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22話 謎の少年

 興奮しすぎてパニック状態になりかけていたキャシーを落ちつかせると、ルシアとアリシア姉さんが俺達を見て。


「瞳から魔力を放出するって、そんなに凄いことなんですか?」


「私も魔法についてはそこまで詳しくないから、よく解らないのよね……それより私、リベルに守られて本当に嬉しいわ……」


 首を傾げるルシアは普通の反応で、そんな疑問よりも俺が守ったことの方に全身を震わせて喜ぶアリシア姉さんはいつも通りだ。


 ルシアの質問に対して、キャシーがこくこくと何度も首を上下して。


「とてつもなく凄い。世界の常識を覆すほど……剣使いで例えるなら剣技が使える腕を生やすぐらい凄い」


 キャシーの例えが剣を扱うアリシア姉さんとルシアには分かりやすかったからか、唖然とした表情を俺達に向けていた。


 瞳から魔力を放出したということは、手以外から魔法による攻撃が可能ということで、攻撃の幅は格段に向上する。


 ザオウが俺の両手を常に警戒していたことから新たな攻撃方法が欲しいと考え、いい実験台が居たから試してみたけど、成功したのは何よりだった。


 キャシーが目を輝かせて俺に抱きつき、全身を摺り寄せながら。


「お兄さまはあたしの想像を超えてくる……あたしが暴走しかけた時にお兄さまだけが触れてくれた時も、今も理想のお兄さま……」


 前世の記憶が戻っていない時のことだけど、魔法を覚えたばかりのキャシーはかなりの頻度でパニックに陥っていた。


 普段はアリシア姉さんが落ち着かせていたけど、姉さんが居ない時は危険だとキャシーを皆が避けていて、俺だけが近づいて姉さんのように落ち着かせていたから、キャシーは俺に懐いていたっけ。


 俺がキャシーの背中を優しく撫でると、ほぅっと温かいキャシーの吐息が首にかかって。


「血の繋がりさえなければ……」


「大丈夫よキャシー、そんなの時間をかけていけばどうとでもなるわ!」


 キャシーがポツリと漏らした発言を、アリシア姉さんが肯定している。


「いえ、流石にそれは……なんでもないです」


 俺はキャシーに意識がいっていたからアリシア姉さんの顔を見ていないけど、ルシアの反応からアリシア姉さんは威圧したのだろう。


 俺は「私が変なのかな?」と言わんばかりに首を傾げ困惑しているルシアを見るけど、ルシアが正しいはずだ。


 ……ルシアが居なかったら、今日の夜にでもどうにかなっていたんじゃなだろうか?


 キャシーの倫理観が揺らぎ始めたのはかなりの危険信号だと考え、俺もルシアが居なければ流されるままになりそうだと考えている。


 それより、ルシアがアリシア姉さんに威圧されて怯んでいるのは何とかしておきたい。

 これが癖になると、実戦で自分より強い存在に威圧されたらすぐ怯みそうな気がする。


 依頼を受けながらルシアの鍛錬をするとして、騒ぎのせいで冷めてしまった朝食を再開していると。


「うぉっ!? マジで剣帝アリシアと賢者キャシーが居るぞ……マジでリベルのパーティに入ったのか、どういうことだよ……」


 受付の人から話を聞いたのか、ギルドマスターの青年ラッセが俺達の元にやって来て、アリシア姉さんとキャシーを見て露骨にドン引きしている。


 きっとラッセは「Aランク相応の地位がある剣帝アリシアと賢者キャシーがCランク冒険者になって、Bランク冒険者リベルのパーティに入りました」と受付の人に言われたのかもしれない。


 そんなの耳にしても半信半疑だったに違いないけど、実際に目にしたらドン引きするしかないように見える。 


「ちょっと、リベルより私とキャシーちゃんが上みたいな言い方をしてるけど、リベルの方が私達よりも凄いわ」


「その通り。お兄さまは私の知らない色々なことを教えてくれる……色々と、魔法以外も手取り足取り教えて欲しい……」


 唖然としていたラッセの顔が、アリシア姉さんとキャシーの発言を聞いたことで更に引きつって。


「な、なんていうか……噂通りの姉妹だな。リベルと聞いてまさかとは思ったが、君が本当にあのリベル・エストロウとは……色々と納得できた」


 あのリベルってどのリベルだ?


 二人が所属している剣帝協会と賢者教会ならともかく、そこまで関係ないだろう冒険者ギルドのギルドマスターでも知っているのは相当だろ。


 この国には剣帝協会の支部があるみたいだけど、そこから聞いたのだろうか?


 ギルドマスターのラッセは、俺を上位の冒険者にするよう推薦していると受付の人から聞いている。

 もしかしたら、ラッセは最初から俺が剣帝と賢者に期待されている男だと知っていたから、ランクを上げるよう推薦していたのかもしれない。


「あの、噂通りの姉妹って、どういう意味ですか?」


 ルシアがラッセに質問すると、ラッセは頷いて。


「ああ。剣帝アリシアは剣帝でも強さが有名で、最年少賢者キャシーは名称通り最年少だから有名なんだが……その二人がリベルという男を常に褒めているから、謎の少年リベルの噂は俺の耳にも入っている」


「謎の少年って……どういうことだよ?」


 色々と初耳だから、俺がラッセに聞くと。


「アリシアとキャシーは偉業を成して褒められた時に「もっと凄い人が居る」と常に言い、その時にリベルの名前を出すんだ。そんで調べる奴が出るも、エストロウ家の兄弟は大したことないって噂があって過大評価だと……悪いな、そういう噂なんだよ」


 会話中にアリシア姉さんとキャシーが一気に不機嫌になったから、ラッセが必死に謝っている。


 ギルドリーダーが慌てている状況に周囲が困惑しているけれど、相手が剣帝と賢者なのだから、慌てるのも仕方ないだろう。

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