明かし時…最終話リグレット・エンド・ヒストリー8
茫然としていた時、ふとある考えが浮かんだ。
……そういえば……Kは私達にやらせてなんの責任も負っていない……。
肯定も否定もしないなんて無責任ではないか……。
そう考えるとなんだかKに腹が立ってきた。
「これはKにも責任があります。私達にすべて押し付けて自分達は高みの見物ですか?」
ナオはモンペ姿の方のKの少女を睨みつけ吐き捨てるように言い放った。Kの少女は首を傾げた後、そっと目を伏せ、口を開いた。
「……まあ、私達に罪はないわけはないと思うけど後悔もしないし、良かったとも思わない。世界が平和ならばそれでいい。私達は平和を願った少女達の心からできた存在だから、平和を願う気持ちしかない。
あんた達神々を創ったのは私達も含めてだけど人間であり自然。神々は世界各地で感情のある生物に願われることで生まれる。
オスとメスが性交をして子が生まれるように神々はそういう自然的システムで繁栄をしている。世界改変は神々全般が種の存続のために伍の世界と切り離した結果だ。神々は願うものがいないと消滅してしまうからね。そんなシステムを知らない元私達が平和だけを願った。それに神々が乗ってきたんだ。」
「だから神が悪いって言うのですか?」
ナオはモンペ姿の少女を睨みつけながら冷たい声で言った。
「誰が悪いじゃないよ。神々は神々で意見を出し合って世界改変を決めたんだろうし私達は私達で一人の人間として平和を願っただけ。皆、よりよいと思った方向に一生懸命考えた結果だ。悪いとはどういう事なのだろう?」
Kの少女は本当に何も思っていないようだ。人間や自然、神々によって創られていく世界をただ眺めているだけであった。
「あなた達は選択をしない!傍観しているだけなんて無責任すぎるのです!」
「……じゃあ、あんたは私達Kが悪いって思っているんだね?」
Kの少女は静かに言い放った。ナオとは違いKの少女はとても落ち着いていた。
「そっ……そんなことは言っていません!」
「じゃあ、あんたは何が言いたいのかな?私にはわからない。私達Kは私達で少女達の祈りが消えないようこの世界に繋ぎとめていく任を担っている。私達は私達で責任のある仕事をしているよ。突発的に動いてうまくいかなかったから世界改変時に自分の都合ですべてを消したあんたの方が無責任な気がするんだけど。」
冷静な少女の声音にナオは詰まった。
そっちがいい、あっちがいいと自分が良いと思った方向に動かしておいてその責任を負っていないのは自分で……無責任……。Kは間違っていない。
Kの少女は世界改変後の責任をしっかりと負っている。そしてトラブルの処理もしている。だから彼女達は妬みや恨みで来るものを拒んでいない。
彼女達が肯定も否定もしなかったのは神々が行っていることに口を出さなかっただけだ。意見をしない……それも選択の一つなのだ。
……そうか……。
ナオは暴れていたアヤを思い出し、涙を拭った。
……アヤさんはこの世界を恨んでいましたが……真実を知って恨む者がいない事に気がついてしまった……Kを恨むのもお門違いであることに気がついてしまった……。
……だからぶつけるところがなくて世界を壊そうと暴れているのですね……。
「私の……せいで……。」
「必ずしもあんたのせいじゃない。神々は感情を持っているし責任感もある。あの壊れてしまった時神は自らの意思で私達Kを恨み、世界を破壊している。だからあんたのせいだけじゃない。」
Kの少女は崩れ落ちそうなナオの肩をそっと叩いた。
「……どうしたらいいと思いますか?」
ナオはKの少女に助けを求めるように尋ねた。Kの少女は厳しい顔つきになると鋭い声で言った。
「バックアップシステムが時神には備わっているからそれを使って状態を以前に巻き戻そうかと思っているよ。」
「そうしたらアヤさんが持っている大切な今の感情がなくなってしまいます。ミノさんを想う気持ちとか行き場のない怒りの感情とか……。」
ナオはKの少女の肩を乱暴に掴んだ。
「でもそうしないと彼女のシステムを正常化できない。」
Kの少女は首を傾げてナオを見ていた。そうする事にためらいもないらしい。
「……私は……また突発的に動いてしまうかもしれませんが……アヤさんの心を変えて見せます。私と同じ道には進ませません。私が起こした責任は私が負います。なかったことにすることが必ずしも正しいとはかぎりません。」
瞳に光が宿ったナオは拳を握りしめ前を向いた。
刹那、空間が歪み、モンペ姿の少女は消え去った。




