貰った恩もあるからな、怨みはしねぇさ」
「……残念様の眷属になるのを受け入れたのもそれが理由なんですか?」
「聞いてたのか?まあ、借りって奴はちゃんと返さないとロクな人間になれないってのがお袋の口癖で、姐さんの教えだからな……それに所々抜けてるせいか放っておけないし」
母親の霊を成仏させてくれた恩と自分を生き返らせてくれた恩……転生時の処遇を考えても後1つ残っていますか。
というか残念様の残念っぷりはご存知だったんですね?
「その辺、嬢ちゃんは大変そうだよな……ロウから聞いたが女神4人から色々されてるらしいじゃねぇか」
「あー……あたしも他人事じゃなかったですね」
といっても眷属になってくれと言ってきたのはトゥール様だけですけど。
そういえばハイドラ様はロウをスカウトしているとか言ってましたが……ロウはどうするつもりなんですかね?
アマミズの水を集めてカラメルにして、コーラにして屋台で売り出したら思ったよりも早く売り切れてしまいました……
まあ1杯2ハウトで売ったから安さに釣られたのかもですけど。
大体3割の方は喉が痛ぇ!とか言っておりましたが中々に好評でしたね。
特に子供に人気がある様で、口の中でパチパチするのが面白いそうです。
「予想より早く売れちまったな……夕飯はちょいと変わった物でも作るか」
「それはいいのですが何を作るつもりですか?」
「ま、嬢ちゃんなら気に入るだろう物だな」
言われるがまま農地の側を流れる川まで来たのですが……何やら川底の泥を漁っていますね?
「ほれ、こいつを見てみな」
「これは……シジミ!?」
ムーでも結局見付からなかった貝がこんな所で採れるとは……
あ、見付かりはしたんですがそれはモンスターだったんでしたね。
アプさんが釣り上げた……確かキラースカロップとか呼ばれていた奴でしたがライコが一瞬で倒してくれました。
「こいつの泥を吐かせて味噌汁の具に、どうだ?」
「最高ではありませんか」
成程……この世界の水質は綺麗だから川魚やシジミは沢山居るのですね。
貝が採れるのは海だけとは限らない……いい勉強が出来ました。
「ん?上流で釣りをしてる奴が居ると思ったら……ナクアじゃねぇか」
あ、本当ですね……
ムーで釣りをして以来すっかりハマってしまった様で。
「お、割といいサイズの鮭を釣りやがったな……あの腹の膨らみ具合からして卵持ちか?」
「鮭の卵……よし、味噌漬けにしましょう!」
「あ、キュアお姉ちゃんにデストお兄ちゃん!こんなおっきいの釣れたよー!」
うん、活きが良い鮭ですね。
ってよく見たら鮭をもう2匹も釣ってるし!
「ねぇねぇ、このお魚さんはお刺身に出来る?」
「川魚の刺身は危険だと聞いた事があるんですが……」
「いや、出来なくはないぞ……ちょいと時間は掛かるが」
マジですかデストさん……?
「んじゃこれを持って帰るか……後嬢ちゃんはちょいと氷を買ってきてくれ、氷柱割りに使う様な奴を2枚ぐらい」
あたしが氷柱割りを知ってる前提ですか?
そりゃ知ってますしやった事もありますけど。
「おっと、刺身ならこいつも採っておくか」
ん?
何やら白いニンジンの様な物を抜いていますが……何ですかあれ?
アスラさんから氷を買って帰宅……ガリガ○君もどきのお礼だとかで半額にしてくれたのは有り難かったです。
「鮭を3枚におろして、皮を剥いで、骨を抜いたら背と腹に切り分けて……背側は氷で挟む」
氷で……そんな事したら冷凍焼けしませんかね?
「心配すんな、それよりこの鮭に短縮を頼む……大体3日ぐらいで」
ふむ……まあデストさんだし間違いはないでしょう。
「そして油の多い腹側は……酒で洗ってから塩漬けして、ハーブを刷り込んで、密閉できる金属の箱の中にに吊るして、リンゴの木のチップで燻すんだ」
あ、それなら解ります……いわゆるスモークサーモンですね。
確か煙で燻す事で寄生虫が死滅するから安全に食べられるとか……
それを油の乗った腹側だけで作るとは贅沢ですね。
「嬢ちゃんは塩漬けを頼む……短縮は大体1晩ぐらいでな」
「解りました」
おっと、終わったらシジミの泥抜きもしないと……それにイクラを味噌漬けにしなくては。
後はトウカに干物とピーニャにクックー肉、リコッタにグリン……今日は時間に余裕があって良かった。
そんなこんなで夕飯……鮭のお刺身2種、シジミの味噌汁、イクラの味噌漬け、姉さんの希望で唐揚げも作りましたよ。
それと鮭の皮をパリパリになる様に焼いて醤油で味付けした物も。
鮭の皮は大変美味しいですからね……捨てるなんて勿体ない事はしません。
「この氷に挟んだ鮭がシャリシャリ、トロリと……面白い食感ですね」
「そいつはルイベって言ってな、確か北海道で冬に食べられてる料理だ」
ルイベ……確かアイヌ語でしたっけ?
これは美味しいので作り方を覚えておきましょう。
「このスモークサーモンっていうのも美味しーよ!」
出来立ては初めてですが本当に美味しいですね……
次に作る時はタマネギの薄切りと一緒にサラダにしましょう。
「イクラの味噌漬け……本当に美味しいね」
「確かに、こいつは酒が進むねぇ」
あたしの好物ですからね、不味い訳がありません。
醤油漬けも美味しいですが、あれは下手すると塩辛くなり過ぎますからね……
それに少しでも加減を間違えたら醤油の味しかしなくなりますし、生のお酒も使うからナクアちゃんが食べれなくなってしまいます。
「シジミが美味ぇ……」
「鮭の皮も美味いぜ」
「ってデストさん、そのルイベに乗せてる……大根おろしみたいな物は何ですか?」
「こいつはホースラディッシュだ、名前を聞いた事ぐらいはないか?」
あー、確か西洋わさびとか言われてるハーブでしたっけ?
主にローストビーフの薬味として使われているとか……川辺でデストさんが採ってたのはそれだったんですね。
「ワサビの様な香りはないがこいつも薬味として優秀な奴だぜ?」
ふむ……あの香りがないならちょっと試してみますか。
ルイベに少しだけ乗せて1口……鼻が痛ぁい!?
「あー、嬢ちゃんとお嬢にナクアはこの刺激が苦手だったか」
よく見たらコカちゃんとナクアちゃんも鼻を押さえて悶えてました……
釣られて食べたのか翡翠さんとピーニャにトウカまで悶えてるし。
平気なのはデストさんと姉さん、アプさんだけですね。
「因みにホースラディッシュは川辺に雑草の如く生えてるからな、少し探せば幾らでも採れるぞ」
次から海辺の村に行く前に集めておきましょう。
お刺身の美味しさを広める際に役に立つでしょうし。
「これ食うとローストビーフも食いたくなるな……」
「なら明日の昼にでもどうだ?」




