変わり時…4狂う世界11
剣王が神力を爆発させた。あまりの剣気にマナは動くどころか声も出なかった。
「クラウゼ君!来るよ!」
「ちっ!」
リョウに半ばごり押しされたクラウゼは舌打ちをしながらマナの前に入り込み、結界を張った。
「バーナス・エレクト!」
そのまま呪文を口にし、剣王に向かって直線的な雷を放った。
雷は地面を裂いて剣王に直撃するが剣王は神力を刀に乗せ雷を弾いた。耳を塞ぎたくなるような爆発音が響き、地鳴りまでした。
「なんで俺が剣王と戦わなくてはならない……」
ため息をついたクラウゼは飛びかかってきた剣王の刀を杖で流す。
「君は強いねぇ」
剣王が攻撃を加えながら不気味に笑っていた。
「一応武神でもあるからな」
「そうかぁ。武神かぁ」
のんきな会話をしているが実際は目に見えないくらいの早さで剣と杖が動いている。ぶつかる事はなく、お互いが流しあっていた。その衝撃と風がマナ達を襲い、リョウが結界を張ってかろうじて立っていられている。
「あ、あの……私は一体どうすればっ……」
マナが恐る恐るリョウに尋ねた。
「アマノミナヌシ神のデータに入りたいならおそらく時神が必要だ。日本の、しかもこのTOKIの世界にしかいない三人の時神だ。僕はアマノミナヌシ神のシステムを観察している神なだけで日本のシステムを開く権限はない。現在、それに気がついたワイズが過去神を拘束したようだ」
「待って!じゃあこの世界はなんだったの?扉を開いたのに!」
リョウの言葉にマナは必死に叫んだ。
「この世界は弐の世界内にあるアマノミナヌシ神のバックアップの世界だよ。僕と特殊なKであるあやちゃんがバックアップを一時止めている状態だ。この状況のバックアップをとられるとアマノミナヌシ神とバックアップがすれ違うからね」
リョウは頬から冷や汗がつたっていた。
「じ、じゃあ今から時神を連れてくる!元の世界に戻して!」
マナがそう言った刹那、クラウゼが押され始めた。
「くっ……」
「私が助けます。マナさんは早く時神を連れてきてください!」
隣で話を聞いていた健がえぃこ、びぃこ他、戦闘に長けた人形を召喚した。
健は集中力を高め、人形にテレパシーで動きを指示していた。大変だと言っていたのは人形は小さくて視野が狭いので力を発揮させるために指示を飛ばす必要があったからだ。
人形が的確に動き始めたのでクラウゼの戦いは少し楽になった。
健は抜けているように見えてやり手のようである。
「で、でも……どうやって戻ればっ!」
「私が戻すわ。私はKだから」
アヤにそっくりな言葉で話すあやが子供とは思えない冷静さでマナに言ってきた。
「あ、ありがとう」
「いいの。私はパパとママと一緒にいたいだけだから。パパを守りたいだけだから……」
あやは健を心配そうに見つめていた。
『パパとママと一緒にいたいだけだから……』
マナはあやが向こうにいたケイと同じ事を言っていた事を思い出した。両親と一緒にいたいという子供の純粋な感情はとてもきれいで尊い。
マナはケイとあやも似ていると思った。
あやはもしかしたらアヤの支えだけではなく、ケイの支えもしているのかもしれない。
「じゃあ、こっちはなんとかしておくからいってらっしゃい。長くは持たないから早めにね」
あやは軽く微笑むと指で五芒星を描きマナに向かって飛ばした。
五芒星は黄色の光を発しながらマナに当たり、マナは電子数字に分解されて消えていった。




