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明かし時…4ドラゴン・キャッスル・ヒストリー10

 ナオ達は二の丸に入った。制御室があるのは竜宮三の丸の地下である。ロビーを抜けると通り道が三つに分かれていた。


 「……三つに分かれています……。まっすぐな道、上り階段、下り階段……。」

 「竜宮の制御室は地下なんだろ?これは右の下り階段の道が正解だと思うよ。」

 ムスビがナオに答えながら一番右の道を指差した。


 「そのようですね。またも私の前を歴史が通り過ぎて行きました。以前はあの下り階段に鎖と結界が張られていたようです。入るべからずの看板もあったようです。」

 ナオは竜宮が排出する過去からこの辺りの歴史を読み取った。


 「よし、じゃあ早く行こう!さっきのロボットがこっちに来る!」

 「そうですね。」

 ムスビとナオが顔を合わせて頷いた刹那、強い地響きが聞こえた。


 「……っ?」

 栄次が咄嗟に刀を構える。


 「っ!避けろ!」

 突然栄次が声を上げ、ナオとムスビを突き飛ばした。


 「きゃっ!」

 ナオが小さく叫び床に倒れた。動揺した頭のまま身体だけを起こし前を向く。

 ナオ達の目の前に傷だらけの飛龍が倒れていた。よく見ると横の壁が突き抜けている。飛龍は闘技場からここまで壁を突き抜けてここに落ちてきたらしい。


 「ひっ……飛龍さん!」

 「ひでぇ……。」

 ナオとムスビは困惑しながら飛龍のそばに寄った。


 「……あの龍神にやられたのか……。」

 栄次がそっと飛龍を抱きかかえた時、狂気的な笑い声が聞こえた。


 「ひゃひゃっ!なかなかやるなぁ。だが拙者の方が強い。」

 橙の髪を持つ龍神がこちらに向かってゆっくり歩いてきた。ロボットは全く反応していない。龍神には反応しないのか。


 狂気的な笑みを浮かべている橙の龍神も傷だらけでだいぶん疲弊しているように見えた。

 飛龍とはいい勝負をしたようだ。


 「女相手にむごいことをする……。」

 栄次は飛龍を離すと刀を構えた。飛龍は全く動かない。気を失っているようだった。


 「飛龍さん!飛龍さん!」

 ナオは何度も飛龍を揺すり声をかけた。


 「……栄次、飛龍は女だけど俺達よりもはるかに強かった……それをここまでするって事は俺達だとちょっと勝てないんじゃないか。」

 ムスビがナオと飛龍を守るように立ち、栄次にこっそりささやいた。


 「ああ。おそらく勝てんが俺達しかいないだろう。あいつが制御室へ入る事を許すとは思えん。」

 「そ、そうだな。」

 栄次の言葉を聞き、ムスビは何かを考えるそぶりをした。


 「……ムスビ?」

 「……お、俺が結界を張ってあいつを食い止める。たぶん少ししかもたないから竜宮のオーナーの謎がわかったらすぐに戻ってきてほしい。」

 ムスビの発言に栄次とナオは驚いた。


 「それは無謀すぎます!ムスビを置いていけません!」

 「そうだ。お前ひとりでは……。」

 ナオとムスビが同時に声を上げたが途中でムスビが遮った。


 「……あんた達は俺の神力の高さがわかってないね。瞬発力とかそういうのには自信がないけど短期間の強力な結界とかはけっこう得意なんだよ。」


 ムスビは軽く笑うと神力を高め始めた。ムスビから強力な神力が溢れだした。

 一瞬、狂気的に笑っていた橙の髪の龍神は怯えの色を見せ、一歩退いた。


 「……わかった。お前にここは任せる。」

 栄次はムスビの神力の高さを体で感じ、ムスビに任せる事にした。


 「……ただし短期間だよ。このフロアを守る結界くらいしか張れないし。」

 ムスビは軽く笑うと手を前にかざした。ムスビの両手から強力な神力が集まりそれがネットワークのように拡散した。


 危険を感じた狂気の龍神はその結界を破ろうと突進してきた。しかし、結界はびくとも言わずその龍神を弾き飛ばした。


 「よし。短時間だけ俺の方が神力が上だ……。おい!何してんだよ!早く先に行ってくれ!長くもたないんだよ!」

 呆けている栄次とナオにムスビは必死に言い放った。ハッと我に返った栄次はナオの手を引き走り出した。


 「ムスビ、全力で保たせろ!」

 「ムスビ……死なないでくださいね……。」

 栄次とナオは階段の前で止まるとムスビに叫んだ。


 「頑張るよ……。ナオさんは縁起でもないね……。」

 ムスビは息苦しそうに小さくつぶやくと結界に集中をした。

 ナオと栄次はそんなムスビを心配そうに見つめていたが顔を引き締めて階段を降りて行った。

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