明かし時…5プラント・ガーデン・メモリー14
「と、いう事のようですね。」
ナオが冷静な声で言いながらイソタケル神を見た。
「これは禁忌だ……。花姫はやはり禁忌に手を染めていた……。冷林は……。」
「冷林はひとりで村を、山を救おうとした花姫を黙認してただけ~。禁忌を犯した花姫を見捨てるという罰を与えたようね~。そしてひとりで村を救おうとした花姫を邪魔することなく最後まで見守った~。」
草姫が周りの木々から受け取った情報をイソタケル神に伝えていた。
「……冷林の花姫に対する罰は気に入らないがそういう事ならば全面的に天記神と花姫が悪いな。先程聞いた話通りだ。……冷林を解放する。」
イソタケル神が煮え切らない顔のまま、うつむいた。
「では、もういいのですね。」
ナオが感情なく言った。ナオは神々の歴史を管理しているのでこういうことはよくあるから特に感情が揺れる事はなかった。
「……ああ。もう解決した。僕が花姫を救えなかったのは悔やまれるが……。」
イソタケル神はなんだか複雑な表情をしていたがやがて小さく頷いた。
「では、しおりを使って帰りましょう。」
ナオはさっさとしおりを取り出した。
「行動が早いね……ナオさん……。」
ムスビがあっさりしているナオに頭を抱えた。
ナオはムスビを軽く流すとしおりを地面に置いた。
刹那、白い光が包み、ナオ達は気がつくと天記神の図書館内にいた。
「……本当に簡単に戻れるのですね。」
ヒエンがどことなく感動した声を漏らしたのでナオ達は戻ってきたことを悟った。
「あら……おかえりなさい。」
戻ってきたことにいち早く気がついた天記神は慌ててこちらに向かってきた。
「天記神……お前の証言は正しかった。花姫は……。」
「私のせいなのよ。私はもう隠す気はない。ごめんなさい……。」
イソタケル神の切なげな声に天記神は深く頭を下げた。
「……お前はもう、罰が下っているようだな。」
「はい?」
イソタケル神の発言に天記神は首を傾げた。
「お前、この図書館から出る事ができないのだろう?」
「……ま、まあ、そうですわね。」
天記神は何やら隠すような言い方をした。それを見たナオは咳払いをしてから口を開いた。
「……天記神、あなたはこちらの世界で『図書館から出てはいけない』という罰をあなたの上司、東のワイズからもらっている。向こうの世界、壱の世界では隠ぺいがバレていなかった……だから壱の世界では見つからないようにしていた。先程の話と照合すると壱の世界ではそれをアヤさんにバラされてしまった。ですが、ワイズにはバレていなかった。違いますか?」
ナオの言葉に天記神は軽く笑った。
「……大当たりだわ。その通りです。陸の世界、つまりこっちの世界では私の罪はバレてしまっていてワイズが私をここから出られなくしたの。もちろん、壱の世界でもこの罰は適応されていて私は結界に阻まれて外へ出る事ができないわ。例外な時を除いてね。」
天記神は頭を抱えて椅子の一つに座った。
「そういう事か。」
イソタケル神はやり場のない思いをため息にのせて吐いた。
「まあ、それは良いです。それよりもイソタケル神、約束はお忘れではないですね?」
ナオは気持ちを転換し、イソタケル神に言い放った。
「……ああ。記憶を見たいんだったな。好きなだけみていい。」
「はい。ありがとうございます。さっそくやらせていただきますね!」
ナオはしっかり頷くと手からイソタケル神の巻物を取り出し、イソタケル神に向けて投げた。




