明かし時…最終話リグレット・エンド・ヒストリー10
ナオはまっすぐにアヤを見据えてアヤの元へ歩いた。それに気がついたトケイは攻撃対象を栄次からナオへと変えた。栄次はいち早くそれに気がつき、刀を構えたままナオの元へと走った。
栄次はトケイの攻撃がナオに届く前に刀でトケイのウィングを弾いた。
「栄次……ありがとうございます。私のためにここまで……。」
ナオは言葉を詰まらせた。
「一体どうした?先程と雰囲気が違うではないか。」
栄次にそう問われてもナオは答えなかった。
答えてはいけないと思った。これは間違いなく知らない方がいい歴史だ。
ナオと栄次の関係を保つためにあえて改変以前の歴史は伝えない方がいい。
戸惑うだけだ。ナオは何でも知ればいいわけではない事を先程の記憶で思い知らされた。
「なんでもないのです。それよりもアヤさんの所へ行きたいのです。アヤさんには伝えなければならない事があります……。」
ナオは今にも泣きそうな顔で栄次を見ていた。
「それは……本当にアヤに伝えなければならない事……なのか?」
栄次の言葉にナオは驚いた。栄次は記憶を失っているはずだ。何かを過去見で見たのか直感でそう尋ねたのかはわからないがナオはとても戸惑った。
「え、ええ……つ、伝えなければならないと思います……。」
「お前の伝えなければならぬことは……おそらく……アヤに恨まれる事……なのではないか?お前が恨まれることでアヤが助かるような……そういう事なのではないか?一度言ったら取り返しがつかない……よく考えなくていいのか?」
栄次はどこか雰囲気が違った。記憶を見たナオに感化され改変以前の栄次の感情が一部戻ってきてしまったのか……。
「う……うう……。」
ナオは知らぬ間に涙をこぼしていた。
自分は以前の自分をまるで覚えていない。だが時神のシステムを独断で動かしてしまったのは事実だ。
覚えていないが胸にくすぶる後悔に気丈に振る舞っていたナオはついに耐えられなかった。
……わからない!私は知らない!知らないのに……。
「……アヤさん!」
ナオは嗚咽を漏らしながらアヤに向かって叫んだ。
アヤが顔を上げ、ナオを見つめた。アヤの心に反応してかトケイの動きもピタリと止まった。




