明かし時…5プラント・ガーデン・メモリー2
ヒエンはヒメちゃんに「拘束してしまい申し訳ありませんでした。」と頭を下げ、外へと歩き出した。
ヒメちゃんはぽかんとしながらヒエンに続き歴史書店の地下階段を上った。
ナオ達も後に続く。
辺りはすっかり秋で気温は下がってきている。街路樹は赤や黄色に変わりハラハラと散っているそんな時期である。
「本当に任せていいのかえ?」
ヒメちゃんは不安げな顔でヒエンを見上げた。
「はい。冷林の封印はちゃんと解きます。極秘で兄を探したいのでヒメさんは東西南北の上にはしゃべらないでください。」
「そうしたらいつまでも封印が解けない冷林を見て剣王やワイズからワシは厳しく怒られてしまうぞい。」
ヒエンの言葉にヒメちゃんは困惑した顔で答えた。
ヒエンが何かを言おうとした時、空から銀髪の青年が飛び込んできた。
「ヒメちゃん!ここにいたのですか!」
銀髪パーマの青年はヒメちゃんを見ると慌てて駆け寄ってきた。
「イド殿……ち……父上。」
ヒメちゃんは銀髪の青年、イドを怯えた顔で見上げた。
「ヒメちゃん?どうしましたか?」
イドは娘のヒメちゃんを大事そうに抱きしめるとヒエンに鋭い視線を飛ばした。
「龍雷水天神、イドさん、あなたはヒメさんのお父様だったのですね?」
「ええ、そうですね。スサノオ尊の娘さんが何用で?」
ヒエンの問いかけにイドは鋭く言い放った。
「いいえ。もう用はございません。ヒメちゃんは一度冷林の封印を解きました。なので再び封印されてしまったのだとしてもヒメちゃんの責任はありません。この事の口外だけはしないでください。」
「わかりました。僕も冷林が再び封印されてしまった事に頭を抱えていた所です。もちろん、娘を責める気はありません。……しばらくはあなた達が動いているのを黙ってみていますが時間が経過しても冷林の封印が解かれないようならば僕は動きます。それでいいですね?」
イドはヒエンにそう言い放った。
「はい。ですので今はそのままで剣王やワイズに感づかれないようにうまくやっていただきたいのです。」
「何か理由があるようなので僕は了承しておきます。……では。」
イドは事務的に返事をするとヒメちゃんに優しくほほ笑み手を握りながら去って行った。
ヒメちゃんは不安げにこちらを見ていたが特に何も言わずにイドに従って歩いて行った。
ヒメちゃんとイドが見えなくなるまで見つめていたヒエンは見えなくなったとたん、大きなため息をついた。
「これでなんとか時間稼ぎができそうです。」
「ま、まあ……よくわかんないけど。……冷林の封印とイソタケル神の関係は何?」
ムスビはいまいちよくわかっていない顔でヒエンに問いかけた。
「……よくわかりませんが……冷林の封印を再びしたのはお兄様のようなのです。」
「ああ、それでお兄ちゃんを見つけたいわけね。」
「それもそうなのですが何かよからぬことに巻き込まれていたらと心配でもあるのです。」
ヒエンは心配そうに目を伏せると再びため息をついた。
「ええ、なんにせよ、神々の図書館へと行く方が確実ですよ。」
ナオはヒエンの肩を優しく叩いた。
「はい……。その神々の図書館とは何なのでしょうか?」
「え?あそこを知らない神がいるのか……。」
「ムスビ。」
ヒエンの問いかけにムスビは思わず声を上げたがナオに止められた。
ナオはムスビの発言を制すると一呼吸おいてから口を開いた。
「神々専用の図書館です。人間の図書館から行く事ができます。まず、冷林とイソタケル神の関係性について調べるのもありだと思います。私が冷林とイソタケル神の歴史を検索してみた所、冷林はその昔、イソタケル神の部下であったという記述があります。
……ミノさんという狐耳の穀物神も関係しているようです。私は詳しく見る事ができませんが文面だけの感じだとそうらしいです。神々の図書館へ行けばそれを映像として見る事ができます。私よりも詳しく知ることができるでしょう。」
「な、なるほど……。その図書館、わたくしは知りません。案内ともどもよろしくお願いいたします。」
ヒエンの言葉にナオは小さく頷いた。




