変わり時…2向こうの世界最終話
「じゃあ、俺達はちょっと高天原に顔を出してくる。あんた達はどうする?」
プラズマがため息交じりに健とクラウゼを仰いだ。
最初に声を上げたのはクラウゼだった。
「俺はラジオールにこの件を報告するつもりだ。もう向こうの世界を放っておけなくなったからな」
「なるほどな。じゃあ、あんたはここに残るんだな」
「そういうことだ」
クラウゼはプラズマの言葉に大きく頷いた。
「で?あんたは?」
プラズマは今度、健に目を向ける。
「あー、私はついていきますよ。高天原には行ったことないですから」
「行きたいだけかよ……」
プラズマの突っ込みにも動じずに健はほほ笑んだ。
「ルフィニさん、レールさん、色々ありがとう。また何か聞きにくるかもしれないけどその時はよろしくね」
マナはルフィニとレールに小さく頭を下げた。
「いいよ~。何かできそうなことがあったら教えてね~。不思議な神様~」
レールは楽観的にマナに笑いかけた。
「ウン」
ルフィニは小さく頷き、軍人将棋の続きを始めた。
「じゃ、行くぞ。レール国を観光したいところだが……そういうわけにもいかないしな」
プラズマがマナと健を促し、先程の神々の図書館へと向かった。
……軍人将棋か……
ふとプラズマは思う。
……戦時中から戦後にかけてはやった将棋……昔のKの少女達の世界観がそのまま残っている国……って事か?このゲームは一部日本ではやったゲームだ。もしかすると他にも戦争中に『世界のK達』が生きていた時代もこのレール国になんらかの形で残っているのかもしれないな。
プラズマはそんなことを思いながらクラウゼにそっと手を上げて別れを言うと白い本を手に取った。
セレフィア・イルサーゼ神の本。
マナと健と目配せをし、互いに頷いたところで本を開いた。
目の前が真っ白に染まった。
***
「しかし……」
ルフィニはラトゥー語でレールにつぶやく。
「なあに?ルフィニちゃん~?」
レールはほほ笑みながらヒコウキをぶっ放し、中尉を討ち滅ぼした。軍人将棋中だ。
「高天原があのマナって子を認識しようとするわけないと思うのだけど」
ルフィニは小さな声でレールを窺った。
「……そうだね~。あの子がいるとこっちの世界が壊れちゃうかもしれないから~リタ(日本)のKの一人が壊れたからって高天原が動くとは思えないね~。マナちゃんって子はもしかしたらこちらの世界を守る考えの高天原から追われる身になってしまうかもしれないね~」
レールは表情変わらずにそう淡々と言った。
「冷たすぎるね……。君は」
「期待はしているけど~、私達は今のままでいいし~」
ルフィニとレールの会話を聞きながらクラウゼは近くの椅子に控えめに座った。
「俺はもう十年も向こうへいるのは嫌だな。リタのK一人が狂っただけでこっちの神が向こうへ飛ばされるとは……俺はマナを応援しよう」
クラウゼは軍人将棋に夢中のルフィニとレールを眺めながら深くため息をついた。




