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旧作(2009〜2018年完結) 「TOKIの世界書」 世界と宇宙を知る物語  作者: ごぼうかえる
最終部「変わり時…」現人神になった人間
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変わり時…1交じる世界10

 洋館を出て森の一点部分に足を踏み入れた刹那、マナの視界がまたも真っ白になった。

 我に返ると先程までいたごく普通の図書館に足をつけていた。目の前には先程と同じように白い本が一冊だけ置いてある。


 「戻ってきた。じゃ、こっから外に出て鶴を呼ぼうか。」

 「鶴?」

 勝手に歩き出したプラズマにマナは疑問の目を向けながら後に続いた。


 「鶴はツルだ。神々の使いだよ。」

 「……はあ……。」

 プラズマはさも当然のように手を広げた。再びわからない事が出たマナは首を傾げながらとりあえず返事をした。


 自動ドアから外に出てプラズマは太陽を眩しそうに手で遮りながら笑った。


 「ま、見ててみ。」

 「……う、うん。」

 なんだかわからなかったがマナはとりあえず頷いた。


 しばらくプラズマと共に青空を見上げていると大きな翼を羽ばたかせている人間のようなものが飛んで来るのが見えた。


 「ひぃ!?」

 マナは驚いて不思議な悲鳴を上げた。


 「ああ、あれがツル。人間には見えない神々の使いだ。ちなみにやつらは鳥になっている時は漢字で鶴。人型の時はカタカナでツルと表記しているようだ。」

 「ひっ……人型!?」

 神が存在している世界という事は辛うじて理解ができた。しかし、動物が人型になるところまでは理解ができない。


 そうこうしている内にツルがプラズマの前に着地していた。全体的に白と黒だ。白い着物に黒い袴、肩に赤いファーのようなものがついている。髪も白と黒で全体的に白、毛先だけ黒い。その髪を中国の宋の時代の様に上でまとめている。端正な顔立ちで目元に赤いアイラインを引いている青年だった。どこかの俳優のようだ。


 「よよい!行き先を提示してくれよい!」

 青年は顔に似つかわしくない言葉を吐くとプラズマとマナに深くお辞儀をした。


 「俺は主にツルを移動用に使うんだ。けっこう便利だぞ。」

 プラズマはマナに笑顔を向けるとツルが引いている駕籠を指差した。よく見ると四、五羽の鶴が脇の方にいつの間にかいた。


 「これ……江戸時代とかにあった駕籠ってやつかな?」

 「んまあ、中は結構心地いいぞ。ローカル線とかでよく見る電車のワンボックスみたいな感じだ。」

 マナとプラズマが話しているとツルが再び口を開いた。


 「よよい!行き先はどこだよい!」

 このツルは神々の使いだと言うのにどこか神々よりも偉そうだった。


 「ああ、悪いな。えっと……ちょっと不便な場所なんだが……。」

 プラズマは村名を素早く伝えた。


 「了解しましたよい!駕籠にどーぞ。」

 ツルはマイナーな村を瞬時に理解したようだ。そこら辺のタクシーよりもはるかに場所に詳しい。

 マナは感心しつつ、早くも興味が駕籠の中へと移っていた。


 「じゃあ、行くか。あんた、本当になじむのが早ぇんだな。さっきのツルの件はもう驚いてないのか。面白い。」

 プラズマは興味津々にマナを見、その後駕籠へと促した。


****


 駕籠に乗ったマナ達はクロノスがいるという例の村へ行く事にした。

 駕籠の中は快適だった。プラズマが言った通り電車のワンボックス席のようなシートがある。外からではそれがわからない。空間的におかしい気もしたがマナは気にするのをやめた。


 プラズマとマナはそのワンボックス席の椅子に座った。

 座った刹那、鶴が飛び立ち始めた。


 「では、いくよい!」

 ツルの一声で駕籠がふわりと浮いた。だが気持ち悪い感覚はなく、中からでは浮いているのかどうかもわからない。


 ツル達は高く飛び上がるとそのまま飛行を始めた。駕籠にはなぜか窓がついており、その窓から外の眺めを楽しめた。


 「なんだかわけがわからないけど外が見えるね。」

 「まあ、神々の関係ではわけわかんない事の方が多いよ。」

 マナが興味津々に窓から外を眺めている。飛行機に乗っているみたいなのに浮遊感がないのだ。不思議で仕方がない。


 プラズマはまたも興味が窓からの眺望に移ったマナに関心の目を向けた。


 「ああ、そうだ。クロノスについて少し調べておくか。しかし、はやいよなー……もう携帯電話の時代じゃないんだもんな。アヤが問題起こして悪戦苦闘していた時代ではまだ携帯電話だったしな。ま、俺はもっと未来から来たけど。」

 プラズマはマナから目を離し、代わりにスマートフォンを取り出した。


 「スマホで神様の事が出てくるの?」

 マナが不思議そうに尋ねた。マナがいた世界では神のかの字も出てこない。


 「ん?まあ、ふつうの人間向けのやつにも出てくるが……俺は当然、神々向けの情報通信を見る。」

 プラズマは『天界通信本部ネット支部』と検索欄に入れるとその中の『ようこそ!外国神!』のコーナーを開いた。


 「このサイトは……?」

 マナがすかさずにプラズマのスマホ画面を見つめた。


 「これは日本に来た外国神を取材する記事だ。写真を見る限りだと田舎の野球少年って感じだな。」

 プラズマは今週の記事の中で『クロノス来日!』と書かれた記事を開いた。クロノスの写真も載っていた。野球帽に半袖短パンの子供が豊かな自然をバックに満面の笑みを浮かべている。


 パッと見て日本の子供にしか見えない。

 記事を読むと現在はリョウと名乗っていると書いてあった。


 「ふーん……。この子、過去、現代、未来の三方向からものが見られると。つまり、俺なんかよりももっと世界を見れているわけだ。これは期待だ。」

 プラズマはマナに向かってほほ笑んだ。


 次元が違いすぎる話にマナはどう反応すればいいかわからなかった。


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