明かし時…5プラント・ガーデン・メモリー9
「草姫さん、隠された歴史の方は見つかりましたか?」
ナオはふと草姫に質問をした。草姫は首を傾げて
「いいえ。わからなかったわ~。ここにはないわね~。」
と辺りを見回しながら答えた。
「では、ヒエンさん。歴史書内の方ではないイソタケル神の気配は感じましたか?」
「いえ。感じませんでした。ここにはいないですね。」
ナオの言葉にヒエンも草姫と同じように反応が薄かった。
「では……ここではないのですね。……それにしてもタイトルに沿っている冷林が出てきていないのが気になります。」
「冷林が守護し森……とかいう感じだったから森がどっかにあって、そこに冷林がいるんじゃないかな?」
ムスビがナオを気にしながら尋ねた。ナオは辺りを見回しながらムスビに答えた。
「……そうですね。歴史書内にいる冷林の元に現世のイソタケル神がいる確率は高いです。先程の歴史からイソタケル神は冷林をあまり良く思っていない……。」
「うん。そんな感じした。」
「ねぇ~ねぇ~、だけど~その冷林がいるって森に入ったら別の歴史書に入っちゃうみたいよ~。」
ナオとムスビの会話に草姫が呑気な声で入り込んできた。
「別の歴史書に入る……そういえば天記神さんが歴史書内でリンクしている部分があると言っていましたね。」
「ええ。言っておりましたね。」
ナオのつぶやきにヒエンが相槌を打った。
「……一体ここの本はどういう仕組みなのだ……。」
栄次の不安げな声を聞き流しながらナオは一つ頷いた。
「では何の歴史書なのかタイトルを忘れましたがそちらに向かってみましょう。」
「そうしましょう。」
ナオの言葉にヒエンは大きく頷いた。
ヒエンはもうこの本の仕組みに慣れたようだ。神の感覚は常識では測れない。
「あ~、木々があっちだって言ってるわ~。このまままっすぐ、牡丹のように~。行くわよ~。」
草姫が先程ナオ達が歩いてきた方の山を指差し、鼻歌を歌いながら歩き出した。
「先程私達がいたあの森の中が冷林が守護し森……なのですか?」
さっさと歩き出した草姫に慌てて追いついたナオは早口で尋ねた。
「そうみたいね~。たぶん、さっきいた場所とは若干違うけど~。まあ、私もこの歴史書内の木々の記憶が見れるってだけだから~正しいかはちょっと怪しいけどね~。」
そうは言っているが草姫は何か確信がある顔つきをしていた。
ナオにならい、ヒエン、ムスビ、栄次もなんとなく草姫についていく。
木も草も生えていないただ広いだけの更地をナオ達は黙々と歩いた。
「ここはやはり人工的に作られた場所……。」
「ええ。そのようですね。」
ナオのつぶやきにヒエンが答えた。
この更地面積はけっこうな広さであり、山を切り崩した感じでもないので湖などを埋めて土地を作ったのかもしれない。
ナオはぼんやりとそんなことを考えながら更地を通りすぎた。
そしてナオ達は草姫の後を追い、先程の山道とは違う山道へと入って行った。山は同じ山なのだがなんだか歴史書内の空気、空間が歪んだ気がした。
「……なんか歪んだな……。今。」
ムスビがいち早く気がつき、不安げに声を上げた。
「たぶん~、別の歴史書に入ったんでしょうね~。」
草姫は特にアクションを起こすわけでもなく、冷静に山道を登って行ってしまった。
「ああ、待ってください……。」
サクサクと登って行ってしまう草姫を追いかけ、ナオは小走りに歩いた。




