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旧作(2009〜2018年完結) 「TOKIの世界書」 世界と宇宙を知る物語  作者: ごぼうかえる
最終部「変わり時…」エラーの出た神
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変わり時…4狂う世界15

いつからだ……。いつから……。

マナは考えて「はっ!」と気がついた。


……あの時からだ……。

気を失った時から……。

マナはマイを睨み付けた。


「睨むな。私はワイズの仲間でもないぞ。お前が染まる前に教えてやったのだ。本来ならこのまま悪者になって正夢で死ぬぞ。ククッ」

マイは楽しそうにマナを見ていた。


「ま、お前はそういうやつだYO。だがもういい」

マイの後ろからワイズが現れた。もちろん、檻についている結界の外からだ。


「どういうこと?」

マナはもうワイズに丁寧に話す気はなかった。丁寧に話すだけ馬鹿馬鹿しい。


「シミュレーションでスサノオ、ツクヨミが所持している鍵のデータ、さらにアマテラスが持っている扉の解析までできたYO。あのまま私が動かなかったらああいう未来になっていたのか。興味深いNE。あの剣王が……フフフ」


ワイズはクスクス笑っていた。マナはワイズの恐ろしさを今知った。他の神々がワイズは手強いと言っていた理由はこれだったのだ。思兼神……知恵の塊のような神。マナが転がせるような神ではない。


さらにワイズはマナを追い詰める言葉を発した。


「アマノミナヌシ神の内部に入るには時神が必要だったNE。ちょうど時神アヤが太陽神サキの親友、みーくん(天御柱神)と連絡がとれないことを心配して来てくれたから呼ぶ必要がなかったYO。あの時神はとってもお人好しでNE。お前が見たアヤは未来のアヤ。私が対策をしなかったら歴史神達に呼ばれ高天原西まで助けにノコノコ行っていたみたいだNE?夢だったからお前が殺されないようにマイに操作を頼んでいたが、運よく生き残った未来ということで覚えておくといいYO。剣王に斬られた段階でお前は死んでいるがお前が死んだ後、アヤは剣王に捕まり、時神を全員そろえてアマノミナヌシにアクセスし、お前をいなかったことにする。どちらにしてもお前はこちらの世界にいない」


ワイズが淡々と語る中でマナは背中から悪寒を感じていた。


この神はやばい……。敵にまわしてはいけない神……。剣王とは違う恐怖。


プラズマと健は寝ていて起きてこない。すべての鍵はワイズが持っていた。過去神もワイズの所にいる、時神アヤはサキと天御柱神(みーくん)を使って来させ、未来神プラズマは……ここにいる。


つまり、ワイズは今一番システムに近い。このままアクセスされ、マナはいなかったことにされる……。おまけにマナは捕まっている。


「ノコノコ現れたのが間違いだったNE」

ワイズは嘲笑すると青ざめるマナを背にその場を去っていった。


シミュレーションをされていたのでマナは現在鍵を持っていない。


……誰か……誰か助けて!

このままじゃワイズに消されるっ!


「落ち着け」

ふとプラズマの声が聞こえた。マナは涙を浮かべた顔を向けた。


「プラズマさん……私は……」

「全部聞いた。あんたは両方の世界を救うんだろ?だったら負けるな」

「でも……」

マナが戸惑いを浮かべているとプラズマがさらに言葉を続けた。


「大丈夫だ。過去神栄次はここにいない。ワイズが所持している神達じゃあ過去神をこちらに呼べない。西の剣王の配下、歴史神を使っても呼べる確率は低い。つまり、まだ連れてきてない。だろ?語括神マイ」


「……フフフ。その通りだ。あいつはまだ過去神を連れてきていない」


プラズマの言葉にマイは素直に答えた。マイはワイズを手伝ったものの、ある事件で罪を犯したため、いまだ牢に入っているようだ。ワイズはマイがおもしろい事に興味があることを知っており、使ったようだ。本神マイは使われていることを知った上で遊んだらしい。


「で、俺は考えたんだが……アヤについては置いといてまずはここを出る方法を思いついた」

「え?」

プラズマはマナをしっかり見据えて続けた。


「高天原北の権力者、冷林(れいりん)を使う。あいつは縁神(えにしのかみ)と言って人間の祈りに反応する。つまり、願いを叶える」

「でも……私は神なんでしょ?」

不安げなマナにプラズマはニカッと笑った。


「現人神だろ。半分人間じゃねーか」

プラズマは胸を張って答えた。


「なんとかなるの?」

「なるかもな。そこにいるマイはワイズを呼ばないだろう。こっちのが『おもしろいから』な」

「ふふっ」

プラズマの皮肉にマイは心底楽しそうに笑った。


「冷林を呼んだらここから出してもらう願いを言う。冷林は神格が高いからこの結界を取っ払ってくれるはず。そんで、外に出たらレール国に行く」

「レール国?なんで?」

自ら危険を犯すのかとマナは疑問に思った。


「シミュレーションしただろ。レール国のクラウゼは『文句があるなら何をするか確認してから言え』と言えば敵にならずについてくるはず。ただ、仲間にはならないだろうが」


プラズマは意外に色々と見ている。マナもクラウゼについて思い出した。ラジオールからの命令で襲って来たものの最終的にはラジオールの命令には従っていない。


むしろ、ごり押しだったが剣王と戦ってくれた。


……そうだ。やられたから焦るんじゃなくてチャンスに変えるんだ。


シミュレーションをした中で少なくとも健とプラズマは敵にはならない。信頼して良い仲間と言える。マイに関してはよくわからない。剣王とワイズは自分を消しに来る。


それだけわかっていればこちらが利用されたメリットはあるのだ。

マナはプラズマを信頼して尋ねた。


「冷林はどうやったらここに現れるの?」

「願え!ただそれだけだ。俺がここから出てあんたと動いていたら少なくとも時神の鍵は開かない」

「願う……」

プラズマの目をマナはしっかり見てつぶやいた。


「やってみる」

「おう」

マナの答えにプラズマは深く息を吐いて頷いた。


「やってみろ」

プラズマ自身も迷いを捨てマナに任せる決意をした。

未来はまだわからない。

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