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旧作(2009〜2018年完結) 「TOKIの世界書」 世界と宇宙を知る物語  作者: ごぼうかえる
最終部「変わり時…」現人神になった人間
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変わり時…1交じる世界4

 「……おい。おーい!」

 誰かがマナを揺すっている。


 「起きろ。」

 「んっ……?」

 男の声が耳に響き、マナはそっと目を開けた。目の前に紫色の髪の男性が映る。

 男性は端正な顔立ちだが目つきが鋭く、なぜか甲冑を着こんでいた。

マナは眼鏡をどこかで落としてしまったのか眼鏡がなかったのであまりよく見えなかった。


 「お。やっと起きたか。あんた、伍の世界のやつだろ?」

 「あれ……?私は……。」

 マナは首をかしげながらゆっくり起き上がった。辺りを見回してみたが何もなく真っ暗だ。だがまるで宇宙空間内にいるように星のようなものが光っていた。


 「よくここまでこれたなあ。まあ、まだ伍の世界だが。」

 「あなたは誰……うっ!?」

 マナは質問しかけてから自分の体に目を移し驚いた。


 「きゃあっ!はだっ……私裸!」

 なぜかマナは一糸まとわぬ姿であった。つけていたシュシュもなくなっており、長い髪が色っぽく体にかかっている。

 マナは顔を真っ赤に染めて髪で体を隠した。


 「そりゃあな。お前は今、魂だから。……いや、こちらだとエネルギー体か。」

 「……エネルギー体が……どうして意思を持っているの?」

 マナは恐る恐る男に尋ねた。男は軽くマナに向かってほほ笑む。


 「ここは伍の世界の魂が行き着く世界だぜ。イザナミとイザナギが向こうの世界だけじゃなく伍の世界も繋げているんだ。その繋げているバイパス部分っていうのかな……あんたら伍の人間も眠っている時はここに来るんだぜ。そういうふうにできてんだ。」


 「よくわからない……。」


 「だろうな。眠っている時、魂の成分ダークマターは電子が離れるようにタンパク質の塊から抜け出し、一時的にここに集まる。そしてここに沢山あるダークマターの成分を魂が取り込み、増えるとタンパク質に引っ張られ肉体と魂が重なる。そして目覚めるわけだ。歳いってくるとタンパク質の塊……つまり体が衰えるから魂を引っ張りにくくなる。すると色々な障害が出たり、最終的には魂が肉体に戻れずに向こうの世界で肉体が腐るわけだ。魂は防腐剤的な感じだろうな。」


 男は楽しそうにマナに語った。


 「ここに集まる……。」

 「そうだ。ここは向こうの世界では魂とか精神の世界、弐の世界と呼ばれている。こちらの世界での名称はない。しっかし……こちらの世界のやつらはほんと、想像力にかける。見ろ。世界がねぇ。真っ暗だ。」


 「そんな事言われてもわからない……。」

 男の発言にマナはただ戸惑っていた。


 「ははっ!違いねぇ。俺達はこちらの弐の世界から外へ出られねぇ。だがちゃんと見守れる魂は見守って管理してるんだぜ。眠っている時、少なからず想像を膨らませるやつがこちらの世界でもいるんだよ。あんたみてぇなやつがな。俺達はその想像している生命の世界でしか今は生きられない。ごく少数だ。ちなみにここはアンって子の世界なわけだが、あんたはそのアンって子の世界に魂が入り込んでいるってわけだ。あんたの肉体はもうない。実態が保てるのもアンって子の想像のおかげだ。」


 「アンって……私の友達の……?」

 マナは驚いて声を上げた。

 男は再び愉快そうに笑った。


 「そうみてぇだな。あんたら、俺達の神社の話していたろ?それで夢で俺達が出てきたんだろう。」

 「俺達の……神社……?……はっ!あなたはまさかっ!三貴神のうちの……。」

 マナは目を見開いた。


 「ご名答。俺はスサノオだ。これをやるよ。」

 スサノオと名乗った男は驚きで震えているマナの手に眼鏡を乗せた。


 「……すっ……スサノオ!?……こ、これは……め、眼鏡?」


 「そうだぜ。落ち着けよ。あんたは俺が待ちに待ったこっちから向こうへ行く魂だ。向こうに行ったら驚くぜ。怪現象の嵐だ。あんたは向こうの世界では神が見えねぇみたいだからこの眼鏡をつけて神を見るといい。あ、ここは人が唯一想像を膨らませる弐の世界なんで俺が見えるんだが向こうだと普通に生活している人間達も神が見えねぇから。」


 「……さっきから何言っているのかわからないんだけど……。」

 マナは不安げな顔のままとりあえず眼鏡をつけた。


 眼鏡をつけたとたん、スサノオと名乗った男の後ろにガラスのような薄い透明な何かがどこまでも続いているのが見えた。その透明な板のようなものに五芒星が描かれている。


 「あれは……。」


 「向こうとこちらを繋ぐ結界だ。あんたがデータ上、あちらに入るとき問題ないと世界が判断したら、分解されずに入れるだろう。向こうの世界の人間と同じコードを持っていたら入れるって事な。ま、その眼鏡が向こうの世界のものなんで問題ねぇと思うが。向こうの世界がお前をどうデータ化して溶け込ませるのか俺は楽しみだぜ。」


 スサノオは一方的に話すとマナの背中を軽く押した。少しだけ押しただけなのにマナはかなりのスピードで結界に向けて滑り出した。


 「……ちょっ……ねえ!私大丈夫なの?全然話がわからなかったんだけど!」

 マナは恐怖を感じ遠くなっていくスサノオに叫んだ。

 スサノオは笑っていた。マナの顔にさらに恐怖の色が浮かぶ。


 「ねえっ!」

 「問題ねぇだろ。あんたはもう……こちらの世界でも人間じゃねぇ。俺が見えた段階であんたは神だ。現人神あらひとかみ……。向こうの世界はそう判断すると俺は睨んでいる。そのまま行け!」

 「……っ!」

 スサノオの声はそこまでだった。マナは目の前に迫る五芒星に徐々に分解されていった。


 最後に見たのはスサノオの笑顔だった。不思議な笑みを浮かべている。


 ……そういえばスサノオは神話だと良くも描かれるけど悪くも描かれるよくわからない神だった……。


 マナは辺りの電子数字を眺めながらそんなことをふと思った。

 そう思っていた刹那、不思議な声が頭の中に介入してきた。


 ……今は解明されていないし名前もないけど魂の成分はソウハニウムって名前になるらしい……。未来は変わるかもしれないけどね。


 「……誰?」

 マナがそうつぶやいた刹那、意識は真っ白な靄の中に消えた。

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