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13話 姉妹との再会

 カーラから聞いていたこともあって、いきなり現れたキャシーに対して俺は驚かない。


 キャシーは頭を何度も俺の腹部に勢いよく擦りつけてくるから、俺はキャシーの頭を撫でて。


「キャシー、元気そうでなによりだ」


「お兄さまこそ元気そうでよかった。嬉しい」


 完全にひっついた様子のキャシーを眺めながら、ルシアが気を引き締めて。


「この子が妹のキャシーさんですか……覚悟はできました」


「俺が視界に居る間は大丈夫だ。俺と離れた時が、最も警戒すべき時だな」


 俺がルシアに指示を出して、ルシアは更に警戒するも……アリシア姉さんの姿がない。


 キャシーに聞こうと目線を下げると、キャシーは目を輝かせながら。


「お兄さま、少し会わない内にとてつもなく凛々しくなった……あたしのこと、嫌いになってない?」


 キャシーは俺の変化に不安になっているようだから、俺はキャシーの頭を撫でて。


「嫌いになるわけがないだろ? それより……アリシア姉さんはどうした?」


「よかった……姉さまはおかしくなった」


 そこまでか。


 数週間会わないだけで、アリシア姉さんはおかしくなってしまったというのか。   


 まさか……妹のキャシーも邪魔だと感じて、斬りかかったのかもしれない。


 流石にそれはありえないだろう……いや、でもなぁ。


 俺に抱きつくキャシーは全身を震えさせている……俺に会えたことが嬉しいのだろうけれど、アリシア姉さんに恐怖を感じているような気がする。


「まさかとは思うけど……アリシア姉さんは、キャシーに危害を加えようとしたのか?」


 そう聞いてみると、俺に抱きついたままでキャシーは首を左右に振う。

 

 そしてビクッと大きく震えたかと思えば、さっきキャシーがやって来た方角を指差して。


「くる」


 そう言って――キャシーがやって来た方向から、金髪のスタイルがいい美女、アリシア姉さんがゆっくりと現れて。


「ひぃぃっっ……」


 ルシアが声を漏らすのも無理はないだろう。

 俺だってビビっているからな。


「ようやく会えてお姉ちゃん嬉しいわ。探すのに時間がかかっちゃってゴメンね、お姉ちゃん必死になって探したのに会えなくて会えなくて寂しかったの。でも、いいこと思いついちゃったからそんな心配はもうしなくてよさそう……リベルの両脚を切断すれば、勝手に私の傍から離れなくなるでしょう?」


「……確かに、変だな」


 俺は動揺を必死に隠しながら呟く。

 内心ではルシアのように恐怖するしかない……アリシア姉さんは眼の光が一切なくて、自分の提案がナイスアイデアだとでも思っているのか、狂気の笑みを浮かべている。


 それよりも――俺に刃を向けて、危害を加える発言をしているアリシア姉さんは、確かに変だ。


「リベルと再会したらずっと考えていたことがあってね。私とリベルの部屋を用意して、そこにリベルはずっと住むの……私が衣食住を全て提供するからリベルは何もしなくていい、毛から体液の全てを提供してくれるだけでお姉ちゃんは嬉しいもの。お姉ちゃんはね、リベルの全てを愛せる自信があるわ」


「こ、ここまで危ない人だなんて、この人正気じゃないですよ!?」


 そうルシアが悲鳴のような叫び声を漏らすけど、俺だってビビっている。


 思わず腹部に抱き着いているキャシーを見ると、見上げていたから俺とキャシーの目が合って。


「今日の朝、私と姉さまは呪印の魔法を受けた……私は魔力で防げたけど、姉さんはその影響を受けている」


「呪印の魔法だって?」


 その説明を受けて、俺と数週間離れていたからアリシア姉さんが病んだという推測が間違っていたことに安堵しながら、俺はダンジョンでも使っていた探知の魔法を使う。


 魔力を外に広げることで、その魔力に感知したアリシア姉さんの魔力を確認する。

 確かに、アリシア姉さんは何らかの呪いを受けているようだな。


「あぁっ……リベルの魔力が私に触れたわ、今までにない快感ね!」


「お兄さまは本当に成長しててあたしは嬉しい……呪印を受けた姉さまが急にお兄さまの位置を特定したから、あたしは先回りしてやってきた」


 俺が状況を確認しているだけで、アリシア姉さんとキャシーが歓喜している。


 いきなり俺の位置が解っているかのように現れた理由は、キャシーの言うとおり呪印によるものなのだろう。


 それにしても、キャシーの飛行速度的にかなりの距離があったはずと推測できるんだけど、そんな遠くから気配が解ったのか? 


 恐らく感覚が強化されたからこそだろう……そういうことにしておこう。


「それより――その子からリベルのにおいがするんだけど、何なの?」


 ようやく言いたいことを言えて冷静になれたのか、アリシア姉さんがルシアを不満げに睨み、瞳に光が無いからかなり怖いな。


 今までの呪印を受けたアリシア姉さんの発言は想定外だったけど、ようやく想定していたことを話し始めて安堵できない。


 呪印の魔法を受けていなければ、もう少し鍛錬できていたのに……問題があるとすれば、アリシア姉さんが呪印の効果か普段よりも強くなっていることだろう。

 

 再会してからアリシア姉さんの攻撃をルシアが対処しなければならないと考えていたけど、いきなり出会って即やり合うことになるというのは、まったく想定していなかった。

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