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変わり時…3時の世界8

 「で?あなた達の要件はなんだ?」

 蛭子は社長室の椅子に座り、マナとプラズマを仰いだ。この社長室だけは和風ではなく、一般的によくありそうな社長室だった。

 全体的に木目調で目に優しい。


 「え、えっと……今、伍の世界が大変なことになっていまして……あ、伍の世界についてはご存知でしょうか?」

 マナは慣れない敬語を使いながら蛭子の顔色を窺った。


 「伍の世界についてはほとんど知らない。だが……こないだ興味深い事件が起こった。こことはもう一つ、鏡の世界があってな……ろくの世界という所だが、その世界で歴史神、霊史直神れいしなおのかみナオだったかが暴走したとのことだ。ここはいちの世界だが壱と陸を滑る太陽神と月神が記憶置換に気を付けろと言ってきた。聞いた当初はよくわからなかったが、その後、陸で何かあったのかすぐに不思議な記憶が舞い込んできた」


 蛭子は言葉を切るとお茶を一口含み、また口を開いた。


 「私達には抹消されていた記憶があったのだ。この世界がこちらと伍に分かれる前にスサノオ、ツクヨミ、アマテラスと私は会っているとの事だ。こちらの記憶ではあの三神は概念になり実際にはいないことになっている。


 世界が分かれる時に神々の歴史を管理している歴史神ナオが我々神々全員のデータをいじったようだ。そしてナオ本神もあの三神のデータを抹消した。『この世界が分かれた時期』から『分かれた』という現象を抹消した。だから我々は伍の世界についても知らないのだ。ろくの世界ではナオがそのことを思い出してひと騒動になったそうだが、こちらの世界のナオは何も思い出さない。問いただしても無駄だ。おそらく、ナオの他に世界を分けた共犯がいる」


 蛭子の口からまた新しい言葉が出てきた。どうやらナオという神が色々と関わっているようだ。そしてこの世界はこちらと伍の世界だけではない。鏡の世界陸ろくもあるとの事だ。


 「おいおい、陸の世界は壱の世界のバックアップだろ?陸がぶっ壊れてちゃあ仕方ないな」

 プラズマはため息交じりにそう言った。プラズマは他の世界についてもそこそこ知っているようだ。


 「未来神、それは考え違いだ。壱も陸も同じように回っている。つまり、陸では壱の世界は陸の世界のバックアップなのだ。故にお互い辻褄合わせをしようとしてくる。私のこのあるはずのない記憶も陸の世界で起きた事をカバーするために現れたのだろう」

 蛭子はプラズマをなだめるように答えた。


 「そうか……。そりゃあ、まあいいや。で?あんたは伍の世界については全く知らないと?」

 「知らん……だが……」

 プラズマとマナが同時に肩を落としかけた時、蛭子が意味深に続きの言葉を発した。


 「……だが?」


 「独自に調べた結果、記憶置換の影響を受けていない神々がいる事にたどり着いた。西東の権力者だ。タケミカヅチ、西の剣王と思兼神おもいかねのかみ、東のワイズだ」

 「なんだって?あの偏屈共が?」

 プラズマが蛭子の発言に目を丸くしていた。プラズマは西、東の権力者に会った事があるようだ。


 「私もよく知らないが……あの神達は何かを隠している。曲者級の曲者だ。話を聞きに言っても何も話さないはずだ。私から連絡を入れて会わせてやってもいいが、あやつらはすぐに先の事を予想してくる。特にワイズは知らない内に話をなかったことにされる。つまり、話をしに行きたいなら戦う覚悟でいきなり会いに行け。私や天津のように良心的ではないぞ」

 蛭子の言葉にマナは唾をごくりと飲み込んだ。


 「戦う覚悟って……?」

 「文字通りだ。東のワイズ、西の剣王軍の幹部ともどもを黙らせてアポなしでトップに会いに行くのだ。剣王軍の方はトップのタケミカヅチを落とせればいいだろう」

 「無茶言うな!」

 蛭子の発言にプラズマが声を荒げた。


 「それか……ワイズが協力的ならば剣王も従うかもしれない」

 「ワイズを落とすのも命がいくらあっても足りねぇよ!あそこの幹部は化け物級だ。特にあそこには天御柱神あめのみはしらのかみがいるだろうが!」

 プラズマが珍しく蛭子に食いついていた。


 そこまで東と西のトップは危険な存在らしい。


 「いいか?未来神。これは縁を結ぶのだ。北の権力者、縁を結ぶ縁神えにしのかみ冷林は使えぬがその配下に使える神がいる」

 「なんだ?話が読めないぞ?」

 すっと指を立てた蛭子にプラズマが首を傾げた。


 「天御柱神あめのみはしらのかみは太陽神トップの輝照姫大神こうしょうきおおみかみサキと仲がいい。だがサキは太陽の門が開いていないと会う事すらできない。そこでサキと仲のいい時神現代神アヤに頼むのだ。アヤは普通に現世にいる」

 「アヤさんとサキさん!」

 マナはこちらに来た時に出会った女神達を思い出した。


 あのサキという神はそんな高い場所にいた神だったのか……。

 だが、普通に学校にいた気もするが……。


 「アヤか……。俺とマナが会った辺りをウロウロしていたからいる場所はわかるな……。てか、またアヤか。あいつ、けっこういろんなことに巻き込まれてるよな……」

 プラズマが深いため息をついた。


 「まあ、そういう事だ。まず話をつけにいくならワイズだ。伍の世界の事もかなり詳しいはずだ。その後、剣王に会いに行くのが一番衝突が少ないのではないか?」

 蛭子にそう言われてプラズマとマナは考えつつ頷いた。


 蛭子は話をよく聞いてくれそうだったが肝心な所をまるで知らないようだった。だが、西と東の権力者を説得できればマナの計画も他の神々に認知されるかもしれないとも思った。

 まずは東と西と話をしてそれから何も知らない神々を動かしていく方が早いだろうとマナは一人納得したのだった。

 とりあえず蛭子からはいい話を聞けたのでさっそく東と西の権力者に会いに行く事にした。


 しかしマナは東と西の権力者がそんな甘い存在ではなかったことに後で気がつくのである。

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