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旧作(2009〜2018年完結) 「TOKIの世界書」 世界と宇宙を知る物語  作者: ごぼうかえる
最終部「変わり時…」世界を変える力
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変わり時…最終話漆の世界22

「やっぱり『男』が出てくるか……。二対一なのかい?」

神力を高めているプラズマにリョウは刀を栄次に振るいながら興奮ぎみに言葉を発した。


「……戦うか?それとも引き下がるか?」

プラズマはリョウを挑発した。


「……取引きしようか?」

リョウはにやりと笑う。


「取引き?」


「マナちゃんが世界改変にはマイが必要だと言っていた。しかし、マイは時間が止まっている。僕に勝ったら連れてきてあげよう。その先のイザナギ戦も楽になるんじゃないかな?ふふふっ……そっちのが楽しい」


リョウは気分の高揚が止まらないようだ。こういう交渉で逆行に戦うのも「人間の男」によくある感情だ。プライド、強欲、自信で判断能力が鈍っている。


先程は交渉力と感情の入らないタイプの男を持ってきていた。

色々な「歴史的な男性のタイプ」をリョウは引き出している。


「……約束は守れよ。じゃあ、俺達が負けたら?」

「マナを殺す」

プラズマの言葉にリョウは即答した。

目的のためなら手段を選ばない故に容赦のない言葉だ。


「……」

プラズマは冷や汗をかきながらマナを一瞥した。


「……」

マナは心配そうにこちらを見ている。


「プラズマ……勝てばいい」

迷うプラズマにふと栄次がつぶやいた。


「勝てばいいのだ。この時代遅れのデータを持つ哀れな男に負けてはいけない」

「……栄次……」

即答できないプラズマに栄次が代わりに答えた。


「決まりだね」

「俺達が負けたら……」

「考えるな。負けなければいいのだ」

栄次がプラズマを制し、刀を構えて神力を上げた。


「俺は負けない」

栄次は自分に言い聞かせていたようだ。


それを知ったプラズマは

「……俺はサポートする!」

と意気込み、弓を構えた。


戦闘が始まった。


気合いを入れた栄次は先程と比べられないほど動きが速くなった。

集中を高めているおかげかリョウの攻撃に振り遅れていない。


「……とりあえずリョウの時間操作をできなくさせないと」

プラズマは栄次の動きを確認しながら四本の弓を放った。しかし、弓はリョウに当たることなく地面に刺さった。


「ちっ……。……ん?」

プラズマは刺さった矢を見て止まった。


……一本ないぞ……。


四本放った矢のうち、一本がどこにも刺さっていない。


「もしかして……」

栄次は突然現れるリョウとの攻防戦をしている。今、栄次は攻撃できない。リョウがどこから急に現れるかわからないからだ。


……俺が実験するしかない!


プラズマはあることに気がついた。


「栄次!一回さがれ!」

「……!?」

リョウが再び消え、現れたタイミングでプラズマは叫んだ。栄次は咄嗟の判断で一歩ほど後ろに退いた。リョウがまた現れ、栄次めがけて刀を振るう。剣先が届いていなかったがかわす余裕がなかった栄次は頬を斬られた。


「チャンスだ!」

プラズマは栄次の反射の受け身が途切れたところでリョウに向かって走り出した。


栄次が野生の勘で振り回す刀は反射なためプラズマが近づくには危ない。


……このタイミングでリョウにっ……。


リョウが時間操作で消える寸前にプラズマはリョウの胴体を掴んだ。


「……っ」

時間が歪み、プラズマはリョウと共に吸い込まれて消えた。


……こいつのまわりが時間操作で消えている。俺の弓はこいつの時間操作の範囲に入ったから消えた。

おそらくどっかの過去か未来に落ちてる。


……栄次がリョウの時間操作の範囲にいて消えないのはリョウの刀のツバから先の刃が時間操作の範囲外だからだ!


現にこいつは刀で動く範囲を決めている。懐に入れば……


時間操作が戻りリョウとプラズマは突然栄次の前に出現した。リョウは刀の柄でプラズマの頭を殴ると蹴りあげて遠くに飛ばした。


「うっ……」

プラズマは地面に叩きつけられた。

それを見た栄次は目を見開いた後、目を細める。

プラズマの行為の意味がわかったようだ。


「……」

栄次は刀を構えてリョウにぶつかって行った。


……そうだ。栄次!もう一度……リョウに時間操作をさせろ!


プラズマは血が滴る頭を押さえながら栄次とリョウの戦いを見ていた。


刀がぶつかる音が響くがツバぜり合いをしていない。お互い受け流している。リョウは先程のプラズマの行動から時間操作を止めてしまった。栄次との戦闘に集中している。集中しなければ普通に力負けするからだ。それだけ栄次は強い。


集中しているのを見計らい、プラズマは弓を放った。リョウは突然飛んできた矢に驚き思わず時間操作で逃げてしまった。


「よし!」

プラズマは決死の飛び込みでリョウに食らいつく。再び時間操作から栄次の前に現れる。


「栄次ィ!!」


プラズマが叫んだ。栄次はすぐに動いた。リョウはプラズマに拘束され一瞬、動けなかった。

栄次は容赦のない袈裟斬りを刀を返してリョウに打ち付けた。

峰打ちである。


「がっ!!」

あまりの衝撃にリョウは膝をついて倒れた。


「俺達の勝ちだな。気絶されては困る」

栄次が気を失ったリョウを強引に揺すって起こす。


「うう……負けたか……。仕方がない。約束は約束だ……。男に二言はないよ」

リョウは潔く負けを認めた。


「男に二言はないねー。あっけなく負けを認めたな。お前、大変じゃないのか?そんなデータで」

プラズマは呆れた顔でつぶやいた。


「大変だよ。こんなモデルデータいらないさ」

自虐的に笑ったリョウは少し先で状況を見ているマナに叫んだ。


「マナちゃん!世界改変にはマイが必要なんだろ!連れてきてあげるよ!」

「……え!?」

マナが声を上げた刹那、リョウは時間操作で瞬間的に消えた。


「とりあえず勝ったか。……終わった……。マナ、大丈夫か?」

栄次がこの間にマナに近づき怪我の状態を見てくれた。


「ちょっとだけ……動けるよ……」

「動かなくていい。傷がおかしなものばかりだ……。何と戦ってきたのだ?……鉄砲に当たったかのような火傷、獣の爪のような……」

「まあ、もう終わったから……」

栄次の追及をマナは苦笑いで遮った。


「栄次、プラズマは大丈夫なのかしら?」

先程の戦闘を遠目で見ていたアヤは血がつたう二人を心配そうに眺めながら尋ねた。


「問題ない」

「俺は問題あるぞ……。いてーよ……」

栄次は寡黙にプラズマは情けない顔でそれぞれ返答した。


「治療道具とかないよね……」

「ないわね……。先が怖いわ」

アヤがつぶやいた刹那、時計の魔方陣が出現しリョウとマイが現れた。


「マイさん!?」

「ただいまか?よくわからんが」

驚くマナにマイは飄々と手を上げた。


「どうやって……」

「単純さ……過去から連れてきた……。マナちゃん達が……シミュレーションしている時から……」

リョウはため息混じりに答えた。


「お前は……この世界から過去に戻れるのかよ!」

プラズマの言葉にリョウは首を横に振った。


「……いや……シミュレーションから連れてきたんだ。あれは弐の世界の肆だから……。でも、この時間軸ではあのシミュレーションも過去になる」

「……なるほど……って言っていいのか?」

リョウの説明にプラズマは頭を抱えた。


「うむ!こちらのが楽しそうだ!楽しませてくれよ」

マイはいままでの境遇を忘れたかのように嬉々とした顔になっていた。先程までマナ達を騙してシミュレーションしていた段階のマイのはずなのだが。


「とりあえず、あんたもぶっとんでる……」

プラズマは若干引き気味な顔で距離を取りながらつぶやいた。


「……僕はマイを連れてきたよ。約束は果たした。僕はもう戦わない。後はイザナギと戦い、そして消されればいい……」

リョウは肩で息をしながらマナに言い放った。


「その時間操作、リスクがありそうだね……」

「神力を使うからマイを連れてきた段階で僕はもう動けないくらい疲弊しているさ……」

リョウはふらつきながらその場で膝を折った。


「……リョウさん、今のデータ……変えたいでしょ?」

「……」

リョウはちらりとマナを仰いだ。


「答えたくなくてもわかるよ」

「さっさと行きなよ」

リョウは鬱陶しそうにマナ達を凪ぎ払った。


「まあ、いいや……。皆、行こう」

「お前は動ける怪我じゃない!」

マナが歩き出そうとしたので慌ててアヤ、栄次、プラズマが肩を貸した。


「ありがとう……」

マナは優しい時神達に心から感謝をした。

リョウは丘の上の神社から去っていくマナ達を黙って見送っていた。

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