変わり時…最終話漆の世界3
「デモ、ワタシハ……ナットクシナイ。ワタシハ、ワタシ。ケイデハナイ。マナ、ワタシヲ説得シタイナラ、ワタシタチヨリ、チカラガ、アルコトヲシメセ。ツマリ、ワタシト戦ウ……」
「え……」
ルフィニは必死な顔でマナに言い放った。マナは驚いて目を見開いた。突然だったからだ。
感情がふらついている。
「ケイがカケをしてやがる……。ルフィニが勝つか俺達が勝つかで」
いままで黙っていたプラズマがマナに厳しい目を向けた。
「カケ……」
「世界がどちらを望むのか。変わることを望むか望まないか……」
プラズマの言葉にマイがクスクス不気味に笑った。
「所詮はケイ本人の進むか進まないかの感情の方向性を決めるためだけではないか。馬鹿馬鹿しいな」
マイはルフィニににんまりと微笑んでいた。馬鹿馬鹿しいと言っていてもなんだか楽しそうだ。
「馬鹿馬鹿シクテモ、ソウシナケレバ、イケナイ」
ルフィニがカッと目を見開いた。刹那、爆発的に神力が吹き出した。
「なんで?なんでそうなるの!?」
「ちっ!こいつ……」
プラズマがルフィニからマナを引き離して距離をとった。セレフィアは黙ったまま後ろに退いた。同時に後ろの本棚に結界を張る。セレフィアはルフィニを止めることはなく、暴れてもいいように大切な部分に結界を張ったようだ。
「クラウゼ!テツダッテ!」
ルフィニがマナ達を睨み付けたまま、叫んだ。すると、すぐにクラウゼが白い光に包まれて現れた。
「呼んだか?ルフィニ」
「クラウゼさん!」
現れたクラウゼにマナはどうしようか迷った。仲間になれとごり押しできる状況ではない。
「そうかよ……。そうだったのかよ。クラウゼはケイのアバター、ルフィニのナイト役か!だからクラウゼは無意識にケイがバグったからナイトとして伍に飛んだんだ。健はレール国の繋ぎで飛んじまっただけみたいだが。優柔不断なクラウゼの行動はケイの感情のブレが原因だ」
「何を言っている?」
クラウゼはプラズマを不思議そうに見ていた。
「と、とりあえずよくわかりませんけどルフィニさんが本気です!」
いままで様子をうかがっていただけの健はあまりの事態に慌てて口を開いた。
「ワタシニ……勝テル、チカラヲミセテ!」
ルフィニは足元に魔方陣を出現させ、叫んだ。
……レール国最強の影の神ルフィニさんにレール国の騎士神団長クラウゼさんと戦うことになっちゃった……。
「どうしたら勝てる……」
マナは冷や汗をかきながらルフィニの魔方陣を見据えた。
……ここで勝たないと……納得させないと……。
「えぃこ!びぃこ!」
健のドールを召喚する声がした。
ルフィニの魔方陣から黒い帯状のムチが大量に飛んできていた。召喚されたえぃこ、びぃこが魔法使いスタイルに変わりすばやくルフィニの術を結界で弾く。
「クラウゼ、エルフェトゥクランバルイメィ!(本気でマナ達にかかって)」
ルフィニはレール国の言葉、ラトゥー語でクラウゼに命令した。
クラウゼはルフィニに軽く頷くと剣を出現させ、マナ達に襲いかかってきた。
雷を纏わせている。未来での出来事が頭をかすめた。クラウゼは太刀打ちできないほどに強かった。
「ど、どうしよう!?」
「んぎっ!!」
マナが迷っている最中、プラズマがクラウゼの剣を二丁拳銃で受け止めた。ほぼ力技だ。
マナを庇ったプラズマはクラウゼの剣におされていた。
「受け止めてどうする気だ」
「……っ!」
クラウゼの冷たい言葉が飛んだ刹那、雷がプラズマを貫通した。
プラズマは咄嗟に剣を弾き、霊的着物になったが弾き飛ばされて片膝をついた。体に電撃が走っている。ダメージを食らったようだ。
「プラズマさん!」
「霊的着物に着替えた。まだ平気だ……」
マナにプラズマは辛うじて答えた。
クラウゼは体勢の整わないプラズマにさらに追い討ちをかける。
次の剣技はマイが糸を絡めて封じた。
「私も手助けするぞ……くくっ」
マイは不気味に笑うとすぐに糸を切った。電撃が糸を伝ってきたからだ。
一瞬だけ隙ができ、マナ、プラズマ、マイはクラウゼの間合いから外れた。
「これからどうする……」
「クラウゼに俺達三人でかかるしかないな。健にはルフィニを抑え込んでもらわないと。あいつはドールを増やせるだろ?ひとりじゃない」
プラズマの言葉にマナは頷いた。もうそうするしかない。
「散り散りにまずは逃げて隙をうかがおう!」
「くっ!」
作戦を立てる暇もなくクラウゼが飛び込んできた。マナ達は散るしかなかった。三人はバラバラに逃げた。




