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明かし時…最終話リグレット・エンド・ヒストリー2

 「エラーとは何かはよくわかりませんがそれはできません。もうここまで来てしまいましたから。」

 ナオは一呼吸おいてから落ち着いて答えた。


 「……わかった。あなたのプログラムがそちらに動いている。Kの世界へ案内する。」

 セカイはすんなりと了解した。ためらいも迷いもなかった。


 「ちびっこ、あんたさっき、ナオさんをとめたじゃないか。案内しちゃっていいのかよ?」

 あまりにあっさりしていたセカイにムスビが疑いの声を上げた。


 「構わない。もう未来がそちらに向かっているようだから。」

 「……。」

 セカイの思わせぶりな言葉にナオ達は一瞬言葉を失った。


 「あいにく、私は仕事がある。代わりの使いをよこす。……しろきちさん。」

 セカイは表情なく、しろきちという名前を呼んだ。


 「は、はい……。」

 セカイが呼びかけた後、間髪を入れずに少年の声が聞こえた。

 「……っ!」

 声が聞こえたと思ったら突然にその場に白髪の男の子が着物姿で現れた。


 「ひっ!いきなり白い頭の男児がっ!」

 ムスビが驚いて飛び上がった。栄次も反応が遅れるくらいに唐突に少年は現れた。

 短い白髪の着物姿の少年は不思議な雰囲気で頭には獣の耳がついており、顔には動物のヒゲがついていた。目はぱっちりとしていてとても可愛らしい少年だ。


 「……あなたは人間ではありませんね……。」

 ナオも突然現れた少年に戸惑いながらも彼の風貌や手先を見てそう発言した。

 よく見ると手先も足も人間の手のようではなく、どちらかというとネズミのようだった。

 『しろきち』というらしい少年は声をかけられて怯えたように肩をあげた。


 「は、はい!僕はハムスターです。ええ……たしか……そうだったかと。」

 しろきちは忘れっぽいのか唸りながら頷いた。


 「ハムスター?」

 ナオ達はその不思議な生き物を前に眉を寄せた。


 「そう。彼はハムスター。Kの使い。彼はずっと私のとなりにいたが、さっきまでジャンガリアンハムスターの姿だった。あなた達は気がついていなかった。突然、人間の姿になったからあなた達は驚いたという事。」

 セカイはしろきちの肩に飛び乗るとナオ達を見据え、謎を解くように語った。


 「な、なるほど……。いや、よくわからんが……。」

 栄次は困惑した声を出しながらしろきちを見つめた。


 「そもそもKの使いとはなんなのですか?人形だったりハムスターだったり……。」

 ナオの質問にセカイは無機質な瞳を向けると口を開いた。


 「……それは平和を願ったのが夢を見る少女達だったから。諦めずに願った少女達の祈りが私達を作った。私もKのうちの一人が所有している人形のひとつ。女の子が好きそうな世界媒介物が心をもらい、弐の世界でそれぞれの役割を果たしている。……後はしろきちに聞くといい。では。」

 セカイはほぼ一方的に話すとこちらが何か言う前に軽く頭を下げてそのまま消えていなくなった。


 「え?おい!突然かよ!」

 ムスビが跡形もなく消えたセカイにむなしくつっこみを入れたがセカイからの返事はなかった。


 「そ、それで?僕になんの用事でしょうか?」

 セカイが突然消えても反応も示さなかったしろきちが怯えながらナオ達に声をかけてきた。ハムスターという生き物は周りの事はどうでもいいという考えの持ち主である。


 「え……ええ、実はKの元へと連れて行ってほしいのです。」

 ナオは何度か息を飲みつつ、しろきちに要求を伝えた。


 「は、はい。こっちにいるKですね。い、いいですよ。」

 しろきちは何も考えていないようだった。きょとんとした顔でひとつ頷いた。


 「あなた達はKの使いなのですよね?」

 ナオはとりあえず、知っていることを増やそうと質問をしてみた。


 「……え?あ、はい。たしかそうだったと思います……。すみません。すぐに忘れてしまう性格ですので……。」

 しろきちは軽く頭をかくとすまなそうに肩を落とした。

 ナオはしろきちから情報が取れないだろうと踏み、会話をやめた。


 「わかりました。では、Kの元へと連れて行ってください。」

 「は、はい。それはわかりました。」

 しろきちは激しく頷き、ナオ達を見ていた。


 どうやって連れて行ってくれるのかとしろきちを気にしていた三神は知らぬ間に浮いていることに気がついた。


 「ん!?……う、浮いてる!?」

 最初に声を上げたのはムスビだった。


 「浮いてますね……。足が地面についておりません……。」

 「弐の世界の仕組みがよくわからんな……。」

 動揺しているムスビに戸惑っているナオと栄次。それをしろきちは不思議そうに眺めながらうんうんとまた頷いた。


 「あ、あの……僕達ハムスターは……えーと……人形さん達とは違って……その……現世の神々をまとめて運べるっていうんですか……その……そんな感じで……。」

 小さな声でしろきちがささやいた。その後、腕を振り上げてナオ達を自由に動かし始めた。


 「うわわっ!なんだか、魔法を使われているみたいだね……。」

 ムスビは青い顔のまま地についていない足を動かしている。


 「は、はい……。では行きましょうか……。」

 しろきちはおどおどと怯えながら空を飛び始めた。飛ぶと言っても空間を歩いているようなものだ。ナオ達は歩く歩かず関係なく強制的にしろきちの後をつけて進まされた。

 ゆっくりと上昇していき、知らぬ間に時神の世界を出ていた。


 また、ネガフィルムが沢山絡まったような空間に出たが今度は落ちずに魔法のように空間を浮いている状態だった。


 「Kの使いとは……魂に近い存在なのでしょうか……。」

 ナオが小さくつぶやいたがしろきちは聞こえていないようだった。


 「あ、もうすぐでKの世界につきそうです……。」

 しばらく浮遊しながらただ歩いていたナオ達はしろきちの発言で顔を引き締めた。


 「もう着くのですか?まだ出てそんなに時間が経っていませんが。」

 「えー……いつもはどこにあるかわかんないんですけど……今日は近くにありましたね。」

 ナオの言葉にしろきちは曖昧に答えた。


 「じゃ、行きましょうか。」

 しろきちがネガフィルムではなくてそこら辺の宇宙空間に手をかざした。

 刹那、ブラックホールのような宇宙空間よりもさらに暗い空間がわずかに現れた。

 身体が吸い込まれそうになる感覚がナオ達を包む。とても不気味な空間で入るのが躊躇われた。


 「な、なんかヤバめだけど……。」

 ムスビは完全に怯えていた。


 「うむ。入ってはいかんように思うな。不思議と。」

 栄次の顔色も悪かった。


 「では……入っ……」


 しろきちが最後まで言い終わる前にブラックホールからアヤとミノさんが飛び出してきた。


 「……っ!?え?」

 ナオとムスビが同時に声を上げたがアヤはこちらを見向きもしないでそのままネガフィルムへと落下していった。後から飛び出してきたミノさんはどこか必死の顔でアヤを見つめ、アヤに手を伸ばしつつ、落下していった。

 一瞬の事だった。


 「あ……アヤさんとミノさん!?」

 ナオはアヤ達が弐の世界へ入っただろう事は予想がついていたがKの世界であるブラックホールから突然出てくるとは思わなかった。


 「そうか……彼女もKに会おうとしていたのだったな。しかし、あの子の状態が……。」

 栄次はアヤの様子を見て眉を寄せた。


 それはナオも同じだった。

 ……アヤさんは……狂気的な笑みを浮かべていた……。


 「……とても正気ではなかったね……。」

 ムスビもアヤの一瞬の顔が異常だった事に気がついていた。


 「あ、……あれはまずいです……。……Kと接触して真実を知ったのは間違いないですが……。」

 しろきちがそわそわとアヤ達が消えていった下方を見据えた。


 「……Kと接触……アヤさんはどうやってKに会ったのですか?弐に一度いたらしい私ですらどうすればいいかわからなかったというのに……。」

 「ああ!お、思い出しました……。先程、僕が連れて行ったのでした……。」

「それくらい覚えてろよ……。」

 ポンと手を叩いたしろきちにムスビは呆れた声を上げた。

 しろきちは本当に忘れっぽいようだ。ナオ達の前にアヤ達をKの元へと運んだらしい。


 「あ、アヤさんは……大丈夫なのでしょうか?」

 「えーと……その……けっこうまずいです。あなた達の用事は後回しでもいいですか?」

 「かまいませんが……後でKの元へ連れて行ってくださいね。」

 ナオもアヤの事が気になったため、自分の事はとりあえず後回しにすることに決めた。


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